表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/344

第124話 信の先輩


・エデンコーポレーション日本支部 第三科学技術局 信のラボ



 オークの騒動が終わって一落ち着きした信は、一人その中でムースコーヒーを飲みながら、パソコンに出ていた建物の損失を確認します。


 「フゥ~・・・ 全く何でもかんでも許可するもんじゃないなぁ~・・・ 思ってたより館内がボロボロだ。」


 これからの修理のことを思ってため息をついていると、自身の許可が無く扉が開く音が聞こえてきました。信はそれに何かを察した表情をします。


 そして勝手に部屋にやって来た人に、信は文句を言い放ちました。


 「何のようですか? これから忙しくなるんですけど・・・」


 それに対して入ってきた男は自分から話を切り出しました。


 「二人が世話になったようだね。」

 「ああ・・・ その件ですか。」


 信は持っていたコーヒーカップを机の上に置き、表情を変えて話を続けました。


 「味方になったのはいいんですけど、マズいことに今にも殴りかかってきそうでしたけどね・・・ 五郎君は。」

 「殴りかかる? 何か粗相をしたのか?」


 信はそう言われると、相手に向かって睨み付けました。


 「全て元はと言えば貴方のせいですよ・・・ そもそも貴方は知っていたんですか? 契約の副作用のことを・・・






  ・・・どうなんですか、()()先輩?」




 信が睨み付けている相手。それは、瓜の父、『町田 桃太』でした。



 「いいや。私も聞いて驚いているよ。」

 「それともう一つ。五郎君があの本をどうやって手に入れたのか聞きたがってましたよ。そろそろ僕にも、なんであんなことをしたのか教えてもらえませんか。貴方の娘さんのことと合わせてね・・・」


 信からの要望に、桃太は素っ気なく返しました。


 「ま、色々あったのさ・・・ 色々とね。」


 分かりやすく誤魔化す桃太に信は真剣な顔色をして声を出します。


 「はぐらかさないでください。いい加減僕にだけでも言ってください。」


 信が椅子を回転させてそう桃太に言おうとしましたが、いつの間にかそこには彼の姿はありませんでした。


 「あ~・・・ また逃げられたか・・・」


 信はより悩みのためが出来たことに改めてため息をし、気分を誤魔化そうとパソコンに向かって行きました。



____________________



・人気の無い川辺


 「フンフフン フフ~ン・・・」


 計画が失敗していながら、いつものように陽気な様子で鼻歌を歌いながらその場を歩いているカオス。彼が進んでいく先には、川辺にしゃがみ込んでいるセレンがいました。


 「あらら・・・ 腕、切られちゃいましたか・・・」

 「油断しただけよ! 次はそうはならないわ!!」


 一言反論したセレンは左手を皮の水面にそっと付けました。すると川の一部分だけが澄み切った綺麗な水に変わり、彼女はそこに切り落とされて水面が見えるような形に待っていた右手を突っ込みました。


 すると手首までで途切れていた彼女の右手が徐々に形作られていき、川から引き抜くと彼女脳では切られる前の元の形に戻っていました。


 「・・・っと、こんなとこかしら。」


 右手を元に戻した彼女はそう呟きながらその手の調子を確認します。それを見たカオスはこう言い出します。


 「羨ましいですね~・・・ その能力。」

 「これは人魚の特権よ。アンタには無理。」

 「チェ・・・ いいなぁ~・・・」




 「そんなことはどうでもいいだろ。」




 会話してきた二人に聞こえてきた声に、カオスは後ろを向いて手を振りました。


 「ヤッホ~・・・ 君の来たのか、フログ。」


 フログはカオスの軽いノリには一切付き合わず、いきなり本題に入りました。


 「リーダーが呼んでるぞ。」


 普段は陽気なカオスも、それ一言を聞いた途端に仮面の奥の表情を変えました。


 「ああそう・・・」

 「リーダーが!!」


 嫌な様子のカオスに対し、セレンの方は目を輝かせています。


 「ああ!! そんな急に!! こんなことなら化粧の一つでも・・・」

 「そんな時間は無い。行くぞ。」


 フログは二人の言葉を全て無視して一枚の紙を出しました。そこには以前カオスがフィフス達を魔王国に送ったものと同じ魔法陣が描かれていました。


 フログがそれに自身の指を触れると、魔法陣は光り出し、その紙の上を離れて中を浮き上がり、三人の背丈がすっぽり入るほどの大きさに巨大化しました。


 カオスは不満げ、セレンはウキウキとし、フログのみ冷静なままその魔法陣の中に入っていきました。三人がくぐった後、すぐにその魔法陣は消滅しました。



____________________



 魔法陣を抜けた魔革隊の幹部三人は、薄暗く広い空間に出ました。その奥にある椅子の上に、三人を見下ろす形で座っている男が一人。その男に向かってまず初めにカオスが口を開きます。


 「どうも・・・ 言われたとおりに来ましたよ、リーダー。」


 気の抜けたしゃべり方にセレンが肘で彼の横っ腹を突いて黙らせます。


 「それでリーダー・・・ ご用件は・・・」


 セレンはカオス達の時とは全く違う丁寧な可愛らしいしゃべり方で話します。そのリーダーと呼ばれるその男は、威圧のこもった目付きを三人に向けていました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


 気付いた読者はいましたか? 第十話で桃太と話していたのが『龍子 信』です。


 実はかなり序盤から登場させていました。気付いていた方はコメントを送ってくれると嬉しいです!!




 よろしければ、『ブックマーク』、『評価』をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ