第134話 鬼ごっこ再開
フィフスとグレシアがすぐに屋上の下を見てみると、氷で作られたような巨大な滑り台が出来ていました。
「あ~・・・」
「派手にやってんな。姉貴じゃないんだぞ・・・」
あまりの大きさに、フィフスは証拠隠滅に破壊炎を使う羽目になり、氷を溶かした後にすぐ二人は階段を降りて学校の外へと出ました。見張りの生活指導の先生はもれなく凍らされています。更にそこから先を見ると、彼の通ったところの周囲にある物が次々を凍っていました。
「ああ! あの子ったら!!」
「とにかく早く止めるしかねえ! 行くぞ!!」
二人はその氷を道しるべにしてグレ男を追って走り出しました。その氷はフィフスが火炎術で溶かしていましたが、走れば走るほどその氷は大きくなっています。
「どんどんデカくなってんぞ!」
するとしばらくして二人は無邪気にジャンプしながらケラケラ笑っているグレ男を見つけました。向こうもこちらに気づいたようで、ヘッと笑い、そこから走り去ろうとします。それに対しグレシアは
「もう我慢ならないわ! いい加減にしなさーーーーーい!!!」
痺れを切らし、杖から冷気を出してグレ男に直撃させ、途端にその体を固めてしまいました。幸い狭い道で人がいなかったので見られてはいませんが、彼女の隣のフィフスは冷や汗をかきます。
「おいおい・・・ 子供相手に何もここまで・・・」
「息は出来るようにしてるし、追い付いたらすぐに解くわよ。」
グレシアはそう言って近付いていると、彼女にとって予想外の事が起りました。グレ男を固めていた氷は尋常でない速さで薄くなっていき、やがてなくなってしまいました。彼が吸収してしまったのです。
「ウソッ!?」
「あらら、嫌な予感がする・・・」
グレ男は二人の方にまた振り向き、今度は右手を後ろに引いています。フィフスがまさかと思うと、彼はその腕を前に出すと同時にさっきまでよりも強力な冷気を撃ち出してきました。
「「ギャーーーーーーーーー!!!」」
狭い道が仇となって二人はそれを直撃して固められてしまい、グレ男はそれを見て楽しそうに笑っています。
「ケケケ。」
そしてグレ男はトコトコとそこから去って行きました。彼の姿が見えなくなった頃、二人を固めていた氷がフィフスによって溶かされました。
「あ~・・・ 危なかった・・・」
「ハァ~・・・ 弱ったわ。あの子、思ってたよりも魔力があったみたい。」
「今どう言っても変わんねえだろ。」
「元はと言ったらアンタのせいでしょ!」
「俺はフルパワーを出せなんて一言も言ってねえよ。」
二人は口喧嘩をしながらまた走り出しました。
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フィフス達から距離を離したグレ男。そこに大きくなったユニーと、そこに乗っかった瓜と平次が先回りしていました。
「フゥ・・・ 間に合った・・・」
「よーし、後は俺が!」
そう言って平次はユニーの背中からジャンプし、上から押さえ込む形でグレ男を止めようとしました。しかし・・・
「バァーーーー・・・」
グレ男がただ待っているはずが無く、空中で抵抗が出来なくなっている平次に容赦無く冷気を浴びせました。平次は見事に返り討ちに遭い、地面に落下してしまいました。
「ガッ!!・・・」
また調子よくグレ男が笑っていると、その後ろから忍び寄る影があります。それは、隙を見て彼の死角に入った瓜です。
『よーし・・・ このまま後ろからなら・・・』
彼女はこのままそおっと近づき、グレ男を背中から捕まえようとしました。そしてグレ男が油断しているのを見計らい、そして突撃しました。
『よし、今だ!!』
しかしグレ男は瓜が抑えようとしたタイミングにジャンプし、体勢を崩した彼女の頭を踏み台にして高いジャンプをし、低めの建物の屋根の上に乗っかりました。
「アイタタ・・・」
「ケケケ・・・」
グレ男は二人を上から見下ろしてまた笑い、屋根を素速く走って逃げ出しました。ユニーも彼を追おうとしましたが、いつの間にか回りを氷で固められ、滑って転んでしまいました。
そうしてまんまとしてやられたそこのメンバーは全滅し、グレ男は逃げられてしまいました。
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そうして楽しそうに屋根の上を走り回っているグレ男でしたが、そこに『ガガガガ!!』という足音が聞こえて来ました。彼が振り返ってみると、着々と自分に近付いてくるルーズの姿が見えました。
「逃がしはしませんよ。」
するとグレ男は自身のした目線に冷気を出します。その程度は予測済みだと言わんばかりにルーズはジャンプし、その勢いに乗せてグレ男に攻めかかりました。その頃建物の下の道には、頭を痛めている瓜の所に鈴音が合流していました。
「あ、鈴音さん・・・」
「よーし、間に合った・・・」
そこに凍っていた平次が震えながら突っ込みを入れます。
「お前は何もしないのかよ・・・」
「お嬢様を危険な目に遭わせたくはないので。」
「だ、そうだぞ。」
耳が良いために聞こえていたルーズからそう返答が来ました。
「ああ・・・」
そうこうしている内にルーズがグレ男に追い付こうとしていました。
「さて、そろそろ鬼ごっこは終わりです。」
「行っけー! ルーズ!」
鈴音の応援を受けたルーズはグレ男の近くに着地し、グレ男の方も、これには流石に驚いた表情を見せます。ルーズはすぐに腕を伸ばしてグレ男の肩を掴もうとします。
「さあ、これで終わりっ!!・・・
・・・!?」
ルーズがグレ男の肩に触れるほんの数センチ前にピタリとその動きを止めてしまいました。それを見た下の三人は、それに驚きます。
「アイツ・・・」
「どうしたん・・・ でしょうか?」
「ルーズ? ・・・ 何があったの!?」
三人の声かけを受けながらも、ルーズは苦しみながら動きが止まったままでした。
<魔王国気まぐれ情報屋>
・グレ男が出していった氷の後処理をするフィフス
フィフス『何というか、犬のしょんべんの後始末してる気分』
とか思ったとか・・・
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