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第129話 泥棒殲滅要塞

 その日の夜、牛若家屋敷にて、対泥棒用の対策要塞が完成していました。


 「・・・ スゲえな、金持ちって・・・」

 「王子(あなた)に言われたくありませんよ・・・」


 そこには広い庭の中心に静の下着をいくつか干し、その周りの茂みや木々の影には、事前にエデンから発注しておいたマシンガンや仕掛け銃を隠していました。彼らはこの罠に下着泥棒を誘い出し、一網打尽にするつもりなのです。


 それに対して常識的な日本人である鈴音と瓜はそれぞれこう思っていました。


 「こんな単純な罠に引っかかるもんなのか?」

 『そもそもこれって、軽く銃刀法違反では・・・』

 「細かいことは気にするな、俺は気にしない・・・」


 フィフスが彼女の考えを察していたのかそう一言送り、彼女はおでこに一筋の汗を流して黙ってしまいました。


 「それより・・・ 何でお前がここにいんだ?」


 フィフスの会話の先には、何故かここにやって来た平次がいました。


 「町田さんが被害に遭ったのなら、そいつに一矢報いるのが俺の使命だからに決まってんだろ。」

 「いや、正直誰もお前に期待してないから。」

 「何だと赤鬼!!? 大体貴様が昨日町田さんを守っておけばこんな・・・」


 平次の説教を見事にスルーしたフィフスは、続いて今だに苛つきながら右足のつま先と右手の指を上下に動かしてわかりやすくその意思表示をしている経義に声をかけます。


 「にしても意外だな。まさか例の泥棒野郎が男色家だったとはなぁ・・・」

 「うるさい・・・」


 経義はまたも怒りマークを浮かべてフィフスの方も見ずにそう呟きます。すると、次にフィフスはふと思い立って首を横に振って周りを見渡し、こんなことを聞いてきました。


 「あれ? そういや弁爺さんはどこ行った?」


 彼は、屋敷内にやって来たときから弁の姿が無いことに気が付いたのです。すると機嫌の悪い経義に代わって、屋敷の奥から差し入れのお茶を持ってきた静が話してくれました。


 「弁さんは、オークの件の報酬交渉に博士ののところに向かいました。ついでの仕事もあるそうなので、今夜は戻らないかと・・・」

 「だ、そうだ。」

 「ま、自分の主人のこんなアホな真似なんて見たくないだろうしな。」

 「それに乗っかっているお前が言うな。」


 経義はそう言って一度後ろに下がりました。


 「ああ若様! お待ちください!」


 静も差し入れを素早く置いて彼を追っていきました。差し入れが勢い余ってフィフスの頭にかかったことにも気が付かずに・・・


 『フィフスさん・・・』

 「ハァ・・・」


 視点が変わってルーズ。彼は人狼の卓越した五感を利用し、目標がやって来たときにすぐに気付けるよう屋敷の屋根に立ち尽くしていました。


 『流石に無理があったか・・・ まぁ、こんな単純な手に引っかかるぐらいなら、町中の下着なんて盗めるわけ・・・』


 なんてことを思っていたそのときでした・・・


 ザザッ・・・


 「ッン!? 嘘ぉ~・・・」


 普通の目視で見るとまだまだ遠いものの、彼の敏感は耳には違和感のある音が聞こえてきました。すぐに彼は下にいたフィフス達に伝えます。


 「王子! 来ましたよ!!」

 「おお、了解した!! 牛若!!」


 フィフスは瓜から手渡されたハンカチで静に濡らされた頭を拭きながら返答します。そしてハンカチを彼女に返すと、擬態を解いて警戒を始めました。呼びかけられた経義の方も、腕輪のボタンを押してスーツを着込み、今か今かと大剣を振りかざします。


 「さて、どこから来るか・・・」

 「とっとと来い!! 即刻真っ二つにしてやる!!」

 「なんで女子二人よりお前の方がキレてんだよ。」

 

 するとその待ち望んでいた存在はとうとう彼らに姿を現しました。それも・・・



 「ハッハッハ!! 貴様らの挑戦を受け、メイドさんのパンツをいただきに来たぞ!! この、暁の影、『怪盗S』様がなぁ!!!」



 屋敷の塀、フィフス達から見て真正面の場所でした。


 「まさかの正面突破かよ。」

 『しかも中二臭いです・・・』

 「センスの無い奴(お前)が言うな。」

 「なら話は早い!! この場でたたっ切ってくれる!!」


 血の気のたぎった経義が後先考えずに怪盗Sに向かって行きました。


 「あのバカ、何も考えずに・・・」


 するとフィフスの隣にルーズが降りてきました。


 「しかし、彼のあの動きならもう終わるのでは。」


 事実、唐突に経義に寄ってこられた怪盗Sはその気迫に驚いて固まってしまいます。経義はそれをいいことに高く飛び上がり、落下の勢いに乗せて切りつけようとしました。


 「く~ら~え~!!!」


 その攻撃にいきなり事が片付くかと思われた次の瞬間・・・



 ダダダダダダダダ!!!・・・


 ドドドドドドドド!!!・・・


 茂みの中に隠していた隠してあったマシンガンや仕掛け銃が経義に向かって一斉放射してきたのです。


 「ガァーーーーーーーーーー!!!」

 「若様ーーーーーーーーーー!!!」


 これの直撃を受けた彼はそのまま地面に真っ逆さまに落下してしまいました。スーツのおかげで助かりましたが、これにより彼はリタイアになりました。


 「何しに行ったんだよアイツ・・・」

 『センサーで反応した人を攻撃するんですね。あの武器達・・・』


 するとフィフスのスマホにメールが送られてきました。当の武器を送ってきた信からです。その内容は・・・




 「ごっめーーん! 仕込み銃に君達と敵の区別付けさせるの忘れてた。


  テヘペロ」




 「あのクソドクターめ・・・」


 自分達にも銃のセンサーが反応することを知って、残っていたメンバーはうかつに動けなくなって

しまいました。しかしそれを見た怪盗Sは・・・


 「ハッハッハ!! 情けないな、こんなもの!!」


 と言い捨て、皆が警戒している洗濯干しのど真ん中に飛び込んで行ってしまいました。それにフィフス達が驚いていると、彼は放たれた銃弾をその動きで全て軽々とかわして見せます。


 「あの泥棒の身のこなし・・・」

 「ただ者ではありません!!」


 戦士である魔人二人は驚き、それに対し当の彼は得意げにしています。


 「こんなもの、屁でも無い!! 用意してくれたものはありがたくいただいていくぞ!!」

 「マズい! このままじゃ簡単に取られちまうぞ!!」


 平次がそう言うと、いつの間にか彼の隣に来ていたフィフスが悪い顔をします。


 「お~・・・ そうだな、じゃあ行ってこい。」


 ポンッ・・・


 「ハ?・・・」


 平次は背中を押され、さっき経義が食らっていた銃弾の嵐の中に放り込まれてしまいました。それに気が付いた彼は全力で体を動かし、なんとか銃弾を回避しながらフィフスに向かって叫びました。


 「テメーーーーーーー!! 覚えてろーーーーーーーーー!!!」

 「頑張って捕らえろよ~・・・!!」


 平次は怒りながらどうにか必死で回避を続けながら怪盗Sに近付こうとしますが、怪盗Sは高笑いをしたままそれをかいくぐって物干しにまでつき、とうとう静の下着を洗濯ばさみから引き抜いてしまいました。


 「しまった!!」

 「ハハハ!! いただいt・・・」














 ドッカーーーーーーーーーーーーーン!!!!!



 「グッハァーーーーーーーーー!!!?」


 「うそ~ん・・・」






 次の瞬間、その物干しが爆発し、怪盗Sは見事に巻き込まれてしまいました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


様々な武器類による破壊でえらいことになっている牛若家屋敷の庭


フィフス『前に俺がいただけで怒っていたのどこいった?』




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