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第176話 君のヒーロー

 お土産を買い終わったフィフス。一向に瓜が帰って来ないことに何があったのかと気になり、彼女の向かって行った方向に歩いていました。


 「瓜のやつ、どこいきやがった?」


 彼がそのままお土産屋を通り過ぎると、探していた人は、彼が知らない人と一緒にいる所を見つけました。彼は心配して損したとばかりに息を吐いてそこに行きました。


 「おい・・・」


 フィフスの呼びかけに瓜も気が付いたようで、そっちの顔を向けます。


 『あ、フィフスさん。』

 「戻ってこないと思ったら・・・ 瓜、コイツは?」


 瓜の隣にいた青年のことをフィフスがま人だと分からないように筆談で紹介しました。


 「彼は『猿柿 渋木(さるがき しぶき)くん。私の小学校時代のクラスメイトです。』

 「はぁ・・・ どうも。」

 「町田、この男は?」

 「あ、彼は・・・」

 「小馬 五郎っす、よろしく。」


 フィフスは渋木に軽くお辞儀をした。すると彼の方がこんなことを言い出してきました。


 「ん? 彼は、君の彼氏かい?」

 「え!!? そんな・・・ 私と彼は・・・」

 「ただのダチだ。たまたま予定が重なってここに来た。」


 動揺している瓜と違い、フィフスは冷静なままそう返事しました。


 「そうか、どうぞよろしく。」


 渋木は快く右手を出し、フィフスも同じく手を出して握手をします。


 「これはどうも親切に。」


 二人がその手を離すと、渋木は三人から少し離れた所で何かを見つけ、少しハッとしたように見えました。


 「あそこにいたか! 悪い、そろそろ戻るよ。」


 フィフスがそっちを見ると、彼の度仲間らしき少女が彼を探してかキョロキョロとしていました。どうやら彼の旅仲間の友達のようです。


 「じゃ、行くね。」

 「はい、元気そうでよかったです。」

 「固いな~・・・ ま、君らしいか。じゃあね。」


 渋木は二人に背を向けて女性のところへ走って行きました。残った二人は彼に手を振り、彼の姿が見えなくなるとそれを降ろしました。


 「偶然ってあるもんだな・・・ アイツ、お前の昔のダチか?」

 『・・・はい、いじめられてた私を助けてくれた、ヒーローです。』

 「ヒーローねえ・・・」


 そのとき、瓜は幼い頃の思い出を振り返っていました。



____________________



 それは彼女の小学生時代。絵本の悪役を擁護するような姿勢と弱腰な性格のこともあり、すぐにいじめっ子達の格好の獲物になっていました。


 「や、止めて!」


 その日も彼女はいじめっ子にバケツの水を被らされ、それを笑われていました。周りにいる他のクラスメイトは、自分が被害に遭いたくないがために怒っていることを見て見ぬふりをしていました。


 時には先生が叱ることもありましたが、彼らはそれでも懲りずに続け、今では上っ面だけ優等生でいて裏で彼女をいじめる悪知恵を身につけていました。


 「見ろよ! 砂に転がってどろんこだ!!」

 「う~わきったね!! お前こっち来んなよ!!」

 「なら綺麗にしてあげましょうね~・・・」


 そう言っていじめっ子の主犯が手に持ったバケツの水を彼女にかけようとすると、そこに大声が響き、彼は動きを止めました。




 「止めろ!!」



 いじめっ子達が何事かと顔を向けると、夕日の逆光に照らされて一人の少年が走ってきます。そしてその少年は瓜の前にマントを着けた背中を見せ、いじめっ子達にお面を付けた顔を見せます。


 「な、何だ!? お前・・・」


 駆けつけた少年は一歩前に踏み出してポーズを取りながら名乗りました。


 「正義の味方! モンキーマン!! 参上!!!」


 しかし彼の胸は制服の名札を取り忘れ、相手に正体がバレバレでした。


 「ハァ? お前猿柿だろ。何してんだそんな格好で・・・」


 しかし渋木本人は必死で否定します。


 「ナッ! 違う!! 俺は正義の味方、モンキーマンだ!!!」

 「くっだらねえ・・・ 幼稚園児かよ。」

 「おい、コイツからやっちまおうぜ。」


 いじめっ子達は渋木に狙いを定めて動き出します。すると彼はそれをヒラリとかわし、彼らの後ろに回り込みました。そして・・・


 「 必 殺!! モンキーマンミサイル!!!」

 「「「!?」」」


 次の瞬間、いじめっ子の主犯は思いっ切り浣腸(かんちょう)を受けてしまい、あまりの痛みに大声で叫び出しました。


 「ギャァーーーーーーーーー!!!」


 痛みにお尻を抱えてプルプル震える少年に、残りの二人が集まります。


 「だ! 大丈夫ッすか!?」

 「ウッ! うるせぇ!! 覚えとけよぉ!!!」


 その少年はすぐさま逃げていき、お供の二人も慌ててついて行きました。


 「ハッハッハァ!! 今日も世界の平和を守ったりぃ!!!」


 渋木は後ろを向いてどろんこになっていた瓜に手を差し伸べ、彼女もそれを受け取って立ち上がります。


 「あ・・・ ありがとう・・・ 猿柿君。」

 「お! 俺は猿柿じゃないぞ!!」

 「名札・・・」

 「え?」


 そのとき、彼は初めて自分の胸の名札を取ることを忘れていたことに気付きました。


 「しまったぁ!!!・・・」


 彼はこうなったら仕方ないと渋々お面を外しました。


 「あ~あ・・・ もうちょっとで正体不明のヒーローになれたのになぁ・・・」


 渋木が残念がっていると、瓜は小さな声で言いました。


 「ありがとう・・・」

 「?」

 「ありがとう・・・ ヒーローさん!!」


 その言葉を聞いて、渋木は顔を赤くします。


 「・・・」


 そして彼は、バサッとマントを翻してグーサインを出しました。


 「これからも町田は俺が守る!! 安心しろ!!!」

 「ハイッ!!・・・」


____________________



 「本当に・・・ 懐かしいです・・・」

 「そうですか・・・」


 隣のフィフスが少しふてくされながら彼女の顔を見ます。しかしそのとき彼が見た彼女の顔は、嬉しいというよりどこか気まずそうな様子でした。




 さっきの女性と合流してロビーから部屋経向かう廊下に入っていく渋木。その様子を少し距離の離れた柱の物陰から見ている視線がありました。


 「・・・」

<魔王国気まぐれ情報屋>


・モンキーマン


 猿柿渋木がか弱きものを助けるために仮面を付けて変身した秘密のヒーロー!! そのパワーはどんな悪をも打ち砕き、今日も世界の平和を守り続けている・・・



・モンキーマンミサイル


 モンキーマンの得意技。相手の後ろに回り、一定のポーズをとってエネルギーを集中させて相手に放つ技。その一撃は、どんな巨悪をも打ち砕く!!




・・・という設定の干潮。




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