第153話 幸せが続く
その後は特に何事も無く、二人と一匹はどうにかスーパーに到着しました。しかしそれらに一番焦っていたのは、コミュ障の瓜ではなく平次でした。何故なら・・・
ギランッ!!!・・・
『やべ~・・・ あの馬めっちゃこっち見てくるんですけど~・・・」
さっきのアクシデントのときに瓜と至近距離まで近付いたことで、彼女の肩に乗るユニーがこれまで以上に殺気立った目で彼を見ていたからです。
『本当にいつ殺しにかかってもおかしくない雰囲気だ・・・ ていうかさっきのも明らかにとどめを刺しに来てたような・・・』
この色々な意味で異様な空気の中で彼らはスーパーの中に入っていきました。その中はかなりの人混みがあり、そのせいなのか、二人はまるで仕組まれているかのように偶然が重なり続けました。
それぞれ買いたい物を取ろうとすればたまたま同時になって手が触れあい、横並びに歩いていれば、他の客が平次にぶつかってきて瓜と肩と肩が当たってしまいました。
「ご、ごめんなさい・・・」
「いや・・・ こちらこそ・・・ 『またいい匂いした・・・』」
平次の方がそんなことを考えながらまた気まずい空気になると、今度は他の客が彼の足を思いっ切り踏んだことでそれが溶けました。
「イッタァーーーーーーーーー!!!」
「石導君!?」
平次はかなり痛そうに足を抱え、瓜はそれ見て心配になりました。
「痛くないですか?」
そう言って不意に彼の足に触れます。平次はそれでまた彼女の顔が近くに来たことで、一瞬かけているメガネのレンズが粉砕したかのような衝撃が体中を走り、固まってしまいました。
「石導・・・ 君?」
ユニーは平次と瓜のその様子を鞄の中から面白くなさそうに見ていました。
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かくして買い物も終わり、スーパーの外に出た二人と一匹。人混みにもまれて少し疲れた様子です。
「ダァ~・・・ まさかあそこまで混んでいるとは・・・」
息をつく平次に瓜はまた筆談で話して来ます。
「どうやら、タイムセール中だったみたいですよ。」
「マジでか! そりゃあんなにもなるわぁ・・・」
軽い買い物で現在エコバッグ一つで済んでいる二人は、タイミングを間違えたと少し後悔しました。すると少しして瓜がまた筆談をしてきました。
「その、さっきの上着
せめてクリーニング代の弁償をしたいのですが。」
文中でも少し片言になっていることに平次はフッと硬くなっていた顔を崩して瓜に優しい声をかけました。
「いいって言ってるじゃん。そんなに気負わなくていいから。」
「ですが」
瓜はそれでは私の方が納得いかないというような顔をしています。
『可愛い・・・ でも確かに、この行為を無下にするには・・・ そうだ!!』
平次は何かを思い立ち、スマホを取り出して検索し、それを早速瓜に言っていました。
「じゃ、じゃあ・・・ お詫びしてくれるなら、ここの紅茶をおごってよ。」
それは、ここから近くにある喫茶店の広告でした。値段を見ると割と安い方だったので、瓜はスマホに素速く文字を打って彼に聞き返します。
「そんなのでいいんですか?」
それに平次は元気よく答えました。
「いいっていいって! 俺前からここ行きたかったんだよ。でも一人で行くには何か寂しいし、グレシア達は付き合い悪くてな・・・ てことで、どう!?」
平次は自分の言い分にやや圧力がかかってしまっていたことに気が付きませんでしたが、瓜はそれに多少ながら押される形で首を縦に振り、交渉が成立しました。
「じゃ、じゃあ、行こうか・・・ 町田さん・・・」
「は、はい・・・」
さっきまでの疲れはどこへやら、明らかに元気のよくなった歩き方で前を進む平次に、それを後ろでトコトコとついて行く瓜。鞄の中のユニーは、既に不安になっていました。
ユニーの不安が当たったのか、平次の頭の中では、再びカーニバルが再開されていました。
『よっしゃーーーーーーーーー!!! 泥汚れのおかげで自然にデートに誘えたぜぇ!!! よくやったぞ、さっきの車!!!』
平次は結果的にさっき自分に泥を被せてきた迷惑な自動車に感謝をしていました。
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こうしてそのまま喫茶店にやって来た平次と瓜。ユニーは瓜の鞄の中から平次が何かしでかさないかと警戒の目を向けていました。
大分影から見ていたことで平次はその事に気が付かず、むしろここまでどうにも幸運が続いていることに浮き足立ち、紅茶を頼んだ時間の間も貧乏揺すりが凄いことになってしまい、周りの他のお客さんいました。
ガタガタガタガタ!!・・・
そのせいで音も大きくなっており、見かねた瓜がスマホに文字を打って彼に見せてきました。
「皆さんから見られてますよ・・・」
それを見て平次は初めて周りの視線に気が付き、恥ずかしがりながらそれを止めました。
「ごめん・・・」
「いえ・・・」
『マズい、つい浮き足立って彼女に引かせてしまった・・・』
すると、悪くなった空気に水を差すように、喫茶店の店員が紅茶を運んできました。
「ミルクティーとでございます。」
先に瓜が頼んだ物が来たので、彼女がそれを受け取ろうとすると、ふとこう思いました。
『あれ? この声どこかで聞いたことが・・・ もしかして・・・』
瓜と平次はもしやと顔を上げて目線を店員の顔に向けました。そしてそこには、予想通りの知り合いがいました。
「ヤッホー、ウリーちゃん。それと・・・ メガネ君。」
「サードさん!」
<魔王国気まぐれ情報屋>
・サードはバイトをいくつも掛け持ちしています。いくつなのかは本人も数えていないようで、フィフス達は出かける度に何かしらで遭遇していうことが多いです。
サード「あっ!・・・」
フィフス『またいた・・・』
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