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第162話 体と魂

 その頃、グレシア達も帰ったことで一人になった瓜は、細々と夕食の準備を始めました。すると彼女が気付けば、作っている料理は二人分になっていました。彼女はそれを見て手を止めてしまいます。


 「・・・」


 そして瓜はそのままコンロの火を消して台所を離れ、リビングのソファに座り込みました。いざ人気(ひとけ)が無くなってしまうと、やはりフィフスがいないことを寂しく思ってしまうようです。


 「フィフスさん・・・」


 そんな彼女は彼が最後に送ってくれたぬいぐるみを見つめます。その中に当の本人がいることは知りませんが・・・


 『どんどん暗くなってやがる・・・ せめてアイツに一言でも話せればいいんだが・・・』


 フィフスがまた意思疎通に奮闘しようと気を集中させます。


 『届け~・・・』


 しかしそれは玄関の方から突然聞こえてきた音によって止まってしまいました。


 ガチャ!!・・・


 『ッン!! 何だ!!?』


 フィフスが何事かと驚くと、次の瞬間、玄関から・・・




 「た、ただいま・・・」



 と大きな声が聞こえてきました。しかもこの声は・・・


 『まさか・・・ そんな・・・』


 おののくフィフスですが、瓜はその声を聞いた途端に跳び上がるようにしてソファから立ち、玄関へと一目散に走って行きました。


 そして期待に胸を膨らませて玄関についた彼女が見たのは、まごう事なきフィフスその人でした。


 「あ~・・・ その、ただいま。」


 彼の姿を見た瓜は、ただ一言言葉を言うつもりが、すぐに感極まって目が潤み、声がこもってしまいます。


 「どこ!! 行ってたん・・・ ですか!!?」

 「い、いや~・・・ その、事故に巻き込まれてね、しばらく意識がなくて、ここに来れなかったんだ。」

 「そう・・・ なんですか?」

 「ああ、心配させて悪かったね。謝るよ。」


 安心したような顔をする瓜を見るその男。当然この男は本当のフィフスではありません。その頭の中も、完全に邪なことを考えていました。


 『ウッヒョーーーーーーーーー!!! あの仮面男から聞いてはいたが、軽く想像以上に可愛いぜ!!』


 男はさっきカラオケの廊下でしたカオスとの会話を思い出しました。



____________________



 「いや、何かこの体に入ってから、時折女の声が聞こえてきてよ~・・・ 可愛いんだけど、気持ち悪くて・・・」

 「へぇ~・・・」


 カオスはその声が誰のものなのかすぐに察し、一度間を置いて話し出しました。


 「実はその体、枕返しと同じく契約魔人のものでね。おそらく声の主はその契約者だろうね。」


 それを聞いて男は驚いて虫唾(むしず)が走りました。


 「ハァ!!? そんなの聞いてねえぞ!!!」


 そんな彼にもカオスはケラケラと笑いながら話し続けます。


 「大丈夫、魔人でもイケメンはイケメンだし、変なことしなきゃ人間の姿に擬態したままだから。」

 「だからって、化け物の体のままなんて気分が悪くて仕方ねえ!!」


 文句を言い続ける彼に、カオスはこう言って黙らせました。


 「その契約者の子、かなりの美少女だよ。」


 すると男の文句が止まり、「ほ~う。」と一言言いました。そこでカオスは一つ提案をします。


 「これ以上枕返しを待たせるのも悪いからさ、その子と付き合えたら、契約完了って事でどう?道は教えるからさぁ~・・・」



____________________



 『確かな上玉だ。これは何としても落として、俺の女に加えてやるぞぉ!!』


 男は内心でそうやる気を出し、アプローチを始めます。


 「その、ここで話すのもなんだし、部屋に行かない?」

 「あ、はい・・・」


 二人はそのままリビングへと入ります。そこには当然、さっき置いたぬいぐるみもありました。その中の本物のフィフスは、自分の体が目の前にあることに恐怖します。


 『俺の体!! まさか自分からここにやってくるとは・・・ でも、何のために? ええい! どうにしろ瓜が危ない! 動けぇーーー!!』


 フィフスはさっきよりも強く動こうとしますが、それでもぬいぐるみの体はピクリともしません。


 『クソッ!! ウゴォーーーーーーーーー!!!』



____________________



 所戻って経義。かたくなに攻めはしますが、枕返しの方も負けじとそれを回避していました。


 「鈍重な武器だ。当たれば痛そうだが、回避すれば屁でも無い。」

 「ならば、当てれば勝ちって事だろ!!」

 「それはどうかな?」


 企むように笑う枕返しに経義が構えますが、それに対して相手はフィフスに向けたのと同じ構えを取ります。


 静は枕返しが何かを企んで言うように見えたようで、二人の周囲をよく見ます。するといつの間にか経義の足下に、小さな人形が置かれていました。


 「あれは!」


 そうとは知らず経義は枕返しに向かっていこうとし、相手は待っていましたとばかりに腕を開店させ始めた。しかし・・・


 「若様! 危ない!!」

 「!?」


 ドンッ!!


 静は咄嗟に走って経義を突き飛ばし、彼の代わりに魔術にかかってしまいました。


 「ウッ!!・・・ 『意識が・・・』」


 途端に彼女はその場に倒れ、経義は目を見開きます。


 「シズ!!」


 彼はすぐに静の所に駆け寄りますが、枕返しはその前にすかさず彼女の近くの置物を拾い上げました。


 「おおっと危ない。」

 「貴様、シズに何を!!」


 経義は武器を突き立てようとすると、枕返しは拾った置物に爪を突き立てます。


 「動くな。コイツがどうなってもいいのか?」

 「あ? それがどうした。ただの置物だろ。」

 「残念。確かに見てくれは置物だが、この中にはそこの娘の魂が入っている。」

 「魂だと!?」


 優位に立った枕返しは、得意げに自分の術の説明をします。


 「俺の特殊術は、人の魂を別の物体に移すことが出来る。今その体から、奪い取ったんだよ。」

 「何!?」

 「この術からか、俺はこの世界で『枕返し』とか呼ばれてるらしい。なんともピンポイントな名前だよなぁ~?」


 その時点で経義の耳に枕返しの話は入ってきませんでした。別のことを考えていたからです。


 『魂を入れ替える術・・・ じゃあさっきのアイツは・・・』


 そこで次に彼は自分が瓜に渡したぬいぐるみのことを思い出しました。


 『まさか・・・ 本物のアイツは・・・』


 経義は、今フィフスがどこにいるのかに気が付きました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・枕返しの使った置物はカオスが選んできました。


カオス「これなんていいんじゃない? どこか不気味な感じがあって・・・」


セレン『いやセンスないわぁ・・・』




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