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第11話 魔王子君学校へ・・・

 月日は流れ、今日は新学期初日。朝の準備を終え、学校へ行こうとしているとき、対するフィフスはバイトの求人誌を必死こいて見ていた。


 『それでは、行ってきますね・・・』


 声が聞こえたフィフスは血走った目で瓜の方を振り向いた。


 「お~、どこへ行くんだ?」

 『目、怖!!』

 『これから学校へと・・・』

 「学校だあ? お前もう十六だろ。留年でもしたのか?」

 『え、普通に高校なのですが・・・ もしかして、フィフスさんの世界ではもう働いているんですか?』

 「ふうむ、そういうものなのか・・・」


 後で聞いたところによると、フィフス達は十五歳には働くのが普通らしい。正し今は時間も無かったので、瓜は苛つきオーラ全開のフィフスをその場において急いで学校へと向かった。ちなみに、眼鏡とマスクはフィフスが隠したため素顔である。


 そうして久しぶりに登校をした瓜。クラス内に友達がいなくなったこともあり、なんだか気まずくなっていたが、それは周りも同じようだ。本人こそ気付いていないが、姿の全く変わった瓜に、クラスのみんながざわついていたのだ。


 「ねえ、あれってもしかして町田さん?」

 「マジかよ!! めっちゃ美人じゃん。」

 「く~、前から声かけとくんだったーーーーーー!!」

 「俺、タイプかも・・・」


 眼鏡が無いことに普段よりやりずらさを感じている本人に届かないところで周りの人達はガヤガヤと騒いでいた。その内の一人の男は特別に・・・


 『マママ、マジか!! あれは・・・ あの時の・・・』


 瓜の素顔のことで盛り上がっていたクラスだったが、すぐに次の話題がきた。


 「な~みんな、今日うちのクラスに転校生が来るらしいぜ!!」


 ここで男が大声で言った事ですぐに話題はすり替わり、今度はそれが瓜の所まで届いた。


 『転校生!! 冬休みの間に引っ越してきたんでしょうか?』


 「なあ、転校生って女子か?」

 「いや、男らしいぜ。」

 「っんだよ、つまんね。それよりあの町田さんだろ。」

 「ああ、前から引っ込み思案だったが、それに加えてあの顔は・・・」

 「やべ、萌える。」


 「ね~、転校生ってイケメンかな?」

 「あんたそればっかりね~」

 「だってイケメンなら速くお近づきににならないと~」

 「はいはい、夢見過ぎよ。」


 男子と女子でそれぞれ違う話題で持ちきりになっていると、すぐにチャイムが鳴り響き、ホームルームの時間になった。席についてもざわつきは終わらなかったが先生が教室に入ってくると急に静まりかえった。


 「きり~つ、気をつけ、れ~い!!」


 一行が座ると、先生は本題を振り出した。


 「随分と盛り上がっていた通り、今日からこのクラスに転校生が入る事になった。」


 わくわくする生徒達に対し、やれやれと思いながら先生は指示した。


 「まあ、お前らもはやく見たいだろう。入ってこい。」


 指示をされた生徒はいそいそとした様子で入ってきた。瓜も興味本位で顔を見ようとすると、驚きのあまり噴き出してしまった。


 「ブッ!!」

 「ちょ! どうしたのよ、町田さん?」

 「い、いえ・・・」


 ぎこちない笑顔をして誤魔化そうとした瓜。それもそのはず、教室に入ってきた転校生はなんと・・・



 「どうも、小馬 五郎です。よろしくおねがいしま~す。」


 擬態変化したフィフスだったのだ。


 「席は、そうだな~・・・ お、丁度町田の隣が開いてるな。そこに行ってくれ。」

 『あれ、ここの席って確か彼女の・・・』


 そこは元々例のいじめっ子が座っていたはずの席があったが、誰もそれについては触れることも無くそそくさと座ったフィフスに即座に瓜はテレパシーで聞いた。


 『どどど、どういうことですか!? なぜフィフスさんがここに?』

 『見ての通り転校生だ。俺はお前から五十メートル以上離れられないんだ。ならこうした方がお互いに契約にとっても都合が良いだろ。』

 『住所とかは、どうしたんですか?』

 『そこら辺は前におやっさんに作ってもらった。後のややこしいことは、催眠術でどうにかなる。』

 『今しれっととんでもないことを聞いたような・・・』

 『とにかく、俺もこれからはお前のクラスメイトだ。』


 そう言いながらフィフスは瓜の方を向いた。


 「ま、よろしくな。」

 「は、はい・・・」


___________________________________________


 フィフスがこの世界の学校でやっていけるのか。その事に関して悩んでいる瓜だったが、それについては全く心配はいらなかった。


<数学>


 「ハイ、じゃあここ・・・ いける奴手を上げて。」


 数学の教師がそう振ると、周りはシーンとしていたが、フィフスは率先して手を上げた。


 「お、じゃあそこの人。」

 「はいっ!!」


 そうして黒板の所へ行き、すぐに問題を解いてしまった。


 「スゲーー・・・」

 「アタシ全然わかんなかったのに・・・」

 「ケッ・・・」

___________________________________________


<体育>


 バスケットボールの試合中、


 パシッ!!


 「しまった!!」

 「まずい、決められる!!」


 そして相手チームがシュートをした。しかし・・・


 バシッ!!


 「ナッ!?」


 ゴールに入る直前のボールをフィフスは軽くつかみ取った。


 「とっとと決めるか。」


 続けてフィフスは着地したその場からロングシュートを繰り出した。普通なら当然入るわけが無いのだが、フィフスの身体能力は軽々とそれを可能にした。


 「ま、まじか・・・」

 「スゲぇ!!」


___________________________________________


<家庭科>


 周りの人達、及び瓜が中々刺繍がうまくいかずに嘆いていた様子だったが、そんな中でフィフスは超高速でこの間知ったアニメキャラの刺繍を次々としあげていった。


 「速っ!!」

 「なのにメチャクチャ綺麗に出来てるぞ。」

 「どうなってんだ?」


___________________________________________


<昼休み>


 あまりのハイスペックぶりにいつの間にか彼の周りに人だかりが出来ていた。瓜の方は完全にはじき出されている。


 「ね~、小馬君ってどこから来たの?」

 「好きなことは?」

 「是非ともバスケ部に入らないか!!」

 『凄い人気っぷりです・・・』


 その光景に瓜は若干引き気味になっていた。それにフィフスは軽く納めていたが、怒濤の追い込みが続いた。


 『まずい、さすがにこの量は捌ききれねえ・・・』


そんな状態の中に、救いの手が舞い降りた。


 「ちょっと!! 小馬君が困ってるわよ。少しは休ませてあげて。」

 「あ、委員長。」

 「ちぇ、でもそうねえ・・・」


 一人の女子生徒の一言に、囲っていた生徒は離れていった。そこにその委員長が続けた。


 「ごめんなさいね、転校初日から。」

 「いいっすよ、あなたは?」

 「アタシ? アタシはこのクラスの学級委員長をやらせてもらってる<奥山 志歌>よ。よろしくね。」


 紳士的な彼女の挨拶に、フィフスは冷たく返した。


 「ふ~ん、それはどうも・・・」


 その事に周りの男子生徒が話し出した。


 「オイ! あいつ奥山さんの優しい言葉を受けて、冷めた態度取ってるぞ。」

 「どういう神経してんだ!? 俺なら一発で気絶しちまうよ。」


 なんとなくそれが聞こえたフィフスは瓜にテレパシーで聞いた。


 『瓜、こいつは?』

 『はい、<奥山 志歌>さん、しっかり者の委員長で、学校でも有名な美人さんです。ただ・・・』


 その場に一人の男子生徒がやって来た。


 「奥山さ~ん、プリント渡しにきました~」


 そのプリントを受け取ろうとする志歌だが、その前に瞬時にゴム手袋をはめた。


 「そう、ありがと、もう下がって。」

 「も~、そんなこと言わずにちょっとは話を・・・」


 男が馴れ馴れしくかたを触ろうとした途端、志歌はその腕をつかみ、思いっきりの背負い投げをした。


 「とっとと下がって、いい?」

 「は、はい・・・」


 男は怯えながら去って行った。周りのガヤも呆れている。


 「あ~あ、これで三十人目の脱落者だ・・・」

 「ホント、取っ付きにくいよな。」


 他人事で見ていたフィフスもさすがに反応した。


 「な~、これは一体・・・」


 クラスメイト達が答える。


 「奥山さん、優しいんだけど、極度の『男アレルギー』なの。」

 「少しでも触れようとすると、キツいお仕置きに遭うって訳。」

 『よくそんな奴が委員長なんてやれてんなあ・・・』


 落ち着きを取り戻した志歌は、フィフスの方を見てぎこちない乾いた笑顔をした。


 「ゼー、ゼー・・・

       ・・・と、とりあえず、よろしくね。 小馬くん・・・」


 ここでの二人の出会いが、思わぬ自体を引き起こすことになるのだが・・・







                              それはまた次回で

<魔王国気まぐれ情報屋>


謎の転校生、小馬 五郎。一日にしてクラスの人気をかっ攫い、後にバレンタイン対戦優勝候補となる。


フィフス『何だこのランキング、ばれんたいん?』


当の本人には通じない異文化・・・




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