第169話 売り込み戦略
そこから広場に着いたフィフスと瓜は、そこでようやく本腰を入れて店の準備をしましたが、時間が早いこともあってお客さんは全然来ませんでした。
「売れねえなぁ・・・」
「ですねぇ・・・」
するとそこに息も絶え絶えになっていながらも歩く平次が追い付いてきました。
「お・・・ おいつ・・・ 詰めたぞ・・・ あか・・・ 赤鬼ぃ・・・」
「お前、わざわざここまで来たのか?」
「あ、当たり前じゃい!!・・・ こっちは・・・ 七千円・・・ パクられてんだぞ!!」
「何だよ文句言いやがって、瓜の息付きラーメン上げただろ。」
『それでさっき急にあんなことさせたんですか!!?』
瓜はさっきのフィフスと平次のやりとりを詳しくは知らなかったようで、彼は彼女には平次の優しさと伝えていたらしいです。
怒れる平次の文句は止まりません。
「とにかくだ!! 俺は金を返して貰うまでここを動く気は無い!!!」
「う~わ・・・ 迷惑客・・・」
「先に迷惑かけたのはどっちだよ!!」
大声を出し続け、ラーメン屋の屋台は周りの人達から完全に白い目で見られています。これをマズいと見た瓜は、二人の間を割って平次に筆談でこう提案してみました。
「とにかく、ウチのラーメンを食べていきませんか?」
怒り狂う平次でしたが、彼女の乱入によってすぐに調子を戻しました。
「・・・ 町田さんが、そう言うなら・・・」
『このメガネ、ホント美少女に弱いな。』
瓜の鶴の一声で大人しくなった平次に、フィフスは試しもかねてラーメンを作って彼に出しました。
「ほれ、初の客さん、喰ってみろ。」
「予想はしていたが、やっぱ作るのはお前かよ。どれどれ・・・」
平次は正直期待せずに出されたラーメンを一口運びます。すると次の瞬間、彼は目をまん丸にして驚きました。
「うっま!! 驚いた、お前ラーメンまで作れたのか!?」
そのラーメンの味はかなりよかったようです。平次はフィフスが料理が出来る男ということは知っていましたが、それがラーメンもとなると話は変わります。
「しっかしどこで作り方を・・・」
「俺だって情報の無い料理を作る事なんざ出来ねえよ。元々作っていた人のレシピをそのまま覚えただけだ。おかげで徹夜だけどな。フワァ~・・・」
あくびをして少しウトウトするフィフスですが、彼の言っていることに平次は汗を流します。
「いえ、一徹でここまで出来てる時点でおかしいだろ・・・ しかも朝っぱらなのにツルツルいけるぞ。」
「そりゃあそれように俺が配合を調整したからな。」
「即興で!!? おい~・・・ お前もう器用通り越して怖いわ・・・ グレシアもそりゃ嫉妬するよな・・・」
そこから平次はどんどん食が進み、気付いた頃にはもう完食していました。
「ハァ~・・・ ここまで美味いとは思わなかった。七千円は言い過ぎだが実際喰ってよかった。」
「そりゃどうもありがとうございます。ただお前も見て分かるだろ。これ・・・」
フィフスは店の外を指さし、平次が振り向くと、そこには人っ子一人いなくなっていました。
「味がいいからって、それが知られなきゃ人なんて来ねえよ。さっきの誰かさんの騒ぎのせいで、更に人が引いてったしな。」
「それはお前は金盗むからだろ!! まあでも確かに、これだけの物が広まらないのも何か惜しいな・・・」
『何か宣伝でも出来ないでしょうか・・・』
瓜がそうフィフスに聞きますが、彼はそれに冷たく返事します。
「宣伝って、屋台の店ってだけでも認知は皆無なんだぞ・・・ チラシとかを作ったところで、コストがかかるだけだ。今の俺らにはそんな金は無い。」
『そうですか・・・』
三人は頭を抱え込みます。
「「「う~ん・・・」」」
「まあ確かに、宣伝できればいいってのはそうなんだが・・・ インパクトを付けてSNSで広げて貰うとか。あぁ・・・ 知人にこういうのに詳しいのがいればなぁ・・・」
するとそれを聞いた平次は目をパチパチと動かし、フィフスにこう言ってきました。
「いるじゃん、金にがめつい知り合い。」
「「?」」
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「呼ばれて飛び出てここに参上!! ウリーちゃんからのお願いって事で急いできたわよぉ!!」
助っ人として呼ばれたのは、サードでした。
「お、お願いします・・・」
「任せなさいよ! 派手にお店を着飾ってあげるわ!!」
サードは瓜にウインクをしました。
「頼んだっす、姉上。」
「あれ、アンタいたの?」
「実の弟に対しての扱い酷くない!?」
そこからサードはお店・・・ というか普段と姿が違う瓜を見回していました。
「う~ん・・・ ほうほう・・・ なるほどね。」
「あ、あのぉ・・・」
「瓜じゃなくて店を見回せ!!」
一通り店を見回ったサードは、カウンターに座って話しました。
「全っ然ダメね! 華が一切無いわ!!」
「そりゃ屋台だからな。宣伝もコストはかけたくない。」
「その、どうにか・・・ なりませんか?」
サードは少し考えた上で、片目を閉じながら人差し指を上げました。
「一つ思い付いたわ。コストもかからず派手にお店を着飾れる方法がね!!」
「「「オォーー!!」」」
『って、今更ながら姉貴のアイデアに頼っている時点で悪いフラグが立っちまったような気がするんだが・・・』
フィフスの密かな心配をよそに、すぐさまサードによる改装が行なわれ、時間も丁度お昼時になりました。
するとその広場に、休憩に出たサラリーマンがやって来ました。
「ふう、ここらへのお店で食べるか・・・ どこかいい店は・・・」
サラリーマンがその場を歩いていると、左から声が聞こえてきました。
「ちょっと! そこのおにーさん!」
「ん?」
サラリーマンが声を方向に顔を向けると、そこには・・・
「もしよろしければ・・・」
「「こちらのラーメン屋で、食べていきませんか?」」
「!!!」
チャイナドレスを着込み、片足を上げて笑顔を向ける瓜とサードがいました。
『ホントになんでこうなったぁーーーーーーーーー!!!?』
店の中のフィフスは心でそう叫びました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
・サードのチャイナドレス
サードがいずれ瓜にコスプレさせるために用意していた服の一つ
来た人のスタイルがありありと強調される
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