第115話 オークの弱点?
フィフスはその考えを整理してみます。
『おかしい・・・ 前にキマイラに殺された固体は、その場で俺が鈴音と戦っていたときには一切再生の予兆を見せなかった・・・
それに、せっかくの再生能力があるなら、三人で集団攻撃をかけた方が効率もいいはずだ。なのにこいつらは互いに俺達を分断してくる。合流していると何か不都合があるのか?』
彼はそう思い立ち、目の前にいるオークが更にそこから後ずさっていくのを見逃しません。
『・・・ あくまで予想だが、試す価値はあるか。後はこれをどうグレシアと牛若に伝えるかだ。』
そんなことをしている間にオークは更に距離を取ろうとしていたので、フィフスはすぐに追い付いて剣を振ります。しかし廊下の幅が狭いせいで追い抜くことが出来ず、オークを方向転換させることは出来ませんでした。
それはもうどうにもならないので、フィフスはもう一つ考えた手に出ます。そのために彼はまたも泥のハンマーを振り回し始め、今度は何故か廊下の壁や床にも当てていく荒々しい戦い方をしていました。
「何だ何だ!? 俺を倒せないことが分かってヤケになったのか?」
それを肯定するかのように、フィフスはその場でつま先を上げて降ろして音を立てる、人が苛ついたときによくやるような仕草をしました。
「・・・」
「へヘッ・・・ どうやら当たりのようだな。」
「・・・ さあ、どうかな?」
フィフスはそう煙に巻いてまた遭遇した場所から反対方向に攻め始めました。しかしその考えには、オークには気付かれていない部分がありました。
『さて、後はドクターがこれに気付いてくれるかどうかなんだが・・・』
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その頼みの綱であるドクターこと龍子信。セレンに実質乗っ取られたいた館内のシステムを次々と制御下においていました。
とんでもない手際でそれをし続けている彼でしたが、それをしながらも復旧したカメラの映像を確認し続ける程の器用さを出していました。そうしてたった今、派手に動いているフィフスの様子を見つけました。
「おや、随分と派手にやってるね~・・・ あんまり建物を壊されると困るんだけど・・・」
しかし、少しして信はそのフィフスの動きにどこか違和感を感じました。
「これは・・・ もしかして・・・」
すると信はシステムの復旧作業を片手にし、もう一つの手でポケットからスマートフォンを取り出し、そこでおもむろに何かをし始めました。
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別地点で戦っていた経義。ヘルメット内の立体映像に何かが送られてきました。
『ッン? ドクターからか?』
経義はその内容を確認し、すぐにその画像を消しました。そして攻め立ててくるオークをかわしながら、故障した肩の部分を抑えて下がっていき、マグナフォンからレーザーを撃って牽制しました。
「お~ら、のろまの豚さんこちらだ。」
ブチッ!!・・・
「調子に乗るなよ人間風情が!! 魔人様の力見せつけてやる!!」
経義の冷めた声での挑発にオークは完全に引っかかり、彼により殴りかかってきました。しかしそれすらも経義は回避し、オークはその先にあった窓を突き破ってしまいました。当然ながらオークの体はそこから落ちていきます。
「ナァーーーーーーーーー!!!?」
それを経義は割れた窓から覗き込みました。
「単純な正確で助かったな・・・ さて、俺も降りるか。」
そう言うと、彼はビルの外壁に足を付けます。するとそこに足が張り付き、壁に立ってしまいます。そして彼はそのまま研究所を駆け下りていきました。
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そして残りの一体のオークと戦っているグレシア。そこに勝手に電話がかかってきました。
「やあ、志歌君。そっちかはどうだい?」
電話を取った訳でもないのに話しかけてきたこと彼女は驚きます。
「ナッ!! どうしてアタシの電話番号知ってんのよ!? しかも勝手に通話まで・・・」
「君は僕が渡したスマホを使わなかったからね。昨日寝ている間に少しいじくらせて貰ったよ。」
「しょうもないことを話すなら切るわよ!!」
「まあ待ってくれ、さっき五郎君から一つ提案が来た。それに伝えにね・・・」
「フィフスから?」
グレシアはそのスマホから聞こえる小さな声での指示を聞き取りました。
「・・・ なるほどね、分かったわ。ま、どっちにしろこの場をどうにかしなきゃね。」
グレシアはそれを承諾すると、信は通話を切りました。
「ドクター・・・」
「なんだい?」
「ちょっと荒っぽい手を使ってもいいかしら?」
「? まあいいけど、できるだけ館内は壊さないようにしてくれよ。」
「OK・・・ なら・・・」
信からの取りあえずの許可を貰ったグレシアは、何故か杖を脇差しのケースにしまってしまいました。それを見たオークは余裕そうに聞いて来ます。
「どうした? 俺の物になる気にでもなったか?」
するとグレシアは己の両手を肘を曲げて自身の目の前に持ってきます。するとその手から杖から出ていたものと同じ冷気が流れ出てきました。そして・・・
「・・・ 気をつけてよ・・・」
「あ?・・・」
オークが彼女の行っていることに全く理解が出来ず口を開けて首を傾げていると、彼女は両手を見ていた目線を相手を睨み付けるように見上げる風に上げました。そして・・・
「もうここからは・・・ 手が減出来ないから・・・」
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その直後の信。未だに作業中の彼でしたが、一瞬だけ大きな音を響いたことでキーボードを打ち続けていた両手が止まってしまいました。
『あ~・・・ 志歌君だな・・・ やっぱり許可するのは軽率すぎたかな?』
彼はついさっきの自分の行動をいきなり後悔することになりました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
・この戦いでハンマーに目覚めたフィフス
フィフス「ハンマーを相手の顔面にシューーーーーート!! スーパー!! エキサイティング!!!」
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