第14話 魔王子VS魔女の決闘
皆さんこんにちは。町田 瓜です。昨日の放課後、奥山さんによって情報公開に条件を突きつけられました。
「アタシと一つ勝負をしなさい。それに勝ったら、認めてあげる。」
フィフスさんはやや面倒くさがりながらも、渋々彼女の指示に従いました。
そうして行われることになった決闘。私と石導君は今・・・
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「おらおらおらおら!!」
「負けないんだからあ!!」
指定された場所にて、フィフスとグレシアの二人は白熱とした戦いを繰り広げています。
サクサクサクサク・・・ カタカタカタカタ・・・
『料理対決の審査員をしています・・・ (涙)』
「どうして・・・ こんな・・・」
「まあ、こんな所で魔術出されて被害が出るより、よっぽどましじゃあ無いのかな。」
隣で平時が瓜をなだめる。しかし当然突っ込みもしました。
「でも、何で料理勝負?」
作業を進めながら二人は交互に答えます。
「師匠は言ってた。勝負とは胃袋を掴んだものが勝つと。」
「だからこの勝負は、正々堂々真剣勝負なの。口出しは無用よ。」
「何かそれ、ずれてると思うぞ・・・」
「同感です・・・」
日も沈みかけていた家庭科室。平次が買ってこさされた材料を使い、二人はスイーツを一品作っていました。
「はあ、何だってこんなことに・・・ 本当なら今頃町田さんと二人で・・・」
「ど、どうかしました?」
「い、いやあ何も・・・」
「あの・・・ 石導君は・・・ 願いは・・・」
片言ながら瓜が平次に質問をしました。
「え、ああいや、それは・・・」
「彼女よ!!」
突然答えたグレシアに、フィフスと瓜は ハッ? というような表情をしています。
「どういうことだ? それ。」
「言った通りよ。こいつ、可愛い彼女が欲しいって願いなの。初めて聞いた時はこっちも呆れて物言えなかったわ・・・」
赤面する平次。笑うのを必死こいて抑えているフィフス。そして瓜は・・・
「そ・・・ そうなんですね、頑張って・・・」
と、彼女なりのエールを送ってみせた。その様子を見た三人はその瞬間に同じ事を思いました。
『この子・・・』
『まさか・・・』
『自分が告られかけたことに、気付いてないのか!!?』
フィフスは冷や汗をかき、材料をかき混ぜながら思もいました。
『こいつ、前から天然とは思ってたが、ここまでとは・・・』
今だってどこかのほほんとしている瓜。グレシアでさえ、天然具合に絶句していました。
『これはフィフスも苦労する訳ね、何願ったのか知らないけど・・・ 可愛そうに、笑っててあげるわ。』
『なんだか知らんが今誰かに馬鹿にされたな・・・』
そのまま調理を続けていた二人。一件平凡に見えるものの、グレシアの内心は野心に燃えていました。
『クックックッ・・・ まさかこんな形で再会するとは思わなかったけど、好都合だわ。今こそ、半年間の修行の差を見せるとき・・・ 』
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勝手に始まる回想シーン
・修業時代、学科の時間
「スゲー、グレシアがまた満点かよ。」
「フフン!! まあ、当然よね。」
鼻を高くするグレシア。しかし・・・
「オイ、スゲーぞ!! フィフス王子が満点に更に追加点入ってるぞ!!」
「ナッ!?」
注目の先には、いつもと反応の違わないフィフスがテスト用紙を持って、ルーズを中心にそれをはやし立てています。
「いや~、まじか・・・」
「流石です、王子。」
グレシアは拳を強く握ります。
「グヌヌ・・・」
・術の修行
「凄い!! グレシアが氷で十体の人形を作っちまったぞ。」
その場でノソノソと動く人形達。
「ヘヘーン、まあ、アタシにかかれば簡単ね。」
しかし・・・
「オイ見ろ!!」
「何だあのでかい鳥。空を飛び回ってるぞ!!」
「ちょっと待て、もしかしてあれ王子が操作してんのか!?」
ジト目の状態で己の魔力で生み出した火の鳥を操るフィフス。
「グヌヌヌ・・・」
グレシアは更に拳を強く握ります。
・料理勝負
「この分野でなら、王族のあいつなんて負けるわけ無いわ。」
グレシアは余裕ぶりながら、ざっとコースメニューを作って周りに振る舞いました。
「さ、召し上がれ。この場において、師匠の次に上手い飯よ。タンと食べな。」
「くぅーーーー、うめぇーーーーー!!」
「美女の手作り飯!!」
バクバクと食べ進めている男子達、でしたが・・・
「「「「フア~~・・・」」」」
少し離れた所にいた魔人達が幸せそうに宙に浮いていました。
「な、何が起こってるの?」
気になったグレシアがそこに近づくと、異様な状況の中心でフィフスが高速で料理を次々完成させていました。
「はい、お待ち。」
パクパク・・・
パーーーーーーーーーーーーー・・・
「ちょ! もはやこれ、何なのよ?」
「別に、俺はただ思ったものを作っただけだが。」
「そんなはずは、どうせ魔術使って誤魔化して・・・」
焦ってフィフスの品を食べたグレシア。すると・・・
パーーーーーーーーーーーーー・・・
他の魔人以上の速さで昇天してしまいました
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そして現在・・・ そんなことを思っているまに、グレシアは料理を完成させていました。
「これまでの勝負、通算0勝86敗・・・ 今度こそ、念願の初勝利の時よ。」
「いや、明らかに負けすぎだろお前・・・」
「てかよく覚えてるな・・・」
完全に呆れているフィフスを背に、審査員二人の机にそれぞれ用意します。
「五つの果物をふんだんに使ったチョコケーキよ。タンとお食べ。」
『なんだか、凄く派手なケーキですう・・・』
『フルーツでチョコが見えねえが・・・』
一件フルーツだけのケーキを二人は試しに一口ほうばりました。すると・・・
「お、美味しい。」
「表面はフルーツ盛りなのに、中からちゃんとチョコケーキの味がするぞ。」
驚いている二人に、グレシアは自信満々に語ります。
「当然よ。盛りもりのそのフルーツは外面だけ、中はその味に合うように配合したチョコケーキが入ってるのよ。」
『この短時間でここまでやるとは・・・』
「相変わらず器用な奴。」
グレシアの渾身な一品にかなりの満足を味わっている審査員。
「ふ~・・・ 食った食った。」
『これは、いくらフィフスさんでも、超えられるとは・・・』
「これは、グレシアの勝ちだな。」
審査員二人がもうどこか決めかけている様子の中、追い打ちをかけるがごとく彼女はフィフスにもう一つ作ったケーキを渡しました。
「アンタの分もついでに作っといたわ。ま、精々悔しがりな。」
「・・・」
フィフスは無言で手を止め、グレシアのケーキを受け取り、ひとくち・・・
・・・どころかすぐに完食した。
「食うの速!!」
「相変わらずね・・・ そういうとこ・・・」
口元についたクリームを取り、フィフスはまた作業を始めました。
「何よ、ノーコメント? 負けそうだからって、往生際が悪いわよ。」
その数分後、フィフスの方も完成させました。
「ほら、出来たぞ。」
そのままの様子で三人にそれぞれ渡します。
「何でアタシの分まで?」
「お前だってさっきやったろ。残すなよ。」
「はてさて、どんな感じか・・・」
『フィフスさんの料理、ケーキは初めてです。』
グレシアは難しい顔をし、三人は一口食べた。すると・・・
「・・・」 「・・・」
パーーーーーーーーーーーーー・・・
『な、何これ・・・』
『これは・・・』
『天に、上るような・・・』
ハッとなった三人が口々にものを言います。
「どうなってんだ? なんだ今の!?」
『おいしい、何てものじゃ無い。』
「なまってたんじゃ無かったの!?」
「お前さんのやったことをやっただけだ。考えてることが同じとは、気が合うな。」
グレシアはわかっていた。このフィフスの言葉は嘘であると。何故なら、彼の言葉こそ思いやりがあるが、審査員二人の見えない角度で悪い顔をしていたからです。
『こ、こいつ・・・ あの短時間でアタシの技をパクったの!?しかも、アタシより上手いし・・・』
表情を戻し、審査員にフィフスは続けた。
「でもま、勝負は勝負だ、お二人さん、判定は?」
瓜と平次は同時にフィフスの品を前に出した。完全な圧勝であります。
「と言うことだ、さて、こちらの申し出を・・・」
フィフスがグレシアの方を振り向くと、彼女は悔しそうにしながらポケットから杖を取り出してフィフスに向けていました。
「何のことかしら? これはただあんたを人気の無いとこに連れてくるための布石よ!! ここからが本当の・・・」
フィフスに向かって術を放とうとしていることに、不味いと感じた二人が止めに入ろうとします。
「ちょっ!? これは・・・」
「まずいだろ!!」
「食らいなさい!! <氷結術・・・」
しかし、次の瞬間・・・
ポンッ!!
「ナァ!!・・・」
「これは・・・」
そのとき、グレシアは擬態の姿に戻ってしまいました。
「嘘でしょ!? このタイミングに?」
杖の先の光も消え、フィフスも魔力を感じなくなった。瓜は困惑し、平次はため息をついていた。そしてフィフスは察しました。
「なるほどな、これがお前の制限か。さしずめ特定の時間に魔力が無くなるってとこか。」
「説明しないで! ただでさえ人の姿に抵抗があるんだから。」
「雪人はかなり人間に近いからな。納得だわ。」
「うぅ・・・ 言わないで!!」
少子抜けした二人に対し、フィフスはどこからか縄を用意していました。
「さあて、暴れられてても面倒だし、とちあえず縛っとくか・・・」
『どこからその縄を・・・』
「こんな事で勝った気にならないで!!」
しかしグレシアとて抜けてはいなかった。フィフスガ縄を投げる前に、彼女は隠し持っていた煙玉を投げました。
「ウおっ!!」
「な、何!?」
煙はすぐに晴れたが、そこにグレシアと平次はいなくなっていました。
「チッ! 用意の良い奴だ。まだ言わねえってのかよ。」
『逃げられてしまいましたね・・・』
フィフスは瓜を支えながら立ち上がります。
「ま、あの感じからして、あいつは敵では無いだろ。面倒くさいのは同じだが・・・」
『仲良く出来ると良いんですが・・・』
二人はその場で呆れながら立ち尽くしていました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
グレシアは氷を生成する氷結術の使い手です。フィフスと格闘戦で負ける原因は基本的に属性相性のせいです。
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