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第173話 不思議な夢

 どこが前でどこが後ろかも分からないような真っ暗な空間の中。そのとき瓜は、目の前に次々映し出される映像を見ていました。






 「なら叶えてやるよ・・・」

 「・・・ エッ?」

 「だから、お前の願いを叶えてやるっつてんだ!! コミュ障女にまともな友達、わんさか作ってやる!!!」

 「い、良いんですか?」

 「帰る方法が見つかるまでの間だけだ。それでならやってやる・・・ それまでは俺が、おまえの友達になってやる!!」




 「俺は、どうやらこいつを守りたいみたいなんだ。

   敵がコウモリだろうが、

    仮面の変態だろうが、

     ろくでもねえ化け物だろうが関係ねえ!!




  ・・・ 俺は、大切な友達を絶対に守る!!」




 「今はそれを言うな。ここで鈴音に余計な不安を抱えれば、作戦に支障が出る。」

 「・・・!?」

 「今回は帰れ、お前のためにも言ってんだ・・・」

 「・・・」




 「これは、一体・・・」


 「瓜・・・」


 瓜は後ろから聞こえて来たフィフスの声に振り返ると、そこには突然強い光が入り込み、彼女は両腕で目を隠しました。反射的に下を見ると、そこには自分の知らない床があります。


 「!?・・・」


 瓜が何が起こったの混乱し、腕をどけて前を見ました。するとそこには、光の源である炎が辺り一帯を包み込み、その奥にある人影を見つけました。


 「あれは、まさか!!」


 瓜は後ろから突き動かされるかのようにその場から走り出し、その人影を捕まえようとします。しかし、炎は彼女を阻むように広がっていき、瓜はその先に行けずに叫ぶことしか出来ませんでした。


 すると、彼女の声が聞こえたのか、炎の向こうにいる人影が振り返りました。顔はよく見えませんでしたが、その目元には血の涙が流れたような跡がハッキリ見えました。





 「     !!!・・・」






____________________






 「・・・り ・・・うり ・・・瓜!!」





 「ハウワッ!!?」


 瓜は扉越しに聞こえて来たフィフスの大声に起こされる形で目を覚ましました。


 「フィフスさん?・・・」

 「お、やっと起きたか。お前が起こされるなんて珍しいな。今日早起きするって言ってたのによ。」

 『そ、そうでしょうか?』

 「ま、いい。とりあえず顔洗ってこい! 朝飯は作っといたから。」

 『あ、ありがとうございます。』


 瓜はグゥーッと伸びをしてからベッドから起き上がり、着替えてから洗面台で顔を洗いました。そのときからボーッと考え事をしています。


 『さっきの夢は何だったんだろう・・・ ほとんどはこれまでのフィフスさんとの思い出だけと、最後だけは・・・ 何というか・・・』


 うりは朝食中も同じように心ここにあらずのような顔をしていたため、見かねたフィフスはまた声をかけました。


 「うーり!」

 「ハ! ハイ!!・・・」


 瓜は我に返って箸に持っていた豆腐を味噌汁に落としてしまいました。


 「どうした? そんなにボーッとして?」

 『い、いえ・・・ ただの寝ぼけですので。』

 「そうか? ならいいが・・・」

 『はい・・・』


 そこから先も、瓜は考え込んだままでいました。準備をし終わって近所の商店街に出ても、それは変わりませんでした。行く先々のお店にて思ってしまいます。



 『さっきのは、私がフィフスさんに助けて貰った時だった・・・ 何度も、何度も・・・


  この前だって、ぬいぐるみになってさえも、私を助けてくれた。それに・・・』



 実は瓜は、バレンタインデーにサードに会ったときに、フィフスが日本に戻ってきたのは自分のためだと聞いていました。その事もあって、今の彼女をより追い詰めてしまいます。

 


 『何より、見ず知らずの私と、友達になってくれた。今にして思えば、なんでそこまでしてくれるんだろう・・・


  ・・・やっぱり、あの写真のことが関係あるのかな。』



 瓜は今度は魔王国で見た写真を思い出しました。写真自体はフィフスが寝ている間にこっそり戻しておきましたが、見たことを忘れるわけではありません。だから彼女は折を見てフィフスに聞くつもりでしたが、これまで何かとトラブル続きだったために聞きそびれていたのです。


 それに彼女には正直なところ、その事を聞くのが怖い気持ちもありました。



 「うーーーり!!!」

 「ハイィ!!!・・・」


 瓜はフィフスによる今日一大きな声に全身を震えさせて驚きました。


 「やっぱり変だぞお前。風邪でも引いたか?」

 『ほ、本当に大丈夫ですので!!・・・』


 買い物も終え、瓜はグルグル回った思考を整理しようと足早に家に帰ろうとしますが、フィフスはそれを呼び止めました。


 「おい、ちょっと待てよ。」

 『な!・・・ 何か?』


 瓜は油の切れたロボットのようにカチコチになって振り返ると、フィフスはエコバッグを持つ反対の手でヒラヒラと一枚の紙を揺らしていました。


 『そ、それは?・・・』

 「『福引き券』。さっきの買い物で貰ったろ?」

 『え!? そ、そうでしたっけ!?』

 「お前、やっぱり体調悪いのか?」


 すると瓜は煙が出る速度で近付いて来て彼の手が摩擦で熱くなるほどの勢いで福引き券を取りました。


 「アッツ!!」

 「だだだ、大丈夫です!! せっかくですし行きましょう!!!」

 「お、おい・・・」


 動揺して普通に話してしまってしまいますが、瓜はそれに気付かないままに福引き会場に走って行きました。フィフスは彼女の行動に違和感を感じながらも見失わないようについて行きました。


 瓜はすぐに福引き会場に着くと、係員の呼びかけよりも早く大声で叫びながら福引き券を机に叩きつけました。


 「これ!! お願いします!!!」

 「は、はい! まいど・・・」


 フィフスがそこに追い付くのと同時に、瓜はこれまた煙が出る速度で福引きのガラガラを回し出しました。


 「瓜! 燃える! ガラガラが燃える!!」


 フィフスからかけられた声に瓜はハッとなって手を離しました。するとガラガラの速度が少しずつ遅くなっていき、口から小さい玉を出しました。


 カランコロン・・・


 「どれどれ・・・」


 その場の一行は玉の色と景品を見比べてみました。すると、二人はそれが分かって同時に目が点になります。






 「「・・・!!?」」





 そして係員がメガホンを持って大声を出しました。






 「おめでとうございまーーーーーーーーーす!!! 一等の豪華クルーズ旅行ペアチケットでーーーーす!!!!」






 「「アガガガガ・・・」」





 二人は、驚きのあまりしばらく絶句して固まってしまいました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


商店街の福引きの景品


・一等  豪華クルーズ旅行


・二等  カップラーメン一ヶ月分


・三等  おいしい棒三十本


・四等  スポンジ三つ


・五等  たわし一個


・外れ  ポケットティッシュ一個



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