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第160話 体はいずこ?

 鈴音とルーズは今見たものに驚き、そしてその瞬間から突然赤信号がとても邪魔になりました。


 「王子!!?」

 「でも、今は行方不明になっているって!!?」

 「とにかく、話をしに行くしか!!」


 二人は目の前の信号機が青になったと見るや、すぐに向こう岸に向かって走り出しました。しかし向こうはそれに気付かず、奥の満ちにへと歩いて行きます。


 「あっ! 小馬ッチが・・・」

 「お嬢様、先に進みます。」

 「頼んだぞ!!」


 ルーズは鈴音の許可を貰って速度を速くし、交差点の先の細い道に入ろうとします。しかし人混みのせいで彼が思っていたより時間がかかり、ようやく目的地に着いた頃には、その場にフィフスの姿はありませんでした。


 『クソッ!・・・ 人混みで匂いが紛れ込んで分からなくなった!!』

 「ルーズ!!」


 底に一足遅れて息切れ気味の鈴音が追い付きました。


 「ハァ・・・ ハァ・・・ 小馬ッチは?」

 「すみません、見失いました。」

 「そうか・・・ とにかく、皆に・・・ 伝えないと・・・」


 ルーズはポケットからスマホを取り出し、皆に電話をしました。



____________________



 そこからルーズからの連絡によって、グレシアも揃って町田家に集合し、テーブルに着くと、瓜がお茶を配ってくれました。


 「ありがとな、マッチー。」


 瓜は鈴音からの言葉にまた無言でコクリと頷いてお盆をしまいに行きました。すると、そこにグレシアは経義達がいないことに気が付きます。


 「あれ? 牛若とその周りの人は?」

 「捜索に出ていてつかめませんでした。一応彼にもどこで見たかは報告しています。」


 そのタイミングに、グレシアは率直に聞いてみました。


 「それで、フィフスはまたいなくなったの?」

 「ええ、すみません。匂いだけでも追えれば・・・」

 「構いません。」


 ルーズは聞こえて来た瓜の言葉に振り返ると、少しだけ安心したような顔の彼女がいました。


 「瓜さん・・・」

 「少しだけ安心してるようだぞ。」

 「どうにしろ、これで無事は分かったわね。」


 そうして一安心している一行。しかし一人だけそうならず、それどころか恐ろしく焦る人物が。それは・・・






 『体乗っ取られたぁーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!』


 そう、現在ぬいぐるみの中にいたフィフス本人です。皆の後ろにいた彼は、この事実にどよめいています。生身の体なら全身汗でびっしょりになっているでしょう。


 『誰だ!! 誰が入ってんだそれ!!?』


 ぬいぐるみの中で彼は大声を上げていましたが、周りにいる瓜達には一斉伝わっていません。そこにグレシアが話し出します。


 「ところでさ、見つかったフィフスはどうしてたの? まさか、記憶をなくしてるとか・・・」


 それを受けて現状を見てきたルーズと鈴音は答えに戸惑いました。なんせ心配している人が女と遊びに行ってたなんて言ったら色々とマズいからでした。結果・・・


 「そ、その・・・ 交差点で一瞬見ただけだったから・・・」

 「何をしていたかまでは、分かりませんでした。」


 その場はそう誤魔化して話しましたが、ルーズはともかく、鈴音の方はぎこちない笑顔を作ってしまい、それを見た瓜とグレシアは、何かあったなと察しました。そして本人は・・・


 『待て待て待て待て!! 何があった!? 俺の体に一体何があったぁーーーーーーーーーーーーー!!!?』


 フィフスは周りに聞こえない大声で叫び散らしました。



____________________



 その頃、フィフスの体は、複数人のギャルを連れてカラオケルームに入っていました。彼はハイテンションに歌い終わり、周囲の人達もそれに乗って騒ぎます。


 「イエェーーーーーイ!!」

 「「「イエェーーーーーイ!!!」」」


 盛り上がっていた彼らでしたが、そこにドアの方からノック音が聞こえて来ました。


 「ん? 注文してたポテトかな?」

 「よし、皆は歌っててぇ~ 俺が取ってくるから。」

 「え~ 優し~!」


 そしてニコニコ顔で彼が扉に向かっていって開けました。


 「ハ~イ! アザ~ッス!!」


 てっきり店員が来たものだと思い込んでいた彼は、目の前にいた相手が誰かを知って目を丸くしました。


 「オイッ!!」

 「ヒィ~!!」


 それは、昨日フィフスを襲っていた魔人でした。


 「いつまで待たせやがる!! さっさと契約を完了しろ!!!」


 どうやら今フィフスの体に入っているのは、この魔人の契約者だったようです。


 「そ、そうは言われても、それは、どうしたら完了なのかなんて、自分には分からないですし・・・」

 「ええいやかましい!! いいからとっとと契約を完了しろぉ!!!」

 「そんなぁ~・・・」


 男がさっきまでの女子への態度とは打って変わってへっぴり腰でいると、怒声を浴びせる魔人の肩が突然後ろから掴まれました。


 「誰だ!?」

 「ぼ~く。」


 そこにいたのは、仮面越しでもニヤついていることが分かるカオスがいました。


 「何のようだ!? 俺は忙しいんだ!!」

 「その人に話がある。退いてくれると嬉しいな。」

 「知るか! 俺はコイツに・・・」

 「二度は言わないよ。」


 最後のカオスの言葉はトーンが変わり、それにゾッとした魔人は、舌打ちをして去って行きました。残された男は、今度はカオスに詰め寄られました。


 「で、調子はどう?」


 さっきと違い優しい声でそう聞いてくるカオスに、男の方も調子を戻して答えました。


 「いい気分だ! 体が変わっただけでこんなにもモテるなんて!! やっぱイケメンってのはいつもずるいんだよ!!」

 「それはただの嫉妬でしょ? だからイケメンの体を上げたのに・・・ それに、さっきは沈めてあげたけど、いい加減にしないと『枕返し』が君を襲っちゃうよ~ そろそろケリを付けないとね。」

 「でも俺はまだまだ足んねえよ! これまで散々顔が悪いって舐められてきたんだ!! その分やり返さない割に合わないんだ!!!」


 男からのその言葉にカオスは腕を組んで考え込みました。


 『う~む、困ったなぁ~・・・ この手の願いは契約者本人が満足して言葉にするまで完了しないからなぁ~・・・ 』


 彼がふてくされていると、男の方は急にしかめた顔をして頭を叩き始めました。


 「あ~! まただ!!」

 「ん? どうかしたの?」


 男はそれが収まったのか、表情を戻してカオスに話します。


 「いや、何かこの体に入ってから、時折女の声が聞こえてきてよ~・・・ 可愛いんだけど、気持ち悪くて・・・」

 「へぇ~・・・」


 彼の話を聞いたカオスは、突然声のトーンを低くし、何かを考え出したように、何かを思い付きました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


 ルーズの五感は通常の人間や魔人よりかなり強いです。特に視覚と聴覚が鋭く、そのおかげで彼はフィフス立ちよりも勘が鋭いです。


 しかしこのせいで聞こえたくもない悪口が聞こえる事も多く、幼少期はとても苦労したようです。


ルーズ「この件については、後々また話すとしましょう。」




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