第178話 真夜中の襲撃者
フィフスの心配するようなこともなく、時間は深夜を周り、二人はダブルベッドの右と左にそれぞれ別れて寝静まりました。すると・・・
ガチャ・・・
何故か電子ロックがかかっていたはずの部屋の扉が開き、中に誰かが入ってきました。その人影は二人が寝ているベッドの近くまで音を立てずに近付いて来ました。
「コイツか。」
その影はそこで爪を突き立て、二人に向かってそれを刺し付けました。しかし次の瞬間・・・
キインッ!!!・・・
「ナッ!?」
「寝起きドッキリにしては時間が早すぎるぞ。」
刺し込めたはずの爪は、ベッドに隠し持っていたフィフスの剣によって防がれてしまいました。
「貴様! 起きて・・・」
フィフスは動揺している相手の隙を見て爪を弾き飛ばし、ベッドから降りてからガラ空きになっていた相手の腹を蹴り飛ばしました。
「ムゴォ!!」
部屋から強制的に追い出された相手はそのまま廊下を逃げていきます。フィフスもすぐに部屋を出ますが、そこで相手は魔術による衝撃波を放って目くらましをし、フィフスが避けたときにはもうそこにはいませんでした。
ならば相手を探し出そうとしますが、騒ぎで目を覚ました瓜が寝ぼけて声を出してきました。
「ン~・・・ どうかしました? フィフスさん・・・」
フィフスはそこで制限のことを思い出し、走りかけた足を踏みとどまらせました。とりあえず瓜に心配をかけないように言葉をかけます。
「心配ない。扉の向こうから変な音が聞こえたと思ったが・・・ 気のせいだった。」
「あ・・・ そうですか・・・」
寝ぼけていた瓜はまたベッドに倒れて寝落ちし、それを確認したフィフスはユニーを頼ろうと床に手を触れました。
「頼むぞユニー・・・ ん?」
しかしそこでフィフスは何も反応がないことに違和感を感じ、手を置いた床を見てみると、ユニーどころか、魔法陣すら発生していませんでした。まぐれかと思った彼はもう一度同じ事を試しますが、結果は同じでした。
『召喚できない! どういうことだ!?』
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その頃、さっき二人を襲った人影が人のいなくなった船首上の所にまで走ってきました。
「ガァ・・・ ハァ・・・ 上手くいったか?」
その刺客が息をつくために下げていた頭を上げて前を見ると、そこには・・・
「ああ、時間稼ぎご苦労様。おかげで十分誤魔化せたよ。予定通り君は契約を叶えてきてくれ。」
フィフスは気のせいだと思っていた、カオスが仮面越しにニヤつきながら立っていました。
「全く余計な仕事を増やしおって・・・ ここから好きにやらせて貰うぞ。」
「どうぞどうぞ~・・・」
刺客の魔人はまた船内に入っていき、それを見送るカオスはボソッと独り言を呟いていました。
「頼むよぉ~・・・ こっちは大盤振る舞いしたんだからぁ~・・・」
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翌日、瓜が目を覚まして伸びをすると、隣に寝ていたはずのフィフスの姿がありませんでした。
「あれ?」
するとその彼は洗面台から歯を磨きながらやって来ました。
「お、起きたか。早いな。」
フィフスからの声かけに瓜はコクリと無言で頭を下げて返答します。その後彼女はフィフスが使い終わった洗面台で顔を洗って目を覚まそうとしますが、その洗面台の煌びやかさに目がやられてその時点でパッチリとしました。
「ああ・・・」
二人は身支度を済ませ、朝食を取るために部屋を出ました。いつもの調子でいた二人でしたが、周りの人達は当然のように正装しており、会場に向かっている中で彼らだけが浮いていました。
「ウ~ム・・・ 一等客船だからな・・・ しっかしあのスタッフ、唐突だったとはいえ準備しといて欲しいもんだ・・・」
フィフスが頭をかいて困っていると、瓜はなんだかそわそわとしています。すると意外なところから救いの手が差し伸べられました。
「あれ? 君達もしかして・・・」
「あ?」
二人が聞き覚えのある声がしたので振り返ると、昨日とは違ってタキシードを着こなした渋木がいました。
「やっぱり! 町田と小馬君!! 何でここにいるの!!?」
「猿柿君・・・」
「一等客船の客だったのか。」
曰く渋木は幼い頃からの坊ちゃんだったらしく、この旅行も親のすねをかじってきたとのことだそうです。そこで二人は現在の諸事情を彼に話しました。
「なるほど、それなら任せてくれ。」
「「・・・?」」
迎えた朝食の時間。その場に到着した二人は、それぞれタキシードとドレスに身を包みました。着慣れない服に二人がよそよそしくすると、渋木はうんうんと頷いていました。
「二人ともとても似合ってるよ。」
「ああ・・・ どうもっす。」
渋木はそこでピコンと思い付きました。
「そうだ! どうせなんだし一緒に食べないか? 急なことなら席も用意されてないだろう。」
「あ、ども・・・」
結果的に席も用意されたわけですが、星持ちのレストランと肩を並べる食事空間は、どう考えても落ち着けるものではありませんでした。瓜は無言のまま、震えてナイフも持てません。
「アハハ・・・ あただは相変わらずおっちょこちょいだな。変わってなくて安心したよ。」
「それは・・・ すみません・・・」
楽しむ渋木と緊張する瓜。しかしフィフスは深夜でのことから瓜とは別の緊張をしていました。そんなことを知るはずもない渋木は、彼にそつなく聞いて来ました。
「あれ? どうかした?」
「いいや、別に・・・」
『あれから探れる範囲で探ってみたが、結局尻尾は掴めなかったな・・・ しかし何でわざわざあんな事をしたんだ? そしてやつはどこへ行った?』
フィフスは船に乗ったときとは違うもやつきをしていると、残りの二人が話し合っていました。彼から見てその様子はどこか楽しそうでしたが、やはり瓜は少し戸惑っているようでした。
特に問題もなく朝食を終えた三人は、その流れで揃って部屋に向かって歩いていました。二人の会話は続き、フィフスは考え事をしたままその後ろをついて行ってました。
「へえ、そんな感じなんだ! 町田は前からトラブルに巻き込まれるからなぁ・・・」
「すみません・・・ 昔から、迷惑をかけて・・・」
『進展は無しか・・・ まあまた夜に出るかもしれないし、とりあえず今日一日は緊張を高め・・・!!』
次の瞬間フィフスは目付きを変え、足を止めました。足音がしなくなったことに気付いた渋木が振り返ります。
「ん?」
「二人とも! しゃがめ!!」
「「え?」」
フィフスは動作をしない二人の頭を手に取って強制的にしゃがませました。すると三人の頭の上を電撃が通り過ぎました。
「な! 何だ!!?」
三人が電撃の飛んできた方を見ると、髪が乱れ、目は鋭く、口に牙が生えた全体的に白い魔人の老婆がいました。
「思っていたより速く来たな・・・」
さっきまでの楽しい空気が、一瞬にして曇ってしまいました。
・嘘展開
動揺した影にフィフスが攻め込もうとした次の瞬間・・・
ビリッ!!・・・
「おはようございま~す・・・」
そいつは顔の覆面を破って素顔を出した。
『まさかのリアル○○○○!!!』
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