第145話 魔王子様の災難②
またまた宙を飛び回ることになったフィフスは、ここまで長時間受けたことで契約制限の電撃に慣れてきていました。そのため今彼は意識もハッキリと持ち、無言で考え込んでいました。
「・・・」
すると次の瞬間、また彼の体は急降下をし始めました。まだ距離のあるそこには、道行くカップルが歩き、そこに向けた商売をしている露店販売がありました。
「いらっしゃいいらっしゃ~い!! カップルさんに向けたチョコレート、安売りしてますよ~!!
さぁ、買った買ったぁーーー!!!」
するとその露店に空から降ってきたフィフスによって潰されてしまいました。
「ウワッ!!?」
周りの人達は隕石でも降ってきたのかと騒ぎになり、全員一目散に逃げ、露店の店員だけ尻餅をついて残っていました。
「イタタ・・・ 何なのよ~ いきなり・・・」
「うぅ~・・・」
その店員は目の前に痺れながら伸びをしているフィフスが目に入りました。
「アンタ、こんな所で何してんの?」
「あ?」
フィフスがグルグル目から元に戻して前を見ると、そこにはいつもの服装とは違う格好のサードがこちらを睨み付けている様子がありました。その時点で彼は嫌な予感を感じ、それを避けようとします。
「あ、姉上・・・ 何故・・・」
「バイトよ。それよりアンタ、何でそんなに光ってるわけ?」
「色々と・・・ あってな・・・」
「は? どうにしろ営業妨害なんだけど。」
とにかく危険なことからはすぐに逃げようとフィフスは必死なほふく前進でそこを去ろうとします。しかしここにも砂人の嫌がらせが入り込み、彼の口が勝手に動き出しました。
「ケッ! 落ちてケガするわその直後にブスの顔見るわ最悪だ!!」
「ア?・・・」
フィフスは言葉を放った途端に背中に『死』を感じました。これ以上ろくでもないことになる前に逃げなければとほふく前進のスピードを上げますが、砂人はそんな中で更に追い打ちをかけてきます。
「あ~くっさ、これが自分の姉とかクソだわ! 困難ならゴキブリの方が可愛いってんだよ!!」
それを言ってしまい、フィフスは完全に固まった顔で後ろから感じる黒いオーラを見てしまいました。そこには、自分の姉がこれまで自分に一回も見せたことの無いにこやかな顔で歩いてこちらに来ていました。
「・ ・ ・ お~い愚弟、さっきなんか空耳が聞こえて来たんだけど、気のせいよねぇ?」
フィフスは必死に前進し続けますが、感電状態のほふく前進では速度に限界があり、すぐに彼女に追い付かれてしまいました。
「お~いつ~いた。」
その楽しそうな声にフィフスはビクつき、それと同時に自分の動きも止められてしまいました。
『ナッ!! あのババア・・・ どんだけ俺のこと嫌いなんだよ!!』
そこにサードからの気味の悪いほど可愛い声が聞こえてきました。
「フィ~フス。に~げな~いで!
うまく殺せないでしょうが。」
フィフスは後ろで二刀流を構えている彼女を一瞬見て声にならない叫び声を上げましたが、次の瞬間には上空遙か彼方に物理的の飛ばされてしまいました。
「グオアーーーーーーーーーーーーー!!!!」
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その頃、フィフスからの情報を元に、学校付近の市街地の各地で部隊ごとに砂人を捜索するエデンの隊員達。しかし一向に目標の姿は見当たりませんでした。
「こちら第五部隊、異常なしです。」
「こちら第三部隊、同上です。」
「こちらもです。カップルの複数組が喧嘩している様子しか見えません。」
それらの報告をラボ内で聞いていた信。遅々として改善に進まない事に顔をしかめていました。
『どこへ行った? 契約でやる範囲が町中の範囲なら、そこまで遠くには行けないはず。これだけやれば見つかるものかと思ったけど・・・
そもそも変だ。町中のカップルに砂をばらまくなら、高所から降らすだの繁華街を襲うだのもっと簡単な手があったはずだ。なのに何でこんなまどろっこしいことを・・・』
信は戦闘中にフィフスが密かに隠し撮りしていた録画映像を再度再生し、注目してみました。すると・・・
「ん?」
信はふと何かに異変を感じ、映像を止めました。そして少し巻き戻し、今度はスロー再生でそれを流します。すると・・・
「ほぉ~・・・ なるほどそ~ゆ~ことか。まんまとやられたよ。」
信は自分の中で納得し、いつもの嫌らしい笑みを浮かべました。
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所変わって学校内の鈴音。さっきの喧嘩は時間が経てば経つほど件数が増えていき、教師陣もその対処に追われて完全に授業が手つかずになってしまっていました。
そうしてある種の無限休み時間になったこの場所で彼女は・・・
「「「「「「日正さーーーーーーーーん!!!」」」」」
「ギャーーーーーーーーーーーーー!!!」
瓜とグレシアがいなくなったことにより、残った美人の彼女が同学年の男子生徒達に三倍狙われてしまったのです。まるで獲物を狙う野獣のごとく追いかけてくる彼らの猛攻から、鈴音は必死に逃げていました。
「なんでこうなるんだぞーーー!! いくら箒に定員オーバーだったからって置き去りは無いぞシカシカーーーーーーーーー!!!」
「「「「「待ってーーーーーーーーー!!! 日正さーーーーーーーーん!!!」」」」」
「ギャーーーーーーーーー!!!」
叫びながら力一杯叫ぶのもむなしく、とうとう廊下の隅にまで追い詰められ、逃げ場が無くなってしまいました。男子達はよだれを垂らし、完全にチョコレートに執着しきっていました。
「日正さ~ん・・・」
「チョコちょうだいよ~・・・」
「チョーーーコーーー!!」
「イヤーーーーーーーーーーーーー!!!」
鈴音がどうにか凌ごうと身をうずくめると、一番前にいた男子が彼女に手を伸ばす。すると・・・
ガシッ!!・・・
「?」
その腕をある人が強い力で掴み、静かな声でこう言ってみせました。
「その邪な汚い手で彼女に触るな。失礼だ!!」
『ん? この声、まさか・・・』
鈴音がゆっくり目を開けて見ると、そこには腹痛で休んでいたはずのルーズが自分を守っている姿がありました。
フィフス「なあ・・・ 知ってるか、瓜?」
瓜『何ですか?』
フィフス「今日で俺達が出会って一年経つみたいだぞ。」
瓜『もうそんなに経つんですか!!?』
フィフス「そう一年・・・ 一年? 一年経ってんだよな?」
瓜『そ、そのはずですけど・・・』
フィフス「本編ではまだ出会ってざっと二ヶ月ぐらいしか経ってねえんだよな・・・」
瓜『そういうことは言わないでください・・・』
フィフス「ま、何がともあれ、これからも作品は続くだろうし、何回もクリスマスを迎えるかもな。」
瓜『そうなら良いですな。』
フィフス「これからもよろしくな、瓜。」
瓜「ハイ。フィフスさん。」
MERRY CHRISTMAS
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