第116話 オークを倒すために
大きな爆発音が聞こえてきた現在どこかの廊下にいるフィフス。その音に敏感にオークが反応します。
「な、なんだこの音!?」
『誰だか知らんが派手にやったようだな・・・ さて、こっちもそろそろ・・・』
オークはフィフスがよそ見をした瞬間を狙ってまた泥を吐いてきます。しかし彼はこれを初めから分かっていたかのように回避し、間合いに近付いてオークの右腕をがっしりと握りました。
「ナッ!?・・・」
「さっきのことで俺が負けを認めるとでも思ったか? 甘く見るな、バカが・・・」
彼はそう言いながら相手に向かって鋭くとがった目線で睨み付け、相手はそれに思わずビクッと震えてしまいます。威嚇に成功すると、フィフスは次の瞬間、近くにあった窓を割る勢いで握っていたオークを投げ捨ててしまいました。
「ガァーーーーーーーー!!!・・・」
窓から外に出されて真っ逆さまに落ちていくオークの叫び声を聞き流しながらそこから走り出しました。
「これで上手くいくといいが・・・」
そして彼もそこから階段を飛ばしながら下の階へと降りていきました。
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そうこうして三体揃ってビルの外の地面に追い出されてしまったオーク達。周りの人達は事前にあった信からの指示で既にその場から逃げており、今は各々高所からの飛び降りによって体を崩した彼らしかいません。
「アガッ・・・ アガガ・・・」
「ガァー・・・ やってくれるな・・・」
「クッソォ~・・・ あの赤鬼め・・・」
フィフスと経義にやられた個体は既にダメージも回復していましたが、どういう訳かグレシアと戦っていた個体だけ一人体が大きく欠損していました。合流した彼らはまずその事に驚きます。
「お前! 一体何があった!?」
かろうじてすぐに口元が回復した彼は事の顛末を話し出そうとします。
「あ、あの青髪の女が・・・ 氷で・・・」
しかし、それを言い終わる前にその場には複数人の足音が聞こえて来ました。まさかと思った彼らが振り返ると、当然ながらそこには彼らの相手をしていた三人組でした。
「あ~あ、お前、久々に派手にやったな。」
「うるさいわね! 指示したのはアンタでしょ!!」
「俺はできるだけ早くオーク三体組を合流させろと言っただけなんだが・・・」
「見た目と同じく荒っぽいな。お前の仲間。」
「見た目と同じってどういうことよ!!?」
意気揚々と会話をしている三人にオーク達ははめられたと察しました。
「貴様ら・・・ まさか・・・」
オークの一体が質問を言い終える前にフィフスがそれに答えます。
「おお、気付いたぜ。ついさっきまではあくまで仮説だったんだが、その反応を見る感じ当たりのようだな。」
続いて経義がその『仮説』について話し出します。
「お前らは三体が同時に倒されるとダメなんだろ? だから集団でなくここに戦闘をした。そうすれば余程運がよくない限り同時にやられることはないからな。」
「気付いたのは俺なんだが・・・」
フィフスは経義が自分が考えたかのように発言することに納得しません。しかしこんな状況ではそれどころではないと引っ込めました。そして三人は剣、杖、大剣を構えます。
「とにかくだ・・・ ここに揃って貰ったからには、ケリを付けさせて貰うぞ。」
しかし、身構えている彼らを目の前にしたオーク達は残りの一体も体を再生させ切ったと同時に態度を一変させました。
「貴様ら・・・ この場に揃えれば勝てるとでも思ったのか?」
「ケケケ・・・ おめでたい奴らだな。」
すると三体のオークはそれぞれ口元を膨れさせ、それぞれが泥玉、放射炎、水砲を繰り出してきました。フィフス達は回避しましたが、十分分が悪く感じました。
『よりによってその属性かよ!!』
『アタシ達の弱点ピンポイントじゃない!!』
『だとか思ってんだろうな~・・・ こうなったら俺が・・・』
しかしそんな経義も、動かしているスーツの不調を更に感じ取れました。
『クソッ! 間の悪いタイミングに・・・』
そしてオークは経義がスーツの不調で動きが遅くなっているに気が付いてしまいます。すると数を減らすことを優先したようで、そんな彼に攻撃の目星を付けます。
「まずはお前からだ!!」
『バレたか!!・・・ イヤなことに察しがいいな・・・』
経義はすぐにその攻撃の進路から離れようとしましたが、無理矢理動かしていたスーツの不可がついに限界を迎え、スーツが固まってしまったのです。
『こんなときに!!・・・』
彼に運は味方せず、容赦の無いオーク達の攻撃は真正面に構え、すぐにでも撃ち出そうとしてきます。フィフスとグレシアはそれを防ごうとしましたが、回避のために距離を取ったのが仇となり、術を放っても間に合いそうにありません。
『マズい・・・』
『なら、アタシがまた・・・』
グレシアがまた両手に気を集中し初め、そこから魔術を放とうとします。
しかしそのオーク達の攻撃の魔の手は、別のことによって止められました。この六人から少し離れた場所から大きな声が聞こえてきたのです。
「ちょっと待ったーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
そこにいたのは、顔をこわばらせながら肩幅に足を広げて立っている鈴音でした。
「鈴音? なんで・・・」
「バカ! お前が狙われてんだぞ! さっさと逃げろ!!」
それを見つけたフィフスとグレシアがそのように諭しますが、彼女は足を震わせながらもその場から動こうとしません。それどころか二人にこう言い返してきました。
「イヤだぞ! ウチは、また何も出来ずに仲間がやられるのを見たくない!!」
「だからって・・・」
当然ながら彼女の姿を見つけ、かつ近くに誰もいないと見るやいなや三体のオークは揃って目の色を変え、我先にとその場に走り出していきました。
「自分から出て来やがって! そんなに俺達の相手がしたいか!!」
「なら、臨み通り楽しんでやるぜぇ~!!」
「お楽しみだお楽しみだぁ!!」
しかしそれでも彼女はその場から動こうとしませんでした。
「確かに、ウチに小馬ッチ達のような戦う力は無い・・・ だけど、これなら!!!」
助けが間に合わず、オークの攻撃が鈴音に当たろうと次の瞬間・・・
ヒュン!!・・・
三体のオークの腕は何かの刃物に切りつけられたかのように、同時にその腕を切り落とされてしまいました。
「「「ナッ!!?・・・」」」
オーク達はもちろんのこと、フィフス達も突然のことに何が起こったのかと目を見開きます。すると・・・
「その御方に、これ以上危害は与えさせませんよ・・・」
その声の主は、仁王立ちしている鈴音の後ろから足音を響かせて近付き、そして彼女の横に出ることで彼らにその姿を見せました。そこにいたのは・・・
「!! お前は・・・」
「いきなり切羽詰まっているとはとは思いませんでしたが、どうにか間に合ったようですね・・・」
「「ルーズ!!」」
それは、魔王国に取り残されていたはずのルーズでした。
「どうも、『異世界』ぶりってトコですかね、王子。」
<魔王国気まぐれ情報屋>
実はフィフスが先程の戦闘でハンマーを壁や床に叩いていたのは、モニターを見ている信にモールス信号で本文で出ていたオークの弱点を伝えていました。
フィフス『覚えたてな上武器でやるとかなりキツいな・・・』
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