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第151話 バレンタインデー後日

 さて、カップルの喧嘩によるドタバタ騒ぎだったバレンタインデーも終わり、すっかり平凡な日常に戻っていた土曜日のこの頃。しかし、災難続きだったとはいえ、大量にチョコレートを貰ったフィフスという勝者がいるからには、必ず敗者もいることで・・・




 「あ~・ ・ ・」


 その男、石導平次は、自宅の窓際にて、降り注ぐ日光を受けながら三角座りになって一人落ち込んでいました。


 『結局、あの後すぐに町田さんはどっか行っちゃって、バレンタインデーでも彼女との仲は深まらず、それどころか、カップル達の喧嘩騒ぎで大騒動になってしまった・・・


 何より赤鬼(アイツ)!! これまであの赤鬼のせいで何回町田さんに近付くチャンスを潰されたことか!! いい加減腹立ってきたぞ!!!』


 「ハァ・・・ 俺も赤鬼(アイツ)みたいに、自然に町田さんの隣に入れたらなぁ~・・・」


 完全に落ち込みきって黒いオーラを出していた彼でしたが、そのオーラは後ろの別室から聞こえて来た爆発音によって吹っ飛ばされてしまいました。


 ボンッ!!!


 「ウオッ!!?」


 平次が何事かとすぐに音の方に走ると、扉を閉め切っているグレシアの部屋から黙々と黒い煙が漏れ出ていました。


 「何だ、またこれかよ。」


 何が起こったか分かった平次がため息をつくと、部屋の扉が開いて中から全身真っ黒になったソックが出て来ました。


 「ゲホッ! ゲホッ!!・・・ 久々に手伝ったけど、相変わらず危ないもんですなぁ~・・・」


 彼が出た次には美照、そしてグレシアが順に出て来ました。二人ともソックほどではありませんが、全体的に黒く汚れた箇所がかなり見受けられました。グレシアの方は、何か液体を持っています。


 「ケホッ!!・・・ グレ姉、大丈夫?」

 「ええ、こっちはなんとか完成したわ。」


 そんな二人に平次はイヤそうな声で言います。


 「お前、またヘンテコな薬を作ったのか!?」

 「ヘンテコって失礼ね! 天才魔女の革命的魔法薬っていいなさい。」


 ここで一つ補足説明。


 彼女、グレシアの趣味は、『オリジナルの魔法薬作り』。彼女はこれを幼少期から好んでいます。ただ一つ問題点として、本人も何が起こるのか分からない薬の効果を試すために、幼少期はフィフスとルーズ、現在では平次がよく実験体にされていることです・・・


 「で、それは何に薬なんだ?」

 「そりゃあ、何の薬かは飲んでないとわかんないわよ。ということで・・・」


 グレシアはいつの間にか薬を持っているのとは反対の手で杖を持ち、床を凍らせて平次の足を固めてしまいました。


 「ナッ!!? お前、どういうつもりだよ!!?」

 「どうせ正直に言ったって反対するんでしょ。美照やソックには作の手伝って貰ったし、このくらいはして貰わないと。」

 「ふざけんな! 俺はお前の実験動物じゃねえんだよ!! 大体美照、お前自分の兄が変な薬飲まされそうになってるってのに、止めてくれねえのかよ!!?」


 助けを求める平次の声を、美照はそっぽを向くことでどうでもいいの意思を示しました。


 「美照・・・」

 「グレ姉の頼みだもん。それにやってみるとこういうの結構楽しいわよ。」

 「妹よ・・・ 俺はお前が将来怪しい道に進まないか不安になってきたぞ・・・」

 「それに、最近お兄に向かっ腹立ててたから丁度いいし。」

 「ちょっと待って今なんて言った?」


 すると身動きの取れない平次に二人が薬を飲ませるように催促し始めました。


 「さあ、という訳で早速飲みなさい!!」

 「諦めなさい、お兄・・・」


 すると平次は事前にはいていた靴下を脱ぎ、その場から逃げ出しました。


 「「ナァッ!!」」


 「誰が飲むかそんな物!! 今までお前の薬のせいで俺がどんな目に遭ったと思ってんだ!!」



____________________



・髪が伸びる薬


 尋常じゃないほどに伸びてしまい、薬の効果が切れるまで周囲の世帯にまで迷惑をかけた。



・子供になる薬


 体を一部分だけが小さくなり、それによる障害を大きく受けた。



____________________



 「こんな調子なんだぞ!! 今回だけまともなんて奇跡みたいな話あるわけ無いだろ!!」

 「いいじゃないのよ減るもんじゃないんだし。」

 「減るんだよ! 俺の中で精神的に大切な物が次々と!!」


 平次はそのまま一旦家を出れば勝ちと考えてドアにまっしぐらでしたが、グレシアはそれを見越していたようで、凍らされて動かないドアに真正面からぶつかってしまいました。


 「ドガッ!!?・・・」


 浅はかな考えをしていた平次はそのまま倒れ、頭を打って気絶してしまいました。底に足並み揃えた二人と一匹は順に思った事を言います。


 「アホね。」

 「アホよね。」

 「アホですな。」


 そしてこの平次の状況をいいことに、グレシアは片手に持っていた薬を見てニヤけます。


 「ま、アホならアホでいいわ。今なら・・・」



____________________



 その後、平次が目を覚まして飛び上がると、ついさっきまで凍っていた床が元に戻っていました。


 「これ、まさか・・・」


 なんとなく気付いた彼がリビングに向かうと、入ってすぐにテーブルの上の空になったフラスコが目に入りました。これで確信を得た彼はソファに座ってくつろいでいたグレシアに怒声を浴びせます。


 「オイお前!! 絶対さっき俺に薬飲ませたよな!!?」


 平次のその険悪な声に、グレシアの方はほんの挨拶感覚で返答してきました。


 「ああ~、うん、飲ませたけど。」

 「けどって何だ!? 俺が気絶している間に何があった!!?」


 すると彼女は少し不満そうな顔になりました。


 「何って・・・ 何もなかったわよ、残念なとにね。」


 彼女の声のトーンから言っていることが事実だと言うことは分かりましたが、彼にとっての問題はそこではありません。


 「そこじゃねえよ!! まず俺に許可も無く薬を飲ませたことを謝れってんだ!!」

 「ねえそんなことよりジュース無くなったんだけど買ってきてよ。」

 「当たり前のように次の命令かすんじゃねえよこの変人魔女が!!!」


 ビキッ!!・・・


 「何ですってーーーーーーーーー!!!」

 「ギャーーーーーーーーー!!!」


 平次はたった一言の失言のせいで彼女の怒りを買い、魔術を放たれて家を追い出されてしまいました。律儀なことに、財布や買い物袋も一緒に出ています。


 「アイツ・・・ 覚えとけよ。」


 そういうことで結局スーパーに向かって行った平次君。


 「あ~あ! どうして(うち)にいる女達はああも可愛くないんだか。さっさと買って帰るか・・・」


 そう独り言を呟きながら歩いていたために、平次は不注意で目を閉じてしまっていました。そして彼が十字路を進もうとしたとき・・・



 ドンッ!!・・・



 「イタタ・・・」


 と、右からこちらに曲がろうとしていた人とぶつかってしまいます。しかし今回は歩いていたので、平次は倒れずに済み、すぐにぶつかった人に手を差し伸べます。


 「大丈夫!?」


 「あ・・・ ありがとう・・・ ございます。って!」

 「ッン!!!?」


 その場の二人はお互いの顔を見て驚きました。


 「町田さん!?」

 「石導君!?」


 そこには、平次の臨んでいた相手がいたのです。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・石導家


 都内のマンションの一室に住んでいる。両親は仕事で家を空けており、平次と妹の美照、居候としてやって来たグレシアの三人とソックで住んでいる。


 基本的に平次は二人の女に尻に敷かれ、家事も基本彼が行なっている。





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