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第159話 私の周りには・・・

 そこから瓜が学校の教室に到着すると、すぐにグレシア達が彼女の席の周りに集まってきました。ちなみに平次は入院中でここにはいません。


 「瓜!!」

 「マッチー!! 鎧君から話を聞いたぞ!!」


 より詰められる当の彼女はいつもと違い、その場で顔を沈めたままで小さなリアクションしかしません。


 「・・・ 瓜さん、大丈夫ですか?」


 ルーズからの心配の言葉に、無言で首を縦に振って返事としました。そのまま彼女は席から離れて教室を出て行ってしまいました。いつもとは完全に足取りが違い、今は一人になりたいという思いが周りにひしひしと伝わってきました。


 「瓜・・・」

 「やっぱり相当来てるみたいだな。」

 「手がかりもない以上、エデンの皆さんからの朗報を待つしかありませんね。」




 ポケットの中に彼女を心配する目線を送るユニーを入れてフラフラと廊下を歩く瓜は、視線を下に向けて心ここにあらずといった様子でした。今日の彼女は、いつも以上に誰かと話がしずらかったのです。


 『どうにも話がしずらいです。皆さんに心配をかけてしまっているかも・・・』


 しかしだからこそ彼女は心配をかけない接し方が分からず、つい逃げてしまったのです。しかしそんな彼女の肩に手が置かれました。


 「う~り。」


 ビクッ!!


 驚いた瓜が振り向くと、彼女の頬を指を突き立ててくるグレシアがいました。


 「しゅ、しゅかしゃん?」


 頬を押されて言葉が変になる瓜。するとグレシアは手を放し、少し怒ったような顔をしてこう言ってきました。


 「どうせアタシ達に心配かけないようにしたんでしょ。バレバレよ。」

 「す、すみません・・・」

 「また謝って・・・ 辛いことがあるなら、相談しなさいよ。そのための『友達』でしょ?」


 グレシアがフッと笑って言った最後の言葉に、瓜は胸を打たれました。


 「志歌さん・・・」


 瓜が感激していると、今度は後ろから突然目隠しされました。


 「ウワッ!!?」

 「そうだぞ! マッチー!!」

 「鈴音さん!?」


 そして鈴音は目隠しの手を退け、その腕を伸ばして後ろから抱きついてきました。


 「これまで散々友達を探しといて、いざ出来た途端に隠し事なんて水くさいぞ。悩みがあるなら話なされ~!!」


 鈴音は口を3の形にしてブ~っとふてくされています。瓜は彼女の接し方に微苦笑をしますが、心の底では何かホッとしたような気持ちになりました。


 そしてふと気付くと、フィフスがいなくなって寂しいはずなのに、どこか嬉しく感じている自分そして彼女は・・・


 『そうか! 私の周りには・・・ いつの間にかこんなにも素晴らしい『友達』が出来ていたんだ。』


 すると自然に彼女の顔もほがらかな笑顔に変わり、それを見た残り二人がそれぞれ驚きます。


 「きっと小馬ッチもすぐに戻ってくるって!! ・・・って、ウワッ! 今度は当然笑顔になった・・・」

 「どうしたマッチー!!」

 「・・・ ありがとうございます、皆さん!!」

 「「フェ!!?・・・」」


 珍しく彼女から直接ハッキリとした感謝の言葉が来たことで、二人はむしろ自分が恥ずかしくなって黙ってしまいました。


 その様子を少し離れた所から覗いていたルーズ。そこの雰囲気に感化されてこちらもフッと笑ってしまいます。


 『見ていますか王子。あなたが彼女のために奮闘して出来た『友達(もの)』は、今もしっかりと彼女を支え、共に楽しく過ごしていますよ。


  ・・・ 遠くから、ご覧になってますよね・・・









  ・・・ いや、これだとあの人死んじゃったみたいになってんだけど!! 違うよね? 死んでないよね!!? 大丈夫だよね!!!?』


 ルーズは自分でそんなことを思った途端に焦りだし、震えて体中から汗を流して自問自答をしだしました。その変な様子に廊下を歩いていた他の生徒達がヒソヒソ話しながら若干引いて冷や汗を流しています。そしてその中の一人が心配になって声をかけてきました。


 「お、岡見君、大丈夫?」

 「ハイッ!! 問題ありません!!!」

 「ヒィ!!」


 ルーズは咄嗟に汗まみれの目を見開き、歯をむき出しにしたた笑顔で振り返って大声でそう言い、声をかけてきた女子生徒に恐怖を与えてしまいました。



____________________



 しかしその日中連絡を待っても、結局朗報は届きませんでした。その日は学年末テストがあり、午後には放課後になり、瓜達は下校していました。


 「それじゃあ、ここで・・・」

 「オウ! また明日!!」


 そして途中まで一緒にいた鈴音達と別れ、一礼をして家に帰っていきました。遠目にそれを見る鈴音は手を振っていたのを下げ、ルーズに話しかけます。


 「やっぱり心配になるぞ。マッチー、人一倍我慢する性格だから・・・」


 しかし彼女がルーズを見ても、彼の方は全然普通にして冷めた顔をしており、彼女はムッとして彼の腕をつねりました。


 「ルーズ! そんな顔したらマッチーに失礼だぞ!!」

 「イタタタタ・・・ しかし鈴音様、自分はこの事態には慣れていますので・・・」

 「そうなのか?」


 ルーズは自分の知っているフィフスの幼少期の話をしながら家に向かって歩き出しました。


 「ほぉ~・・・ 前にシカシカからも少し聞いたけど、そんな感じだったのか。」

 「ええ、なのでおのずと心配が薄れるんですよね。今ももしかしたら意外と近くに・・・」


 すると交差点に着いた二人が赤信号に止まったところで、ルーズが突然向こう岸に顔を向けました。


 「ッン!!・・・」

 「ん? どうかしたか?」

 「いえ、車の音に交ざって聞こえずラインですが、向こう岸から聞き覚えのある声が・・・」


 彼は聴覚が強いが故に聞こえたその声を頼りにルーズが向こう岸を注目してみます。人混みで声が混濁していましたが、ルーズはその中に一つある人が見えました。


 「!! あれは!!・・・」

 「何だ!? 何が見えたんだ!!?」


 鈴音もルーズの視線に合わせて向こうを見ると、彼女もルーズが驚いた理由を知りました。


 「あれって!!!・・・」











 「ね~、次はどこに行くぅ~?」

 「え~? アタシは~・・・ 君の行くとこに行きた~い!!」




 二人が見たのは、明らかにギャルな少女の肩に手を回してにんまりしているフィフスでした。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・その頃、びょうんで絶讃入院中の平次


 「クッソォ!!・・・ グレシアから町田さんのピンチを聞いたのに、ここから動けないなんて!!」


 今回の話では、これ以降彼は登場しません。





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