第12話 二人目登場!!
フィフスが入ってきて何かしでかさないか心配していた瓜は、その日の時間が過ぎていくのをいつもより遙かに速く感じました。そうして迎えた放課後、事件は志歌がフィフスに行ったこの一言から始まりました。
「ねえ小馬君、君今日予定ある?」
その一言に、クラスの全員がフィフスを除いて衝撃を受けます。
「あ、あの奥山さんが!!」
「男子を誘ったですって!?」
「まさか・・・」
クラス全員が注目しながら騒ぐと、志歌はすぐに訂正しました。
「いや違うわよ!! 小馬君は今日転校してきたばっかりだから校舎の案内をしようとしただけよ。」
フ~ンとつまんなそうな顔をしている一部と、わかりやすくほっとしている奴らに分かれて周りはその場を解散しました。
当のフィフスは困惑しているようでしたが、実際学校というものをわかりきらず、瓜にばかり迷惑をかけるわけにもいかないと思い、志歌の申し出を聞くことにしました。
「ならありがたい、頼んだ委員長。」
当然瓜は心配します。
『フィフスさん、案内なら渡しがしますよ!!』
『そうお前ばっかりに頼るのもわるいだろ。今回はいいさ。』
『しかし、距離制限は・・・』
『そうだ、だからお前は、しばらくの間そこにいててくれ。俺個人で調べたいこともあるしな。』
『?』
かくして、学校のアイドルである志歌に連れられて校舎内をぐるっと回ることになったフィフス。ただ、周りの男達は陰口で明らかにフィフスの嫌みを言っていました。
「おい、あの男嫌いの奥山さんが男子連れてるぞ!!」
「クソッ!! 誰だよあの男。ファンクラブに潰されねえのか。」
「見ろ、あのニヤけづら。明らかに調子に乗ってるぞあいつ!!」
言われまくっているフィフス。周りのご想像とは違い一切ニヤけてはいません。
『こいつら被害妄想激しいな・・・ つかこいつファンクラブまでいんのか。男嫌いなのに大変だな・・・』
一刻も早く人気の無いところへ行きたいフィフス。しかしその思いとは裏腹に彼女の行くとこ行くとこに誰かがいました。
「失礼!! 部活中かしら?」
「ひゃえ!! 奥山さん!! どうしてここに・・・」
『「ひゃえ」って何だ!?』
教室にいた男達はわかりやすく志歌にこびを売っています。
「あはは、どうも奥山さん。お茶でもどうぞ。」
『おい、どっからカップとか取り出した? つか、無駄にイケボにまでなってるし・・・』
「結構よ。そこ退いてもらえる。」
『そしてこいつは人の好意を軽く踏みにじる奴だなあ・・・』
志歌の対応に困惑するフィフスでしたが、暴言を飛ばされた男達はニヤついて喜んでいました。
「ヒャーーーーー!! 奥山さんがしゃべってくれたぞ。」
「いい、凄く良い・・・」
冷気をまとう志歌に対し、頭の中がお花畑のような男達という完全にやばい光景の中、フィフスはこう思います。
『この世界の男は美人が何をやっても許せるのか・・・』
若干引き気味の状態で志歌について行くフィフス。途中途中で男子生徒から野次を言われたり、足を踏まれたりしたものの、大抵は順調に紹介を受けていました。が・・・
「じゃあ、次はこの奥の・・・」
「スマン、上に上がらせてくれ。」
「は? え? 何で・・・」
「理由は聞くな。というわけで先に行く・・・」
聞いた志歌は当然ながら頭に?を浮かべている。そんな彼女をそのままにフィフスは上の階へと上っていきました。
『ここで上らなかったら五十メートルを超えちまうしな・・・』
その後もフィフスによって大分予定が狂いながらも校内案内は進んでいきました。
一方その頃の瓜、どこに行くことも出来ずに教室に一人ぽつんと残っています。
『・・・ 暇です。』
冷や汗をかくほど彼女は何もすることも出来ず、現在までただぼ~っとしてどうにか時間をやり過ごしていました。
『う~む・・・ さすがにこの長時間も何も無く過ごすのはきついです。せめて作業が何かあれば良いんですが・・・』
どこかむなしく思っていた瓜に、今日の日直の用事で残っていた男子生徒が日誌を提出して戻ってきました。
「あれ!? 町田さん、なぜ教室に?」
「せ、石導君!? あ、いえ・・・ 私は・・・」
普通なら会話で多少は盛り上がるところだろうが、コミュ障である瓜には更に状況が悪くなりました。
そしてこの少年、石導平次は実は先日素顔の瓜と合っているのだ。
『こ、これはチャンスだぞ。前に漫画のフラグである「曲がり角でドンッ!!」を決め、更に元からのクラスメイト関係、これは・・・ これこそは・・・ まさに、「運命の出会い」 まあおそらくこの状況はあいつが用意してくれたものだろう。なら存分に利用し、ここで町田さんと・・・』
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<妄想>
「はい、あ~ん。」
「あ~ん。んん、美味しい。 やっぱり瓜さんのご飯は最高だ。」
「そ、そんなこと無いですよ平次君、照れちゃいます。」
「「ハハハハハ・・・」」
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『ムフフフフ・・・ さて、早速声かけを・・・』
登場早々長ったらしい台詞の後、平次は瓜に話しかけようとします。が・・・
ドンッ!!
その直前に慣れない雰囲気に瓜が耐えきれずに逃げ出してしまいました。
『え、俺何かした!?』
当てもなく逃げる瓜。
『何だったんでしょう。 なんだかあの人・・・
ものすごく怖い顔でした。』
平次は先程の妄想中、誰が見ても気持ち悪い表情をしていたのです。その顔で凝視されたのだから、元々引っ込み思案の瓜には効果抜群の攻撃でした。
「ま、待ってくれ!! 町田さーーーーーーーん!!」
すぐに平次も後を走って追いかけていきました。
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さて、これにより行動範囲が狭くなっていることに気付いていないフィフス。何だかんだ誤魔化しながらも校内一周しかけていました。そんな中、志歌は最後にとある教室に案内します。
「じゃあ、最後はここね。」
「えらく時間かかったな・・・ それにここ、特に専門教科で使うって訳でもなさそうだが・・・」
「まあ、いいから。さあ、入った入った。」
違和感を感じながらも、フィフスは志歌に言われるがままにその教室に入りました。辺りを見回していたものの、特に変わったところはありません。
「よし、これで教室の紹介はざっとすんだわね。さて・・・」
「表向きの用事は終わりってか?」
フィフスからの予想外な返しに志歌は驚いていましたが、すぐに調子を取り戻します。
「何よ、気付いてたの?」
「男嫌いのお前がわざわざこんな人気の無い所に呼び出して、腹を割って話しでもしようってか?」
「ふぅん、で、なんでアンタがここにいる訳? フィフス。」
「それはこっちの台詞だ。半年前に行方不明になっといて、まさかこんな形で再会するとわな。」
志歌は自分の目を青白く輝かせました。すると、彼女の足下から冷気が噴き出し、それが即座に固まって彼女を包み込みました。そしてその氷が砕けると、中からは薄い青髪に水色の格好をしたいかにもな魔女が現れました。
「事と次第によっては、アンタを片付けさせてもらうわよ。」
「ほ~、やる気のようで・・・」
対するフィフスも擬態変化を解き、鬼の姿に戻りました。静かな教室に緊張が走ります・・・
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その頃の瓜、思っていた以上に足の速かった平次に追い付かれてしまい、いつの間にか体育館裏にまで来ていました。
『まずい、いつの間にかかなり教室から離れてしまったみたいですね・・・』
しかし時既に遅く、行き止まりに追い詰められていました。後ろを向くと、平次が息切れしながら道を抑えています。
「よ、ようやく・・・ 追い付いた・・・」
『何なんですか、この執念・・・』
「わ、私に、何か・・・」
完全に怯えながら瓜が話を切り出しますと、平次は息を整えて話し出しまsた。
「あ、いや・・・ その・・・ 」
「?」
『クソッ! かわいすぎて直視できない。落ち着け、勇気を出すんだ、俺。』
意を決した平次は、瓜の方へ向かって行きました。
「町田 瓜さん!! 」
「俺は、俺は君の事が・・・」
気になる告白の続きは、次回へ続きます!!
<魔王国気まぐれ情報屋>
「奥山さん、紅茶飲みませんか。」
「奥山さん、この花あげます。」
「奥山さん、これから俺のおごりで一緒にご飯でも・・・」
ワー ワー ワー ワー
ワー ワー ワー ワー
フィフス「やかましい・・・」
志歌へのナンパと共に何かしらの嫌がらせを受けたフィフス。
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