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第140話 これは友チョコ・・・

 そうして遅刻ギリギリに教室に着いた瓜は、ホッと一息ついてから自分の席に座りました。そして少し緊張気味に隣にあるフィフスの机を見ます。しかし、その緊張は机に山積みされたチョコレートを見たことで一瞬で吹っ飛んでしまいました。


 「な、何これ!?」


 隣の山に意識を持って行かれた上、ホームルームになってもフィフスがそこにやって来ないこともあって、完全に固まってしまいました。


 するとホームルーム終了後、そこにやや苦笑い気味にグレシアがやって来ました。


 「あ~・・・ 流石にコミュ障の瓜でも、これには驚いちゃうか。」

 「こ、これは・・・」

 「全部アイツ宛のチョコよ。何というか、笑っちゃうわね・・・」

 「そ、そうです・・・ ね・・・」


 グレシアは瓜の顔を見て違和感を覚え、彼女の回りを改めて見てみると、小さな紙袋の存在に気が付きました。


 「あれ、もしかして・・・」

 「違います!」

 「う、瓜・・・ ま、アタシも上げるし、そのときに一緒に・・・」

 「いいんです・・・」


 グレシアは彼女の落胆した言葉を聞き、かける言葉を失って気まずくなり、渋々と自分の席に戻っていきました。そこで平次が聞いて来ます。


 「おい、まさか町田さん・・・」

 「うん、多分ね・・・」

 「あの野郎・・・」


 平次は察したことで最早怒りが沸騰しきって静かになってしまいました。そして彼はここぞと瓜を慰めるために彼女の元に行きました。


 「やあ町田さん、大丈夫かい? よかったら、俺が話でも・・・」

 「・・・」


 瓜は平次の話が聞こえていないのか、席から立ち上がってそのまま教室を出て行きました。一人残された平次の肩に、他の男子生徒が優しく手を乗せました。


 「・・・ドンマイ。」







 教室を出て一人廊下の窓にたたずむ瓜。ふと持っていたままの紙袋の中身を見てむず痒い顔をしています。


 『なんで、こんなにもやつくんでしょう・・・ 別に、フィフスさんにどれだけチョコが来たって、私には関係無い。


  これだって、義理・・・ というか、友チョコですし、そう、考えすぎだったんです! 考えすぎ。』


 瓜はそう自分の思考をグルグル回転させて無理矢理現状を納得させ、意識してやっていることが丸わかりの作り笑顔になりました。


 「あ~スッキリしました! さて、教室に戻らないと・・・」










 「ッン?」


 しかし彼女にとって運の悪いことに、体の向きを変えたこのタイミングに丁度空き教室から出て来たフィフスと鈴音に出くわしてしまいました。


 『ナーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 「あれ瓜? もう来てたのか。」

 「ヒャエ!!?・・・」

 「ん、どうしたお前?」


 二人はすぐに瓜が持っている紙袋に目が行きます。


 「瓜、お前それは・・・」


 瓜は咄嗟にそれを自分の後ろに隠してしまいますが、そこに鈴音が入り込んできました。


 「おおっとマッチー、それは何だぁ?」

 「す、鈴音さん・・・」


 瓜は戸惑っていますが、鈴音はそんな彼女に近付き、ニヤついた顔をして耳元に囁きました。顔の距離が近いこともあり、今の小さい瓜の声が彼女にも聞こえました。


 「どうしたんだマッチー? それ、小馬ッチに渡すチョコなんだろ?」

 「で、でも・・・ フィフスさんは既にいっぱいチョコを貰ってますし・・・ こんな所で私も渡しては、彼に迷惑が・・・」


 すると鈴音は瓜の肩を抱えてフィフスに聞こえないように話します。


 「そんなの関係無いぞ! 小馬ッチは、マッチーから受け取れるなら何だって嬉しいはずだぞ!」

 「そ、そうなんでしょうか?」

 「そうだぞ! もっと自分に自信を持ってくれたまえ!!」

 「じ、自信・・・」


 瓜は中途半端ながらも鈴音の後押しを受け、持つ手を震わせながらフィフスにゆっくり近付きました。


 「あ、あの・・・」

 「どうした? 何か用なら早くしてくれ。今日は男女から睨まれて逃げたいんだよ。」


 しかし瓜は緊張で戸惑ってしまい、言葉に詰まってしまいます。


 「チョ!!」

 「チョ!!?」

 「あ、いえ・・・ チョ、チョ・・・ チョォ!!」


 瓜はついに緊張を抑えて言おうとし、そしてフィフスはそれを聞こうと耳を澄ませようとしますが、次の瞬間・・・


 「チョコ受け取って・・・」


 「悪い瓜、話は後だ!!」


 二人の声はかぶり、フィフスの大きな声が強調され瓜の勇気は届きませんでした。


 「え・・・」

 『あ~・・・ マッチー災難だぞ。』


 鈴音は後ろで一筋の汗をかいて同情しました。しかし改めてフィフスを見ると、さっきまでと打って変わって彼の表情は急に険悪になっていました。残りの二人はまさかと思います。


 『どうかしたんですか?』

 「魔人が出た。」

 「「・・・!?」」


 するとフィフスは動揺した二人をそのまま置き、近くにあった開いた窓から飛び降りていきました。残った二人はそれを見て驚きます。


 「嘘~!! 魔人ってあれしても平気なの!?」

 『なんかもう・・・ 慣れて来ちゃいました・・・』



____________________



 そのとき、校内の渡り廊下では、別のカップルが町中と同じようにチョコレートの手渡しを行なおうとしていました。


 「はい、これ・・・ 受け取って。」

 「これ・・・ いいの?」

 「うん。それで、一緒に伝えたいことがあって、私・・・」

 「う、うん・・・」


 男子が唾を飲み込み、緊張が走ります。すると・・・


 「いやぁ、お熱いですな~・・・ 若気の至りですかな?」


 突然聞こえた声に二人が驚くと、そこには例のお婆さんがいました。


 「あれ、なんでお婆さんがここに?」


 疑問を浮かべると、お婆さんはにっこりとしたまま話を続けます。


 「いやはや・・・ こんなにあべっこがいたら、契約を終えるのが大変じゃわい。」


 そう小さく呟き、お婆さんはさっきのカップルと同じようにしようと腕を上げ、砂を繰り出しました。


 「ハッ!?」

 「悪く思わんでくれ。」


 そしてその砂がカップルにぶつかろうとした次の瞬間・・・


 「ドロップキーーーーーーーーーック!!!」


 ゴンッ!!!


 「ウゴッ!!?・・・」


 お婆さんは突然右から蹴りを入れられ、壁まで飛ばされてしまいました。その結果お婆さんが出した砂も崩れ消えました。泣いてしゃがみ込むカップルに、その蹴りの犯人が一言かけてきます。


 「イチャつくのはいいけど、ケガしたくないなら別の場所でやってくれ。」

 「「ハ、ハイィ!!!・・・」」


 カップルはお互いに息の合った動きでその場からすぐに逃げていき、取り残されたお婆さんが独り言を言います。


 「やれやれ・・・ せっかく見つけたのじゃが・・・ まあよい、すぐにあのあべっこも別れるんだからのう。」



 立ち上がってこちらを細い目で睨むお婆さんに、蹴りの犯人ことフィフスは軽く挑発をかけます。


 「ここは関係者以外立ち入り禁止だぞお婆ちゃん。散歩すんなら余所でやってくれ。」

<魔王国気まぐれ情報屋>


・その頃のルーズ


 現在今日20回目のお手洗い中


ルーズ「ハガァーーーーーーーーー!!!」


 既にかなり体はげっそりとしていた。




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