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第158話 ぬいぐるみ事件

 状況を把握したフィフスは、あまりの事態にパニックになっていました。


 『最悪だぁーーーーー!!! ど ど ど、どうなってんだよこれ!!? 俺は今ぬいぐるみで・・・ いや、というかこれどういう仕組み!? 体ごと入ってんのか!!? ていうかなんで視界はあんだよ!!!?』


 彼が訳が分からなくしていると、瓜は拾い上げたぬいぐるみがフィフスであることに気付いていないようで、涙を流しながらその顔を見ます。


 「これが最後なんて・・・ ありませんよね?」

 『いや・・・ 最後どころか現在目の前にいるんだけど・・・ やっぱ分からねえか。』


 フィフスがどうも出来ない自分に落胆していると、瓜は少しでも自分の気を紛らわせるために、持ち上げていたぬいぐるみを自分に近付け出しました。フィフスは彼女が何をしようとしているのかわかり、そのために焦り出します。


 『おい、ちょっと待て! 瓜! 待て待て待て待てぇ!!!』


 ギュウ・・・


 そして彼女はぬいぐるみことフィフスを、強くその胸に抱きしめてしまいました。それに対し心配されていた当の彼本人は・・・


 『ウゴォーーーーーーーーー!!! 息が出来ねえ!! しかも左右からのデカい圧に潰されちまう!! キツい!! これはキツいぞ!!



 ・・・ん? てか、今俺ってどうやって息してんだ?』




 それからしばらくして、フィフスはリビングの机の上に放されました。色々精神的な試練を受けた彼は少し気が動転していましたが、どうにか我に返りました。


 『うぅ・・・ いきなり凄い目になった・・・ しっかし、これじゃ何も出来やしねえ。せめてテレパシーだけでも使えたらいいんだが・・・』


 しかしそこから彼が何度か試みましたが、瓜からの反応はありません。どうやらテレパシーも使えなくなっているようです。そこからもどうにかしてこの状況をなんとかしなければと思うフィフスですが、まず動くことが出来ないのが難儀でした。


 『やっぱり駄目か・・・ さて、どうしたものか・・・』


 今彼の目の前には、彼の帰りを待って心配している瓜がいます。その事が、彼にもどかしさを感じさせました。すると、そんな彼の思いを代弁するかのように、ユニーが彼女の元に飛びつきました。


 「!! ユニーさん!?」


 瓜はいきなり飛び乗ってきた彼に驚きましたが、その表情を見て彼の真意を察し、彼女も笑顔を作りました。


 『ユニーの奴、アイツなりに瓜の心配を・・・ 早く戻ってやらねえとな!!』


 フィフスは改めて決心を付け、思い当たる方法を次々試してみました。





 しかし彼の努力もむなしく何も変わらぬまま夜になってしまい、時間が経つごとにどんどん瓜の表情も暗くなっていきました。そして彼女はそのくらい雰囲気のまま、机の上にあったぬいぐるみを持ち上げます。


 『おいおい、今度はどこに連れて行く気だ!?』


 フィフスがまた何か嫌な予感をしていると、それは見事に、というか予想以上に的中しました。


 『ナッ!! ここは・・・』


 瓜はそのまま自分お部屋に入り、ぬいぐるみを抱えた状態でベッドに寝転んだのです。そこから彼女の不安が募るほど、ぬいぐるみは強く抱きしめられました。


 『アガァーーーーーーーーー!!! またこれかぁーーーーーー!!!!』


 「スゥー・・・ スゥ-・・・」


 瓜が深い眠りに入った後も、彼女がぬいぐるみを抱きしめる力が抜けることはありません。


 『耐えろ! 耐えるんだ俺!! 理性を失うな!!! こんなことではバトル物の主人公としての名が廃るぞぉ!!!!』


 結果、フィフスは夜通し煩悩に耐える羽目になり、一睡もすることが出来ませんでした。





 翌朝、煩悩に耐え続けたフィフスは、瓜が起床したことでようやくその手から離されました。


 『ダァ~・・・ 朝なのに一日分の疲れが来た・・・』


 そうして一息つこうとしていた彼ですが、皆さんが予想したとおり、この手の試練はこんな程度では終わりません。彼を放してベッドから立ち上がった瓜は、寝ぼけたままに近くのタンスに向かって行きます。そして・・・


 「よいしょっと・・・」

 『チョイチョイチョイチョイ!!?』


 瓜はそこで、制服に着替え始めてしまったのです。ぬいぐるみの都合上気絶意外に目を見えなくすることが出来なかったフィフスは、目の前であられもない姿になる彼女をしっかり捉えてしまいました。


 『待て瓜!! これ以上俺を苦しめるなぁーーーーーーーーー!!!』


 瓜はそこから朝の支度を一通り無言のままで行ない、その後、不安な顔をして彼女を心配する目で見ているユニーを連れて学校に出かけていきました。


 こうしてようやく一人になれたフィフス。しばらくしてどうにか落ち着きを取り戻し、現状を改めて考え始めました。


 『さて、これでしばらく一人だ。何から試すか・・・ よし!』


 彼はまず今自分が魔術を使えるのかを試すため、ノーモーションで発動できる放射炎を出しました。しかし結果は彼の悪い予想が的中し、魔術も使えないことが分かりました。


 『やっぱダメか・・・ 』


 そこからフィフスは、今度は現状までの流れを思い出して、手がかりを探しました。


 『・・・そもそもあの魔人は、完全に俺を狙っていた。だが命狙いなら、なんでこんな状態になった? それに術が使えないことも気になる。』


 ここで彼が術のことを気にしたのは、魔力の性質からです。フィフス達魔人にとって魔力とは、体に流れる血液と同じ部類。もし体ごとぬいぐるみに入っていたのなら、魔術が使えるはずだったのです。


 『てことは、今俺はぬいぐるみ(これ)の中に魂だけ入っているって事か・・・ じゃあ、体はどこに行ったんだ?』



____________________



 いつもと違い、一人で学校に向かっていた瓜。


 『なんだか・・・ 最初に戻った感覚です・・・』


 そんなことを思ってトボトボ歩いていると、後ろからふと声が聞こえてきました。


 「でさ~、そこのケーキが美味いんだよぉ~!!」

 「え~! ほ~んと~う?」


 瓜はその声に聞き覚えを感じ、すぐさま振り返りました。


 『まさか!!』


 しかし、彼女が期待してみたその先には、一つの人影もありませんでした。


 『・・・』


 彼女は言葉にはしませんが、より寂しさを感じて元の向きに戻り、学校に向けて足を進めました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


少年漫画冊子の読み方


フィフス「バトルもの、ギャグものは真っ先にチェック。ラブコメも読むには読むがそこまで興味は持ってない。」



平次「まずはラブコメから。バトルものは肌に合うものとそうでないものが極端。」



瓜『ジャンルは問わすに読みますが、ほとんどのお気に入りの作品が打ち切りになってしまいます・・・』




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