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第168話 ラーメンバイト

 ガラガラガラガラ・・・


 静は経義に怪しまれないためと屋敷に戻っていき、フィフスと瓜は無言のまま屋台を一緒に引きずって坂道を登っていました。しかし沈黙に耐えかねた瓜がとうとう話しかけてきます。


 『あの・・・ そろそろどこかでお店を始めませんか?』

 「分かってないな瓜。今何時だと思ってる?」

 『ええっと、確か八時ですけど・・・』

 「そう、八時だ。()()八時だ・・・






  ・・・お前、こんな朝早い時間からラーメンなんて喰いたいか?」


 フィフスの言おうとしていることを彼女も察しました。


 『い、いいえ・・・』

 「そういうことだ、普通に商売してたってこの時間じゃろくに客も来ねえ、そこで一つ俺は考えた。」

 『考え、ですか?』



____________________



 春休み初日の石導家。グレシアと美照は二人で朝からバーゲンに向かって行ってて家におらず、一人留守番して暇だった平次はボ~っとテレビを見ていました。



 「続いてのニュースです。昨日、都内某所にて、十六歳の少年が自殺しました。警察はイジメが原因として捜査しています。」



 「ハァ・・・ 春休みにいきなり重いニュースだな・・・」


 平次がため息をしていると、そこに特徴的な音が聞こえてきました。



 チャララ~ララ・・・ チャララララ~・・・



 「ん? ラーメン屋の屋台か? この時間じゃ客なんて来ないだろうに・・・」


 彼がそう独り言を呟くと、そこにまたラーメン屋さんの笛の音が鳴ります。屋台の距離が近くなっているのか、その音はさっきより大きく聞こえました。



 チャララ~ララ! チャララララ~!


 平次は特に動揺する様子もなくテレビを見続けていましたが、そこにまた笛の音が聞こえて来ました。それも・・・



 チャララ~ララ!!! チャララララァ!!!



 平次に騒音として聞こえるほどの大音量だったのです。これには彼も立ち上がって窓の方を見ました。


 「うるせー!! 何だ!? さっきの音は近く通りかかったレベルじゃねえだろ・・・






 ってウワッ!!?・・・」


 平次が見たその窓の先には、両目を見開いて無言で笛を吹いているフィフスがいました。突然の恐怖映像にビックリして平次は身を引きますが、すぐに落ち着かせて窓を開けました。


 「何これ? 何なのお前? 春休み早々新手の嫌がらせかよ。」


 フィフスは笛を降ろして彼の質問に答えました。


 「そんなつもりはない。ただラーメンを食って欲しいだけだ。」

 「朝っぱらから人に迷惑かけといて頼み事なんてするか普通?」

 「それについては俺も思った。てことで一杯七百円。」

 「うん、お前一つの文中で既に矛盾が生じてるの気付いてる?」


 フィフスは平次の言葉に耳を貸す気が無く、ラーメンを買わせようとゴリ押しを始めました。


 「で、買うよな? 買ってくれるよね!? 買ってくれるまでここを動かないよ!!」

 「いい加減にしないと通報するぞ。」


 平次も冷静に突っ込んでなかなかラーメンを買おうとしないでいると、それを予想していたフィフスがこう打って出ました。


 「今ならもれなく瓜の『フーフー』が付いてきますよ~・・・」


 それを言われた途端、平次の全身が震える衝撃が走りました。


 「そそそ、そんなこと・・・ お前の出任せかなんかだろう・・・」

 「あれ見てみ。」


 平次はベランダに出てフィフスの指差すところを見ます。そこには、屋台でフィフスが戻るのを待ちながら両手に白い息を吹きかけている瓜がいました。そこにユニーが現れ、彼女にじゃれついています。


 「ナッ!!?・・・」


 その光景を見て完全に固まった平次の肩にフィフスが手を置きます。


 「それで? いくついるかな? 五杯ほど?」


 しかしフィフスの予想に反して平次は冷静にこう言ってきました。


 「フッ・・・ 舐めるなよ。この俺がその程度のことで落ちるかと思ったか?」

 「な、何!?・・・」


 フィフスが身構えると、平次はかけているメガネをクイッと上げてクールに言います。




 「・・・ 十杯は余裕だ。」


 「毎度あり!!」


 予想以上に多く売れることにフィフスはウキウキしながら平次からお金を受け取り、軽々とベランダから飛び降りていきました。一人になった平次はまた妄想を始めます。


 『フフフ・・・ 町田さんのフーフー付き・・・ それはつまり・・・』





<平次の妄想>


 熱々のラーメンの一部を箸で上げ、平次の目の前でフーフーと優しく息を吹きかけてそれを冷ます瓜。


 「フー・・・ フー・・・ よし!」


 そこから瓜は持ち上げた麺を平次に向けてきます。そしてトドメの・・・


 「はい、ア~ンです!」




 『ウオォーーーーーーーーー!!! 何のご褒美プレイだこれぇーーーーーーーーー!!! こうしちゃおれん、身支度せねば!!』


 平次はだらけた部屋を片付け始めますが、それを初めてすぐにインターホンが鳴りました。


 ピーンポーーーン!!・・・


 「え? 早いな。」


 彼はすぐに扉を開けると、そこにはニコニコ顔のフィフスがいくつか積み重なった袋麺を持っていました。平次はそれを見て一言


 「何これ?」


 と当然の反応を見せます。しかしそれにフィフスはそれにこう言いました。


 「袋麺十袋。」

 「うん。それで?」

 「瓜からのフーフー付き袋麺。これならお昼にでも食べれるだろ。じゃ!」


 フィフスは平次が困惑している間にそこから逃げていきました。


 「ちょっと待て!! これよ~するにインスタントラーメン割高で買わされただけじゃねえか!! オイ待て!! 赤鬼ぃ!!!・・・」


 フィフスは平次の追跡を屋台を引きずりながら逃げていきました。平次が息切れすると、袋麺の裏に一枚の貼り紙が付いていました。それを見てみると、そこには・・・


 「クーリングオフは受け付けてませ~ん!!・・・」


 ブチッ!!!・・・


 「あ~か~お~に~!!! 覚えてろぉ~!!!!」


 平次の悔しい叫びが二人にも聞こえましたが、フィフスは無視して走って行きました。


 

<おまけ それぞれの節分>


・町田家


 二人で仲良く豆を食べる


瓜『福も内、鬼も内です!』


フィフス「だな。」



・石導家


 必死で壁に付けた鬼の仮面に豆をぶつける平次と、それを冷めた目で見る残りの一行


平次「鬼はぁぁぁぁぁぁ!! そぉぉぉぉぉとぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


グレシア「・・・ キモ。」



・日正家


 豆まきなどなくとにかく豪華な恵方巻きが並ぶ。


ルーズ「お嬢様の願い、全て叶えるにはまだまだ足りません!!」


鈴音「こんなに食べられないぞ!!!」





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