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第147話 砂人の隠れ場所

 視点が戻ってフィフス。いくら魔人であるとはいえ、流石にこれだけ長時間もの間ずっと電撃を受け続けた事で、彼の体はもう衰弱していました。それでもなお彼の体は砂人に操られて無理矢理動き続けていました。


 『マズい・・・ コイツは・・・ もう・・・』


 気を保つのもやっとになっていた彼。するとそこにヒューっと風を切る音が聞こえてきました。彼が前を見ると、そこには救いの手が差し伸べられてきました。氷像獣からの情報でやって来たグレシアと瓜です。


 「フィフスさん!!」

 「やばい! もうかなりへばってるじゃない! 早く瓜を届けないと・・・」


 『グレシア? 瓜? 来て、くれたのか?』


 意識がもうろうとしてハッキリとは気付きませんでしたが、彼は彼女達がやって来たかもしれないと言うことだけでも十分嬉しく感じました。


 しかしこのことを砂人が面白く感じるわけがありません。そこで砂人はフィフスの体をまた操りだし、そして・・・


 『あのババア、まさか・・・』

 「二人とも! 逃げろ!!」


 フィフスが言った事にグレシアが咄嗟に箒を止めると、フィフスは二人に向かって放射炎を放って来たのです。


 「嘘でしょ!!」

 「ギャーーーー!!!」


 グレシアは咄嗟に止めた反動の慣性をを美味く利用して方向転換をして上に登っていき、どうにか放射炎を回避しました。


 「危ないわね!!・・・」

 「助かったです・・・」


 しかしそこからもフィフスは操られるままに次々と魔術を繰り出し、二人はどうにかそれを回避しました。


 「ああもう! これじゃ近づけないじゃない!!」

 「それに・・・ フィフスさんが!!」


 瓜の心配は当たり、ただでさえしんどい中無理に術を出していることもあってさっきよりも明らかにしんどそうにしています。


 「このままでは死んでしまいます!!」

 「でも近付こうにも術が邪魔だし・・・」


 二人はあと一歩が踏み出せずに苦労していました。するとそこにダダッ!!っというような足音が聞こえて来ました。術を出すときに発生する音でフィフスと砂人にはこれが聞こえずに済み、上空の二人だけがそれに気付きました。


 「この音は?」

 「ようやく来たのね・・・ 」


 グレシアの安心したような声に瓜が首を傾げると、少し離れた所から激しい土埃が見えました。


 「あれは!!?」


 瓜がよく見ると、そこには目には見えるものの、もの凄いスピードで砂人の所にへと走って行く四足歩行の動物と、その上に何故かバケツを持って乗っかった鈴音がいました。


 「鈴音さん! てことはあれは・・・」

 「ルーズよ。あれも人狼の一形態ってこと。」


 大きく舞い上がる土煙の存在に砂人の方も気が付き、フィフスの魔術をそっちに向かっても撃ち出しました。しかしこれをルーズは鈴音を背中に乗せたままで素速く動いてかわします。そしてフィフスにある程度近付くと、ルーズが鈴音に声を上げました。


 「お嬢様!!」

 「おーーう!! 小馬ッチ、冷え冷えの水を食らえーーー!!!」


 すると鈴音は両手に抱えていたバケツの中にある冷水をフィフスに向かって振り飛ばしました。


 「!!?」


 四人を倒すために術を出すことに必死になっていた砂人は、この鈴音の行動に対応しきれず、出した放射炎を消されてそのままフィフスの全身に水を受けてしまいました。


 「ドベシャ!!?」


 当然これはフィフスの方にも意味が分からず受けたので、本人からしてみればただの冷水をかけられて寒いだけです。


 「な、何すんだてめえら・・・ うぅ・・・ さっみぃ・・・」


 しかし次の瞬間、彼は自分の体の変化に気が付きました。体を温めるためにしゃがもうと反射的に動かそうとすると、その通りに体が動いたのです。


 『!? 体が動く!!? これは・・・』


 更にそこでフィフスは自分の体から茶色い粒が大量に抜け出していたのです。


 「これは・・・」


 フィフスは突然起こった事態に困惑していると、ルーズが説明しました。


 「あなたのことです。大方は気付いているでしょうが、あれがあなたを操っていたものです。当てが当たったなら、もう自由に動けるはずですよ。」


 その通りに砂人の呪縛から解放されたフィフスは、ギリギリの根性で箒で近付いてくる瓜の所に行き、どうにか電撃から解放されました。


 「ハァ・・・ ハァ・・・ なんとか間に合った・・・」


 すると箒が安全な位置まで降りると、すぐに瓜がそこから降りてフィフスに駆け寄りました。


 「フィフスさん、大丈夫ですか!!?」

 「ああ・・・ うぅ・・・」


 そのフィフスはしがらみから解かれて完全に伸びきっていました。彼が今自分に何が起こったのか確認しようと後ろを見ると、さっきまで自分にまとわりついていた茶色い粒、もとい砂粒が、宙に浮いて集まり、一つの固まりになっていました。


 「どうやら王子は、最初の戦闘の時に砂人の砂を受け、それによって操られていたようです。それも・・・」

 「ああ、大体分かってる。」


 ルーズの説明の最中、フィフスがそう言って説明を切りました。


 すると、その言おうとしたことが目の前に出現しました。さっきの砂の固まりに向かって、そこら中から同じような砂がそこに向かって飛んできたのです。そしてそれらは一つにまとまって形作っていきます。


 「そもそも戦ったときから気になってたんだ。あそこは学校とはいえ、砂場までは距離がある。どうやって攻撃が出来たのかってな。それがさっき会った静が言った事で思い出した。」



____________________



 「若様の威厳あるたたずまいを邪魔しないためには・・・ 細かくして入れるとか・・・」



____________________



 「そういや、研究所での戦いで、自分の体を属性物質に変えるやつがいたってな。」


 フィフスは、静の言った事から、セレンのことを思い出していたのです。


 「その方法なら、エデンの連中がいくら探しても見つからないことにも、わざわざ俺を動かして砂を広めたのにも説明がつく。」


 説明の合間にも砂はどんどん形を固めていき、やがて人型になって落ち着きました。


 「アンタはあの時消えたんじゃない。体を砂に変化させて、ずっと俺に張り付いてたんだろ! ババア!!」


 フィフスは、目の前で姿を固めた魔人、砂人に向かって怒声を浴びせました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・ルーズ 四足態


 ルーズが全身をオオカミの姿に変えた形態の一つで、その姿はまさしく服を着たオオカミそのもの。この姿になることで通常時よりもかなりスピードを上げることが出来、四足で動くので人一人程度なら背中に乗せることが出来ます。


 しかしやはり人狼ということで、夜の方が本領発揮をします。



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