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第177話 クルーズ旅行

 船が出航して少し時間が経ち、二人はさっきのことにどこか気にすることがありながらも、その事をお互いに口にせずにそこから土産物を部屋に置き、思いっ切り羽を伸ばすことにしました。



<サーカス>


 目の前で繰り広げられる摩訶不思議な芸当の数々に圧倒される瓜。それに対して楽しむどころか苦い表情になりながらジュースを飲むフィフス。


 「ウオッ!! ウワッ!!! 凄い!!!」

 『修業時代に無理矢理やらされたな・・・ 空中ブランコ。落ちたら痛いんだよなぁ~・・・』




<映画館>


 普段町では見られないような大スケールの劇場に既に二人は口を開けてぽかんとしています。流れていた映画も当然ド迫力でしたが、内容がファンタジーだったために二人には・・・


 『異世界(うち)の魔物はこんな技出せねえぞ・・・』

 『現実で見てしまうと、どうしても作り物感が・・・』




<コンサート>


 落ち着いた音で眠くなりかけていた瓜ですが、そこに大音量が響いてきて途端に目を覚まします。隣のフィフスはむしろ奏でられる音楽よりも、彼女の反応の方を面白がって注目していました。


 「ハッ!!・・・ 『また寝ちゃってた・・・』」

 『いちいち反応が面白いな、コイツ・・・』



____________________



 そして現在、二人はスタッフから事前に聞いた時刻になって、夕食のバイキングにへと出ていました。食事時間が始まって数分すると、フィフスの目の前にはテーブル中にに広げられた皿の数々に冷や汗を流していました。なんせ、これは全て瓜が自分用に持ってきたものだったからです。


 「これ、全部食うのか?」


 フィフスが若干反応に困りながらそう聞くと、彼女は元気よく返事をしました。


 『ハイ! いただきます!!』


 瓜はその大量の料理を次々と平らげていきます。これを見てフィフスはついこんなことを思ってしまいました。


 『ウ~ム・・・ やっぱ大量に食うと育つもんなのか・・・ にしたかって食い過ぎな気はするな・・・』


 そこでフィフスはこれを利用し、瓜が持ってきた料理をいくつか横取りしました。


 『な! それは!!』

 「こんだけあるなら少しは良いだろ?」

 『そんな・・・』


 瓜は少し泣きかけの顔をし、フィフスはそれを見てニッとわざとらしく笑いました。そのまま食事を楽しんでいた二人ですが、そこに一人の店員が通りすがります。二人はそんなことを特に気にしているわけでもありませんでしたが、次の瞬間・・・






 「お疲れだね・・・





    ・・・魔王子君。」






 「ッン!!?」


 フィフスはその店員の言った言葉、そしてその言い回しに既視感を感じ、反射的に席を立ち上がりました。瓜には声が聞こえなかったようで、料理を食べながらテレパシーを送ってきます。


 『どうかしましたか?』

 「え!?・・・ああ、喉渇いたから飲み物取ってくる。」

 『フィフスさん!?』


 急いで席を立つ彼に押されて何も言えませんでしたが、内心はこう思っていました。


 『飲み物、まだ残ってますけど・・・』


 フィフスはさっきの店員を探してエリア内を探し回りますが、人が混み合っているせいで特定の一人を見つけるのは難しく、入り口付近でスタッフに声をかけられて諦めました。


 「クッ!!・・・」

 「お客様、どうかいたしましたか?」

 「ああ、スマン。ドリンクバーってどこだ?」

 「ああ、でしたら案内します。」


 店員に連れられながら、彼はもや付いた思いをしました。


 『さっきの声、空耳か?』


 フィフスの内心はスッキリしないまま、ディナーは終了しました。レストランエリアからでた二人は、その後話し合いながら廊下を歩いていました。


 「夜遅くなったし、次は風呂だな。」

 『じゃあ、お部屋にあったシャワーで済ませましょう。』


 彼女の言った事を疑問に思った彼はこう聞いてみます。


 「お前、せっかくなのに温泉はいいのか?」

 『それだと制限がかかりますので。』

 「あ、すんません・・・」


 フィフスは制限のことをすっかり忘れていたことに沈みます。瓜はそれをクスクスとしながら横を歩き、二人は自室にたどり着いて扉を開きました。しかしそこで彼が部屋に入ると・・・


 「アッツ!!?・・・」


 何故か部屋の室温が異常なほどに上がっていたのです。


 「何何何ぃ!? もしや暖房の設定温度を間違えたか?」


 彼はテーブルに置いていたエアコンのリモコンを見ましたが、その画面には二十度と書かれていました。


 「あれ? こっちは平常だ。」

 『てことは・・・』


 プルプルプルプルプルプル!!


 フィフスは内線電話でフロントに電話をかけました。






 そうして二人は、もう夜も遅くなりつつある時間に、お土産も含めた荷物を全て抱えて部屋を移動する羽目になりました。先導するスタッフが時折謝罪してきます。


 「すみません、空調の調子が悪くなっていたようで・・・」

 「悪いっているか、真夏のバカンスレベルになってましたけど・・・」

 『他に開いているお部屋があってよかったです。』


 ある程度歩いて別の部屋に到着すると、スタッフが一度止まってこちらを向き、奥を手で差して説明しました。扉の豪華さが明らかにさっきとは違います。


 「こちら丁度本日キャンセルが出まして・・・ 料金の変更はございませんのでお使いください。」


 そのままスタッフは二人にカードキーを渡して去って行き、残った二人は部屋に入りました。


 ガチャ!!・・・


 「ん?」


 二人がそっちを見ると、そこには・・・


 「オ~・・・」

 「す、凄い・・・」


 変更になった空き部屋は、内装が一流ホテルにも負けないほど煌びやかな広い部屋でした。そう、ここは一等客室。本来地域の福引きでは絶対には入れないような部屋でした。しかし今二人が注目したのは・・・


 「「あ~・・・」」


 ドドンと存在感を放っているダブルベッドでした。


 「おいおいこれは・・・」

 『ま、まあ・・・ これだけ広いんですし、端で寝れば問題ないかと・・・』

 「お前がそれでいいんなら構わんが・・・」


 少しフィフスは渋りましたが、郷には入ったら郷に従うということで自分を納得させ、話を変えました。


 「そういや汗もかいただろ? 先にシャワー浴びてこい。」

 『いいんですか?それでは・・・』


 瓜は実際汗を流したかった気持ちがあったので、彼の言葉に甘えてシャワールームに向かって行きました。一人になったフィフスは、表情を暗くさせて思うところがありました。


 『妙だ・・・ いくら何でも偶然が重なりすぎてる・・・ さっきの声といい、まさかな・・・』



 その頃、廊下の物陰に、不気味な人影が、彼らのいる部屋の付近を眺めていました。


 「ヒッヒッヒ・・・ 持っておれ。」

<魔王国気まぐれ情報屋>


・フィフスが最もキツかった修業


フィフス「先生が駆る戦車の全速力を真正面から喰らって受け身を取るやつ・・・


    ・・・まじで死ぬかと思った。」


瓜『この人の生命力の根幹を少し知った気がする・・・』





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