第125話 久々の登校
ルーズと鈴音によるそのやりとりが終わってから、また少し日にちが経ちました。今日もフィフスと瓜はいつも通り学校にへと向かって行きます。
「ああ、毎度毎度課題が多くて参る・・・」
『でも、やらないと成績がもらえませんよ。』
「こちとら別で任務もあんだぞ・・・ 少しは考慮して欲しいってもんだ・・・」
二人がたわいもない会話をしていると、そのときすれ違った二人組の女子高生の会話が耳に入ってきました。
「ねえ、ベルリズムが投稿再開したってホント?」
「そうそう、しかも何か豪華になってるよ!」
女子高生が見ている動画に映っているベルリズムは、セットが以前のものより映えており、更に彼女の歌や動きもどこか以前のものよりも楽しそうになっていました。
女子高生の話にフィフスと瓜は彼女達が見えなくなってから話し出しました。
『鈴音さん、動画投稿再開したんですね。』
「ああ、ルーズも毎度張り切ってサポートしてるみたいだぞ。全く、俺の時とは偉い違いだ。」
そう言って歩いていると、二人に向かって呼びかける声が聞こえてきた。
「おーーーーい!!」
声の先には、スッカリ調子を取り戻した鈴音が二人に向かって手を振っていました。
「おはようだぞ!」
事件が起こる前の明るい笑顔を振りまく彼女に二人は駆け寄ります。
「よお、もう大丈夫なのか?」
「おかげさまでこの通りだぞ! そっちこそ、大丈夫なのか? その、ふく・・・ ムグッ!?」
鈴音はその事を言いかけた途端にフィフスがその手で口を塞ぎました。瓜は彼が何をしているのか気になります。
『ふく・・・ 何ですか?』
「何でも無い! 気にするな!」
圧のかかった言い方に瓜はそれ以上聞くのは止めておきました。するとフィフスは鈴音にだけ聞こえるように顔を近付けて言いました。
「こないだ言ったよな! 瓜に副作用のことは言うな!」
「す、すまないぞ・・・」
すぐに彼は顔の位置を戻し、どうせなので鈴音も一緒に学校に向かうことにした。
「それで、ルーズの方はどうだ?」
「準備があって遅れるからここで待っててって言ってたぞ。」
瓜は二人の会話を聞いてその意味が理解できませんでした。
『? 何の話ですか、フィフスさん。』
「あ? ああ、そういやお前には言ってなかったな。実は・・・」
そこにその話そうとしたことが自分からやって来ました。
「遅れて申し訳ありません、お嬢様。」
それは、フィフス達と同じ制服姿をしているルーズでした。
「ルーズ・・・ さん?」
「おや、王子に瓜さん。お二人もいたのですか。」
瓜は途端にフィフスに聞きます。
『こ、これは一体・・・』
「見ての通り、コイツも今日から俺達のクラスメイトってことだ。事前の手続きはドクターにやって貰っている。」
「お嬢様や王子達のこの世界での生活。間近に見させていただきます。瓜さん、以後よろしくお願いしますね。」
「は、はあ・・・」
瓜は手回しのはさらに気の抜けた返事した出来ませんでした。
そうして四人で話している様子を、遠目で見ている人影が三人います。牛若家の三人です。黙ってみているだけの経義に、隣にいる静が心配そうに声をかけてきました。
「よろしいのですか若様。せっかくですしあの輪に入られては?」
「なれ合うのは嫌いだ。あくまで俺は赤鬼達とは協力するだけ。それ以上でも以下でもない。」
静の親切に素っ気なく返す経義に静は少し寂しそうな表情の目付きを見せてきました。それでも彼は態度を変えようとしませんでしたが、すぐに別のことでその顔を変えました。
「あれ? そういや弁はどこ行った?」
「ああ、弁さんでしたら・・・」
「おはようございます皆さん!!」
「ウッワ! ビックリした!!」
「王子、この方は?」
経義の知らない間に弁はフィフス達の所にやって来ていました。唐突に至近距離に表れたことで四人揃って若干引いています。
「弁爺さん・・・ 牛若の執事だ。」
「ああ、あの時の鎧さんの・・・」
すると弁はどこから取り出したのか分からない程の速度で複数個のキャンディを取り出してきました。
「どうぞこれを機に、若様とも仲良くしてくださいませ。あ、これ、お近づきの印にどうぞ。」
「「ど、どうも・・・」」
弁の勢いに押されながら鈴音とルーズは微妙な顔をしてキャンディを受け取りました。
「これからも若様をよろしくお願いします。あ、もちろんお二人もぉ!!」
ドガッ!!!
「弁ッ!!!」
フィフスと瓜の方を向いてそう言いかけたときに弁は後ろから経義のドロップキックを食らって地面にぶつけられてしまいました。彼はそこから更に弁の頭を踏みつけにしながら怒り続けます。そこに静が止めにかかります。
「べーーーーーーんーーーーーーー!! 毎度毎度そういうことすんの止めろって言ってんだろが!!!」
「アアア! 若様、もう止めて上げてください!弁さんが死んでしまいます!!」
目の前の光景に汗を流して唖然としていた四人でしたが、少しして経義が弁を服の襟を持って起き上がらせました。
「あ~・・・ すまない、今のは忘れろ。オラ、行くぞ!!」
「わわわ、若様!!?」
経義はそう言い残し、顔の汚れた弁を引きずって去って行き、静も四人に一礼して追いかけていきました。そんな状態でもなお弁はフィフス達に手を振りながら声をかけ続けます。
「これからも若様を、お友達として仲良くしてくださいね~!!」
「いいからもう黙れ!!」
そうして三人を見ながらフィフスが一言
「キャラ濃いな~・・・」
すると鈴音が話題を変えようと口を開きました。
「さ、さて・・・ そろそろウチらも学校に行くか。」
「おう、そうだな。」
彼女に乗る形で、皆で歩き始めました。
「そういやお前、課題どおすんだ?」
「ナッ!! まさか結構あんのか!!?」
「それなりに来てなかったからな・・・」
「ご安心をお嬢様! 課題なら僕も手伝います!!」
「お前はまだこの世界の常識からだろが・・・」
『そういうフィフスさんも課題がまだ・・・』
「余計なこと言うな!! とにかく・・・」
フィフスは三人より前に出て振り返ります。
「ルーズも来て、鈴音も戻ったんだ。今日は苦楽で盛り上げると行こうぜ~・・・」
いつもの悪い笑顔が冴え渡ります。
「「オーーーー!!」
鈴音とルーズはそれに乗って叫び、また三人は学校にへと向かって行きました。
『今ので誤魔化せてませんよフィフスさん。』
「・・・ ちゃんとやります。」
<魔王国気まぐれ情報屋>
今回の件で鈴音はエデンコーポレーションもとい信からの援助を受けて生活しています。ルーズの方もフィフスと同様にエデンとの契約を結び、任務を受けて給料を貰っています。
今回で長く続いた『エデン篇』は終了します。読者の方々は読んでくださってありがとうございました。思っていたよりも長丁場になってしまって原作者の私も驚いていますが、なんとか終わらせることが出来てホッとしています。
次回からしばらくの間短編の話をいくつかやってから次の長編を投稿していこうと思っています。
これから先も『魔王子フレンド~私と異世界の赤鬼さん~』をよろしくお願いします!!
よろしければ、『ブックマーク』、『評価』をよろしくお願いします。