第117話 お待たせしました三人目
少し前に時間は遡り、まだ魔王国にて仕事をしていたル-ズ。そのとき彼はキンズと共に王城の掃除をしていました。
無言で仕事を進めていた二人でしたが、次の瞬間・・・
「・・・」
「ッン!?・・・」
ルーズが突然手を止め、キンズはそれが気になって話しかけます。
「どうかした?」
「いえ・・・ 今、どこかから女性の声が・・・」
二人は事前にフィフスから聞いていたことから、その辞典でまさかと思います。するとその予想はピタリと的中しました。ルーズの真下の床に、突然魔法陣が現れたのです。それは、以前フィフスが行方不明になったときのものと同じでした。
「呼ばれたようです。」
「そうね・・・ ま、やれるだけ頑張ってきて。あと、姫様に会ったらよろしく伝えて。」
「ハイ。それでは失礼します、姉上。」
その台詞を最後に、ルーズは魔法陣と共に消えていきました。
「しっかいやるのよ、ルーズ・・・」
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そして彼が次に目を覚ますと、そこには一人の女の子がこちらをじっと見ていました。まず最初に彼は周りの景色を確認し、ここがさっきまでとは全然違う場所だと確信します。
『異世界かどうかはともかく、召喚はされたようですね。』
そして次に彼は目の前の彼女に声をかけました。
「貴方がこの世界における僕のご主人様でしょうか?」
「え? あぁ・・・ うん・・・」
彼女は困惑しながらそう答えた。なのでまずはとルーズは自己紹介をし始める。
「そうですか。なら自己紹介を・・・ 僕は・・・」
「ごめん!! それは後にして欲しいぞ!!!」
突然の彼女の言葉に、彼の自己紹介は遮られてしまいました。それと同時に、彼はいま何かが起こっていることを察します。そうしたら次に彼女からこう言われました。
「今はとにかく、助けて欲しいんだぞ!! お願い!!!」
大きな声を上げながら必死に頭を下げてきた彼女を見て、ルーズは顔を険しくしました。
「話してください。」
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そして彼は現状にいたります。
「いきなり切羽詰まっているとはとは思いませんでしたが、どうにか間に合ったようですね・・・」
「「ルーズ!!」」
「どうも、『異世界』ぶりってトコですかね、王子。」
次にルーズは自分の登場と腕を切られたことで動揺しているオーク三体組に蹴りを食らわせ、軽く吹き飛ばして見せます。
「お嬢様、お下がりを。」
「お、お嬢様?」
そこに彼のことを知らない経義が声を上げた。それにフィフスは端的に説明します。
「人間・・・ なのか?」
「『ルーズ』、向こうの世界で俺の執事をやっていた『人狼』だ。」
「人狼だと!?」
「安心しろ、人は食わん。」
するとルーズは鈴音が下がったのを確認した後、周りの味方に話しかけます。
「事は彼女から聞きました。まずはこいつらを倒しますか。」
「話が早くて助かる。だが、こいつらは同時に潰さないと倒せん面倒な能力を持っている。」
「了解です。では固めるとしますか・・・」
余裕な態度を見せ続けるルーズを見て、腕を再生させたオーク達の気分が悪くなりました。
「この野郎~・・・ 一発当たっただけで調子に乗りやがって・・・」
「ふざけんな! ふざけんな!!」
「その鼻につく顔をズタズタにしてやるか・・・」
「「「ハァーーー!!!」」」
機嫌を悪くしたオーク三体は一斉にルーズの法に向かって口を膨らませ、またそれぞれの魔術を撃ちだそうとします。しかし・・・
「遅いですよ。」
ザシュッ!!・・・
三体が気付いたときには今度は両足を切られ、体勢を崩して技を放ち損ねてしまいました。
「ナッ! 何故・・・」
訳の分かっていないオーク達と同様な反応を経義も顔が見えないながらしていました。
「何が起こった!? 『さっきアイツが出て来た時もそうだ。なんの前触れもなく奴はオークの腕を切っていた。あれは一体・・・』」
彼が思っていたことに気付いていたのか、フィフスガ話します。
「『気圧操作』だよ。」
「!? 気圧操作!!?」
「アイツは一定範囲内にある空気の圧力を操作できる。さっきのはそれで一部の空気をピンポイントで固めたのを勢い良くぶつけて切り裂いたってトコだ。
それも、今この場は広い開放空間。空気の供給なんていくらでもできるアイツにとってはもってこいの場だしな。」
フィフスが説明を終えたのと同タイミングにルーズも補足を付けました。
「まあ、言ってしまえば『空気弾』の派生なので魚人の鱗とかは切り裂けませんが・・・ 貴方方程度なら余裕です。」
そう言ってのけたルーズに相手は怒り心頭になり、叫び出します。
「ク、クソガァ!!」
オークは足を再生させようとすると、すぐにルーズはそれを見つけた途端・・・
『<疾風術 風刃>』
また彼はノーモーションで空気圧を操作し、三体の足を再生しにくいように細切れにしてしまいました。
「「「ギイヤーーーーーーーー!!!」」」
「やることはやりましたよ。後はよろしくお願いします。」
「だってよ、グレシア。」
「アタシに押しつけるの!? ・・・ まぁいいわ。」
少々不満ながらもグレシアは両手を光らせました。それを見たフィフスは・・・
「おおっと派手にやる気だな。ルーズ、そのヘンテコスーツ連れて下がれ!!」
そう警告を告げ、フィフスは一目散に逃げ出しました。ルーズも指示を受け、すぐに経義を抱えて離れました。
「おおい何だ!?」
「逃げますよ。彼女の本気はしゃれにならないので・・・」
するとグレシアはその輝かせた両手を地面に勢い良く叩きつけます。すると、氷巣形成の時より分厚い氷が荒々しく発生し、身動きの取れないオーク三体を包み込んで固めてしまいました。
「何だあれは!?」
「杖無しで制御が効かなくなった彼女の氷です。」
そこから彼女は固まって動かなくなったオーク達の前に立ち、その固めている氷に自分の右手を平手で当て、術の名を叫びました。
「<氷結術 凍砕>」
すると次の瞬間、その周囲に広がっていた氷は、オーク達を巻き込みながら一瞬にして粉砕させてしまいました。
こうして、オークとの戦いに決着がつきました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
<疾風術 風刃>
ルーズが使う基本技。効果範囲内にある空気圧をピンポイントで高くし、刃物のように固めて相手を切り裂く。目視が出来ない上に大きさも調節可能なため応用が利きやすい。
しかし弱点としてあくまで即席で生成しているため剣と比べると切れ味が悪いことがある。
<氷結術 凍砕>
グレシアが使うとっておきの技。杖を使わず直接手で相手に触れて魔力を流し込み、瞬時に周囲ごと相手を凍らせて途端に粉砕させる。
非常に強力だが同時に派手に周囲を壊すため周囲の被害も甚大になり、二次災害が起こる可能性もあるため彼女自身はあまり使いたがらない。
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