第172話 夜のビル街にて・・・
シュン!! シュン!!・・・
夜遅い暗い都市街の中、次々と高層ビル街の屋上を飛び越えていく影が二人。前方の方は既に焦っている様子です。
「アァ・・・ ガァ・・・ どこまで追ってくんだよ!!・・・」
前方が後ろ振り返ってみると、そこから炎が迫り、彼は咄嗟に身を翻してかわしましたが、同時に壁際に追い込まれてしまいました。
「ウオワッ!!・・・」
まだ付いていたビルのライトに照らされ、後ずさりする魔人と、それを追い込むフィフスが照らされます。
「ここいらでしまいだな。最後のチャンスだ。『魔革隊』について全て吐け。」
彼は前に進みながら威圧を込めて聞きます。しかし魔人は・・・
「う、うるせえ!! 俺は話に乗っただけで重要事項は聞かされていないんだよ!! だから見逃してくれえ! 頼む!!」
と、必死な命乞いをします。フィフスはそれを受けて頭をかきました。
「ハァ・・・ またか。一体いつになったら進展があんだか・・・ もういいや、悪事をやめんなら帰っていいぞ。」
彼はそのまま身を翻して帰ろうとしますが、それを見た魔人は、ニッと不敵に小さく笑って彼を後ろから攻撃を仕掛けました。
『バカめ! 死ね!!』
しかし次の瞬間、後ろを向いていたフィフスの目線は彼に向き、ボソッとこう言いました。
「・・・ やっぱりな。」
そして彼は攻撃に徹して無防備になっていた魔人を蹴り上げ、上空に上げました。
「ナガッ!!?・・・」
「弁解の余地はなくなったな。」
フィフスは頭の上に両手を掲げてそれを重ね、黒い雷を発生させながら肩まで腕を下げました。そしてそのまま両手を魔人に向けて突き出し、口ずさみます。
「<火炎術 破壊炎>」
言葉を言い終えると同時に放たれた破壊炎は瞬時に魔人の体を飲み込み、断末魔を響かせながら爆散しました。
「フゥ・・・ 帰るか。」
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そこでフィフスが軽く伸びをし、戦闘が終わったビルの屋上から立ち去って行く様子を、彼から見えない遠くの建物から眺めている影も一つありました。一連の戦いを見終えたその存在は
「はい! いつものようにやられましたっと・・・」
一部始終を見て落胆しながら体を反転させて奥に進むカオス。一人ボソボソと文句をたれてながら、夜空が見やすい広い空間に出て来ました。そこで彼はひときわ大声で話し出します。
「あ~あ・・・ 砂人といい枕返しといい、せっかく実体化させても失態ばっかり・・・
・・・ホンット、君達さぁ~・・・
いくらなんでも役に立たなさすぎ!!!」
カオスが首を曲げ、上空に向かって怒鳴り散らすと、さっきまで何もなかったはずの夜空には、数え切れないほどに大量の契約の魔道書が浮かび上がっていました。するとそんな雄叫びを上げ続ける彼の頭に、監視しているセレンのチョップが炸裂しました。
「アガッ!!?・・・」
カオスは突然受けたキツい一発に固まってしまいます。それにセレンはジト目で冷たく話してきました。
「何珍しく熱くなってんのよ。とうとう壊れた? ・・・って、壊れてるのは元からか。」
「ちょっと! それは流石に酷くないッすか!?」
セレンの失言にカオスはようやく体を動かしました。セレンはショックを受けている彼に躊躇なく説教
「契約の魔道書に向かって怒鳴ったって仕方ないでしょ。」
セレンはカオスの肩を叩いて前に出て、同様に魔道書達を見上げます。
「ま、確かにここまで成果がないと、あんたが怒るのも無理ないわね・・・」
「全くですよ~・・・ 『ま、別プランの方はまずまずと言ったところか。でもそろそろ大手をかけないとマズいかもなぁ~・・・』」
カオスが仮面の中で少し考える顔を浮かべると、いつもと違う様子に気が付いたセレンが振り返りました。
「カオス、どうかしたの?」
「いや、なんでも・・・」
振り返ったセレンは、そのまま突然動きを止めました。カオスがそれに何かあったのかと振り返ると、こちらを歩いてくる男がいました。前進を包む独特な甲冑、二人と同じ、魔革隊の幹部が一人、『フログ』です。
「随分と盛り上がっているな。」
フログが冷静に言葉をかけると、セレンは真っ先に否定します。
「いつも通り説教してただけよ。」
「そうか? まあどうでもいいが。」
「カァー!! 相変わらず関心うっすいね~!! もう少し冷やかすとかないのかな?」
カオスからのそういったおちょくりも、彼には一切通じていないようでした。
「俺には関係のないことだ。」
「第一、私にはリーダーがいるしね。」
「わ~・・・ お熱いことで・・・」
カオスがつまんなそうに応えたために、次の瞬間にはセレンに頭をグリグリと押さえつけられてしまいました。
「アガガガガ!!! これキツいこれキツいっす!!!」
セレンはその状態のままフログに本題の質問をしました。
「それで? わざわざ何をしに来たの? 魔人が減った説教ならこの馬鹿にしてちょうだい!!」
「そんな無茶苦茶な!! アガガガガ!!!」
フログはカオスの様子を気にすることもなく、すぐにこう答えました。
「ホワイトから情報が入った。粗視化すればそのムカつきも少しは晴れるかもしれんぞ?」
セレンはそれを聞いてようやくカオスから手を離しました。
「へ~・・・ 聞かせて貰おうじゃない。」
「あ~・・・ 痛かった・・・」
二人は体勢を落ち着かせ、本格的にフログの話を聞き始めます。
三人から少し離れた所に不穏な風が吹き抜けていきました。
カオス
「「ナイトスクール仮面組!!」」
フログ
セレン「怒られても知らないわよ・・・」
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