第155話 分かりやすいトラブル
それなりに長いトイレの時間を終え、平次はウキウキとしながら笑顔になって戻りました。
「まっちださ~ん!! ごめん待った~!?」
しかし、そこから先の出来事は、彼の楽しみにしていた物とは違い、何のハプニングも起きずに喫茶店を後にすることになりました。実のところ、平次が何度も騒いだことで周りから白い目で見られ続けていたらしく、瓜もその流れ弾を受けていたことに彼自身が気が付いたのです。
『うぅ~・・・ 自業自得でかける言葉がねえ~・・・』
そうして二人は何も話すこともなく、とうとう分かれるときが来ました。気まずさのために結局二人の距離感の進展なんて無く、瓜は筆談で別れの挨拶を彼にしました。
「それでは、わたしはこっちなので。」
「お、おう・・・ そうなの?」
そして瓜はコクリと一礼し、十字路にて平次とは違う道を行きました。平次としては当然彼はこれに納得なんてしていませんでしたが、トラブル続きの中で彼女のに迷惑をかけて更に嫌われたくもなかったので、黙って見送ることにしました。
瓜がその次の曲がり角で曲がったので姿が見えなくなるのを見て、平次もため息をつきながら家に帰ろうとすると、小さいながらも声が聞こえてきました。
「や、止めて・・・ ください。」
平次はどういう訳かその声がハッキリと耳に聞こえ、そこに向かって走り出しました。到着すると、正面には誰もいない。
「クッソ! どこに・・・ ん?」
しかし脇に細い路地を見つけたのではいると、そこにはさっき解散して分かれた瓜が、分かりやすいチンピラに絡まれていました。
「なあ、そんなこと言わずに行こうよ~」
「可愛い子が一人じゃ可愛そうだしね~・・・」
例のごとく彼女の押しに弱い性格が出てしまい、ここままでは連れて行かれそうな状況になっていました。
『こ、これまた分かりやすいアクシデントを・・・ しかし、これはまたとないチャンスだ! ここで町田さんを見事助ければ、彼女からの高感度は急上昇するはずだ!!』
というふうに、平次は既に邪な思考をしながら走り、瓜とチンピラ達の間に入り込みました。
「待ちたまえ!!」
颯爽と手を上げて爽やかな出で立ちで話し出す平次。チンピラ達は突然現れた変な男にたじろぎ、一度お多大に顔を見て目をぱちくりさせ、リアクションに困っていました。
「・・・」
「え? お前、何?」
自分の今の変人さに気が付いていないようで、凄く不自然なイケメンオーラを出してかっこつけた台詞を言い出します。
「フンッ、決まっているだろう・・・ この子の・・・ 彼s」
ボカッ!!!
次の瞬間、平次はその台詞を言い終える前に、チンピラからのいい加減にしろと言わんばかりのパンチを左頬に受けてしまいました。いくら格好つけても戦闘力は上がらないということです・・・
「グボエッ!!?・・・」
「石導君!!」
『な、なんでこうなる・・・』
チンピラ達は一度殴って平次がへばったのを見ると、彼が弱いことに気付いて集団でかかりました。
「何だよよっわ!!」
「ケッ! しゃしゃり出んじゃねえよ。調子が狂っただろうが!!」
平次は見事にノックアウトされ、ボコボコになりながら道に倒れてしまいました。
「グヘェ・・・」
今の時点でも既に彼はボロボロでしたが、それでもチンピラ達のムカッ腹は収まらず、尚も殴りかかろうとします。
『チョ、ヤバッ・・・』
そして、チンピラの拳が再び彼に当たろうとしたそのとき・・・
パシッ!!・・・
「止めて・・・ ください!」
平次の姿に見るに堪えかねた瓜が、震える手でチンピラの腕を握って止めたのです。
「町田さん!!」
当然彼女の力ではチンピラには叶わず、すぐに腕を掴み返されてしまいました。
「なぁに? 相手する気になったのぉ?」
「いいねぇ~、じゃあ早速遊びに行くかぁ!」
瓜は抵抗しますが、彼らは無理矢理引き連れようとしました。
「クソッ・・・ 町田さん!!」
平次の声をむなしく、このまま瓜がチンピラ達に連れてかれようとしていたそのときでした。
「後ろ正面だ~れだ。」
「ハッ?」
突然聞こえてきた声にチンピラの一人が後ろを見ると、そこにいた相手の姿を見る前に殴り飛ばされてしまいました。
「ゴガッ!!?」
その異常な光景に残りのチンピラが全員振り返ると、ジト目をしながら手首をパキポキと鳴らしているフィフスが立っていました。
「フィフスさん!」
「赤・・・ 鬼・・・」
「あ? 何、君もこのこと遊ぶの邪魔しに来たn!!」
すると今度は瓜の腕を握っていたチンピラの方が、話を終える前に腹を殴られ、手を放して気絶しました。そしてフィフスは平次に向かって大声で言いました。
「メガネ! 瓜連れてここから逃げろ。」
突然の指令を受けた平次は、気合いで立ち上がって瓜の腕を掴み、路地から逃げ出しました。チンピラ達はそれを阻止しようとしますが、フィフスの攻撃に手も足も出ずにやられていました。
そのころ、残りの二人は路地を抜け、道路に出ようとしていました。
「よし! とにかく広い場所に出れば・・・」
そして、二人が道路に出て来たときでした。
「石導君! 危ない!!」
「ハイッ?・・・」
瓜から声をかけられ、平次が横を見ると・・・
ブゥーーーーーーーン!!
そこから自動車が、平次に勢い良く向かってきていました。
キキィーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
一週間ぶりに作中に登場を果たした主人公。
フィフス「この一週間がクソ長く感じた・・・」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ・ ・ ・
セカンド「自分に比べれば全然増しでしょう?」
フィフス「・・・ はい、ありがたいです・・・」
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