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第170話 男性ホイホイ

 この事態が起こる数刻前。サードが取りに行く物があると言って一度家に帰っていき、そこから戻ってくると、例のチャイナドレスを見せていきました。


 「これを瓜に!!?」

 「そうよ~! 似合うと思って前々から買ってたの。アタシの分もあるから、二人でやりましょうよぉ!!」

 「いや、これ絶対そちらが着せたいだけだろ・・・」


 当然瓜もこれには困惑しています。


 「あの・・・ それは・・・ ちょっと・・・」

 「いいじゃん! 可愛いわよぉ!! だからやろうよ!! ね!! ね!! ねぇ!!!」


 見かねたフィフスがサードを止めようとしました。


 「姉上、落ち着いて・・・」

 「邪魔!」

 「ウンゴッ!!・・・」


 しかしサードの押しは強く、止めに入ったフィフスも軽く弾き飛ばされてしまいました。地面を勢い良く擦って止まったところには、平次がいました。フィフスはさっきの攻撃に意外とダメージがあったようでピクピクしています。


 「大丈夫か、赤鬼?」

 「ねえ、年下の姉弟ってどこもこんなものなの?」

 「いや、俺の場合は逆。」

 「どこも男って立場が弱いんだなぁ~・・・」

 「言うな・・・」


 蚊帳の外の男子に目もくれず、サードは続けます。


 「さあ!! さあ!! さあぁ!!!」

 「あの・・・ サードさん・・・」


 そしてとうとうサードはどこからか取り出した簡易試着室を瓜に被せ、フィフス立ちに見えないようにササッと瓜の今着ている服と着替えさせてみせました。


 「あぁーーーーーーーれぇーーーーーーーーー!!!」



____________________



 そして現在、美女二人のチャイナドレス姿による接客は予想以上の威力を放ち、SNSで広がって男性客の行列が出来ていました。しかし瓜はすぐに店の後ろに隠れてしまいます。


 『は、恥ずかしいです・・・』


 彼女は普段ダボッとしたゆとりのある服装をしていたため、こういう体のラインがハッキリした服装は普通以上に気まずくしてしまっています。


 「いいわぁ~ウリーちゃん! やっぱりあたしの目に狂いはなかったわぁ!!」

 「や、止めてください・・・ サードさん。」


 サードは隙を見て瓜の体をグルリと周りながらスマートフォンで写真を撮り続けています。そして男子二人はフィフスを指令に料理担当をしていました。


 「なぁ。」

 「なんだ?」

 「なんで当たり前のように俺まで手伝わされてるわけ?」

 「成り行きだ。ちなみに俺もな。」

 「は?」


 その日はコスプレ喫茶化したことで、夜になって閉店する頃にはかなりの収益を上げていました。しかし・・・




 「あぁ~・・・」

 「あぁ~・・・」


 その日の夜、リビングで収益と静から聞いたツケの額を比べてみると、まだまだ遠く及びませんでした。


 『ぜ、全然足りませんね・・・』

 「どんだけ贅沢な暮らししてんだよ、あのアホ坊ちゃん・・・」


 二人は同時にため息をつきますが、疲れもあって考えは浮かびませんでした。


 『う~む・・・ これ以上にはどうすれば・・・』

 「ま、分からんことを遅くまで考えても仕方ねえ。とりあえず飯にすっか。」

 『はい。』


 早速フィフスは席を立ち、キッチンに向かう途中にリビングの入り口付近を通り過ぎます。すると・・・


 「俺の下ごしらえがもっと速ければ、行列から抜ける人は減ったはずだ。」

 「ウッワビックリした!!・・・」


 彼が通り過ぎたその入り口に平次が凜々しい出で立ちで立っていたのです。


 「何してんのお前?」


 フィフスは平次に話しかけようと近付くと、今度は真反対の方から声が聞こえました。


 「アタシがもっとセクシーなポーズを取れば、客はもっと引き寄せられていたはずよ。」

 「オワッ!! こっちもですか・・・」


 すると二人が勝手に言い合いを始めました。


 「いいや! 俺の皿洗いがもっと速ければ!!」

 「いいや! 店の雰囲気をもっと明るくすれば!!」

 「いいや! 料理人がもっと愛想がよければ!!」

 「いいや! ラーメン作ってる奴がもっと可愛い子なら!!」


 「お前ら途中から俺への悪口言ってるだろ。



  ・・・ていうか、





  どっから入ってきた人ん家に!!?」


 フィフスは当たり前のように登場した二人に今更突っ込みましたが、相手は冷静にジト目をして返事してきます。


 「どっからって、玄関に決まってんだろ。」

 「気をつけなさいよ。鍵開いてたからついつい勝手に入っちゃったじゃない。」

 「開いても勝手に入ってくるんじゃねえよ・・・」


 フィフスがまた的確な指摘を言うと、サードは話を変えて誤魔化してきました。


 「でも実際の所どうすんの? アタシに出来るのはせいぜいここまでよ。」


 フィフスは誤魔化されていることに気付きながらも、これ以上くどくど言っても意味が無いと悟って話に乗りました。


 「あとは・・・ それこそまぁ宣伝だろうが、コストがなぁ・・・」


 フィフス、瓜、平次、ユニーがそれぞれ眉をしぼめている中、サードのみ何と悩んでいるのだとでも言いたそうな顔をしています。


 「皆どうしたのよ?」

 「「「ヘッ?・・・」」」

 「いるじゃない、知り合いの中でただで宣伝してくれそうな子。」


 少し間を置いて、残りの人達は一斉に声を上げました。


 「「「アァッ!!!」」」


 そのとき、その場にいる全員の頭に同じ人物が思い浮かびました。



      !!』

 『『『鈴音さん!!』

      ・・・』



____________________



 その頃、全員出払って誰もいない石導家。そこに近付く足音が一つ。


 カツッ・・・ カツッ・・・ カツッ・・・ カツッ・・・


 そしてその足音の犯人は、無言のまま平次が閉め忘れた部屋の扉を開け、中に入っていきました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


 その後も平次とサードによるフィフスへの悪口はけっこう長めに続けました。



平次「いいや! あんなすかした顔してなければ!!」


サード「いいや! あんなキモい性格してなければ!!」



フィフス「や~め~て~!! いくら俺でも何度も言われたら傷つくんですけどぉ~!!!」




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