第136話 あの子を助けて・・・
フィフス達は、とうとうグレ男が派手にやらかしてしまった大事にどうすればいいのかと考えていた。
流石にこれにはエデンコーポレーションも反応したようで、すぐにその会社ロゴを付けたトラックがその場に到着し、中にいた隊員達がスマホで写真を取り出す人達の人払いをし始めた。
彼らの協力もあって場も無理矢理落ち着きを戻しましたが、隊員達も対処をどうしようかお手上げ状態です。これに関してはフィフス達も汗をかいてしまいます。
「ああ・・・ とうとう大事に。」
「そういや、グレシアの魔力の片割れなんだったな。もっと警戒するべきだった。」
『? それってどういうことですか?』
瓜がふと聞いて来たことに、フィフスは詳細に伝えた。
「異世界人の魔力量は個人によって大きく差がある。グレシアの魔力量は俺やルーズよりも上なんだよ。だがコイツはある事情からその力の制御しきれていねえ。下手すりゃ触れただけで物を凍らせちまう。」
『もしかして、志歌さんが男嫌いっているのも・・・』
「当然方便だ。」
『そうなんですね。』
するとフィフスはボソッと次にこう言いました。
「ま、男嫌いは本当なんだが・・・」
『今何か言いました?』
「いいや何にも。」
するとそう二人で会話していたことで浮いていたグレシアが、電波塔の中央部辺りに人影の存在を見つけました。
「あれって・・・」
彼女は杖から簡易的な望遠鏡を作り出し、その位置をよく見ました。するとそこにいたのは・・・
「ウオーー! ウオーーー!!」
電波塔の鉄骨に上に乗り、近くにいる鳩を見てはしゃいでいるグレ男でした。本人は楽しそうな顔をしていますが、少しでも足を踏み外せば落っこちてしまいそうです。
「あの子!!」
するとグレシアは、無意識のうちに箒をその手に召喚してまたがり、必死になってグレ男の所へと飛んでいってしまいました。
「グレシア!」
フィフスは声を出しますが、彼女はその制止を聞かずに電波塔に突っ走っていきます。次第に自分の体が重くなっていることに気が付かずに・・・
そのままグレシアが電波塔の鉄骨に足を付けると、すぐに箒を離して走り出しました。しかし彼女の足は、その意思とは裏腹にどんどん重くなってしまいます。
「どう・・・ して・・・」
下にいる一行もこのことに気が付きます。
『志歌さん、様子が変です。まさかまたグレ男が何か!!』
そう瓜が聞きますが、フィフスはこう返答しました。
「いいや違う。おそらく魔力切れだ。」
『魔力切れ!?』
そう、グレ男はグレシアの魔力から産まれた分身体です。それはつまり、彼が現れたときにそれだけの魔力を消費してしまっていることに変わりありません。
その結果、今のグレシアは剣を使った直後のフィフスと似たような状態になり、すぐに動けなくなってしまうのでした。
「う・・・ ぐぅ・・・」
彼女の方も体の変調に気が付いたようですが、時既に遅くその場に倒れ込んでしまいました。
「しまっ・・・ た・・・」
しかもそのとき、グレ男は目の前の鳩に更に夢中になっていました。そしてその鳩がそこから羽ばたくと、彼はそれを追いかけ、足を踏み出してしまいました。
「ダ・・・ メ・・・」
グレシアのか細い声も通じず、彼は一歩を踏み出し、いや、踏み外してしまい、高層部から一気に下に落下してしまいました。
グレシアは目を丸くして手を伸ばしますが、当然届かずに目の前で彼は落ちていきます。もうダメかと彼女が諦めかけたそのときでした。
「ったく、世話のかかる同期だ。ルーズ!」
「了解です。」
次の瞬間、フィフスは例の瞬間移動を使い、一瞬でグレ男を抱きかかえていました。
『フィフスさん! まさか瞬間移動で・・・』
「でも、あそこへ行っても小馬ッチごと地面に激突するだけだぞ。どうすんだ。」
いくら速いフィフスでも、宙にいる中では関係無く落下していきました。しかし彼は一切焦っていません。そこに鈴音の後ろからルーズが両手で何かを形作って出て来ました。
「ここで僕の出番です。 王子! 辛抱してくださいよ!!」
「わかってる!!」
ルーズは印の形を固定し、自身の魔術を二人に向かって放ちました。
「<疾風術 風渦柱>」
すると二人が落ちてくる真下の地面に渦を巻くようなそよ風が起こり、次の瞬間には音を立てて風を巻き上げました。それをフィフスの方は背中で直撃します。
「ウゴッ!!・・・ ルーズ・・・ もうちょい気を配れよ・・・」
「これでもかなりしんどいんです。無茶言わないでください。」
するとフィフスが受けた風のいる奥はどんどん落ちていき、終いにはゆっくりと彼とグレ男を地面に降ろすほどの柔らかな風になっていました。
『ゆっくりと、落ちていく・・・』
そして二人は無事に着地しました。地面についたフィフスは、安全を確認してから抱きかかえていたグレ男を降ろします。
彼はてっきりグレ男が高所からいきなり落ちたことに驚いて泣いているものかと思っていましたが、実際に見てみると彼はむしろジェットコースターでも終えた後のような楽しそうな笑顔を見せています。
「何のひねりもない笑顔だぞ。」
「はた迷惑な坊主だ・・・ 」
一落ち着きしてルーズもフィフスの所に寄ってきました。
「大丈夫ですか、王子。」
そう言ってルーズは背中をポンッっとたたき、それを受けたフィフスはビリッと電撃が走ってきた感覚が走りました。
「ッン!! イタタタタ!!・・・ お前、わざとやってんだろ!!」
「さあ、何のことだか?」
痛がっているフィフスに駆け寄る皆を見て、電波塔に残っていたグレシアは、落ち着きを取り戻して安心した顔をしました。
「・・・ よかった。」
フィフス「オイ知ってるか? この作品、今日で丁度一周年らしいぜ。」
グレシア「ええ、聞いてるわよ。でも今回は番外編はやらないわけ?」
ルーズ「最近仕事が忙しくて書くなかったそうですよ。」
フィフス「原作者の事情を軽く言うな!!」
瓜『そういえば、もう少ししたらまた長編をやるそうですよ。』
フィフス「え、お前そんなこと誰から聞いた?」
瓜「その、さっき・・・ 石導君・・・」
グレシア「ああ、平次が・・・」
瓜「・・・の、メガネが・・・」
一同「・・・ あ~・・・」
一同が何を思ったのかは百話記念の番外編を読んでください
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