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第130話 怪盗Sの正体

 突然目の前に起こったことに静以外の全員があんぐりになって止まってしまいました。一足早く元の調子に戻ったフィフスは、まさかと思い静に聞いてみます。


 「静・・・ まさか、あの物干しって・・・」

 「ハイ! あれもドクターからの支給品です。念には念を入れとけと言われまして・・・」

 「あんのゲスドクターめ、下手したら俺達も巻き沿いになるやつじゃねえかよ・・・」


 事実、彼に近付いていた平次も一緒に食らってしまい、煙の中で倒れてしまっていましたが、瓜達が被害に遭っていた『怪盗S』が倒されたので結果オーライということにしておきました。


 「まあいいか・・・ とりあえず銃を止めてからコイツをとっ捕まえて・・・」


 すると、二人の見る視線の先に、さっきの爆風で天高く飛び上がってヒラヒラと落ちる囮の下着が目につきました。そして、それが丁度爆発で発生した煙の中に入りかけたときでした。その煙の中から、下着をつかみ取る腕が現れたのです。


 「何!?・・・」


 フィフスが驚くと同時に嫌な予感を感じると、それは見事に的中しました。その晴れきれない煙の上から、下着を握りしめた怪盗Sが飛び出してきたのです。


 「ハァ・・・ ハァ・・・ 無駄だ!! このパンツ(お宝)がある限り、ワイは何度でも蘇る!!!」

 「ワイ?」


 怪盗Sはそのまま逃げ去ろうとし、その上何故か茂みの銃達は動き出しません。


 「なんで動かないんでしょう・・・」

 「おそらくさっきの爆発でイカレちまったんだろう。こうなったら・・・ ルーズ!!」

 「仕方ないですね・・・」


 同じく正気に戻っていたルーズとフィフスはそうお互いに確認すると、疾風術と瞬間移動でいっきに怪盗Sとの距離を詰め、そのローブを二人で掴んで捕らえてしまいました。


 「おら、大人しくしろ!」


 しかし二人は次の瞬間、少し怪盗Sの体に違和感を感じました。そしてそれはすぐに確信に変わります。なんせ、彼の体がペラペラに薄くなったからです。


 「「ナッ!!?」」


 二人が驚くと、そのペラペラの正体である、大きめの服が覆い被さってきました。


 「ウオッ!!」

 「何ですか! これは!?」


 二人がすぐにその服をどけると、屋敷の塀の上にさっきまでの風貌と打って変わって子供よりも小さな影が、その何倍も大きな風呂敷を抱え、その手に静の下着を握りしめて立ったいました。


 「あの影は・・・」

 「ハッハッハ!! 魔人が二人も揃って情けねえ!! あ~ばよ、とっつぁん!!」


 怪盗Sはそう最後に言い捨て、屋敷から素早く逃げ去っていきました。


 「あああ・・・ 皆さん・・・」

 「見事に全滅だぞ・・・」

 「何と声をかけたらいいのか・・・」


 見事してやられた男性陣達の無残な敗北の姿を見て、女性陣はどう声をかけたらいいのか分からなくなりました。しかし・・・


 「ああ・・・ してやられた・・・





  ・・・と思ってるようだな。アイツ。」


 「ええ、どうにかなったようで・・・」


 負けたことで言葉を失ったかに見えたフィフスとルーズが彼女達の方を向くと、その目にはまだ勝つ気が残っているように感じられました。


 『どうにかなった?』

 「それってどういうことだ?」


 すると、フィフスは既に伸びきっている平次に声をかけます。


 「メガネ、仕込みはすんだか?」


 それを聞いて、平次はその右腕をプルプルと力無く上げながら、親指を上げてグッとサインをしました。



____________________



 その頃の怪盗S、住宅街の屋根を伝いながらどんどん屋敷との距離を離していきました。


 「ハッハ!! チョロいもんでっせ! この調子なら今夜中に後二十件は軽くこなせそうやわ!!  ま、これもツキが回ってきたって事でんな。」


 そう彼が盛大に調子に乗っていると、後ろから、『ピンッ!・・・』っといった小さな音が聞こえてきました。一瞬だったとはいえ確かにそれが聞こえた怪盗Sは、一度足を止めて後ろを見てみました。


 「ん? なんやこれ・・・」


 彼が見つけたのは、盗んだ静の下着にいつの間にかくくりついていた紐でした。


 「ハ~・・・ こんなもんでワイの追跡をするつもりかいな? ほどいちまえば意味なく何でこんなもん・・・」


 そう啖呵を切って怪盗Sは紐をほどこうとそれに触れました。すると次の瞬間、『ヒュン!!』っと紐が彼の腕に絡みつき、しっかりとまとわりついてしまいました。


 「な、何や!!?」


 彼が突然のことに混乱していると、その間に紐はピンと張り、元のところに高速で戻り始め、怪盗Sもそれに巻き込まれてしまいました。


 「ウ、ウゴォーーーーーーーーー!!!?」


 怪盗Sが来た道に頭をこすらされながら引っ張られ続け、それが終わったと思ったときには、牛若家屋敷の庭にある木の枝に括り付けにされてしまいました。


 「う、うがぁ・・・ 顔がほんまに痛いで・・・」


 彼が目の焦点を戻して前を見ると、こちらに対して殺気のこもった目付きを向けてくるフィフスとルーズ、そして、紐ことワイヤーを引っ張っていたサードの姿が見えました。


 「もう逃げられないわよ、このゴミが。」

 「サンキュー、姉上。」

 『まさかお忍びでサードさんを呼んでいたとは・・・』

 「ホンット! こんな地味な仕事、ウリーちゃんのことが無かったら絶対やらなかったのに!」

 「でも、泥棒って・・・」


 鈴音が目を細めて見る泥棒の姿、それはぱっと見だと見るからに『子猫』のそれでした。


 「これって、猫だよな?」

 「にゃ、にゃ~ん・・・」


 そう言われて彼はすぐに誤魔化そうと、猫の鳴き真似をし始めました。しかしそれをフィフスが頭を鷲掴みにして無理矢理止めました。


 「下手くそな芝居は止めろ。こっちはもう誰だか知ってんだ。」

 「イタタタタ!! 赤鬼の旦那、こりゃキツいでっせ!!」

 「やっぱり! 猫がしゃべってる!!?」

 『フィフスさんの知り合いなんですか?』


 ウリからの質問を聞いて、フィフスとルーズはむず痒そうにしながら答えました。


 「・・・ こいつは『ソック』。」

 「グレシアの契約魔獣です。」


 『志歌さんの!?』


 「どうも、よろしくです~・・・」


 怪盗Sことソックは、その場しのぎのためににんまりとした笑顔を振りまきました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


 サードの剣は魔力を流すことで剣の飛ばす方向、即ちワイヤーの動き方を操作することが出来ます。


 今回はそれを応用し、怪盗Sが触れた途端に体に巻き付くように指示を送りました。


サード「ま、アタシにかかればこんなもんよ!!」


フィフス「凄いの姉上じゃ無くて武器では?」


サード「お黙り!!」





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