第113話 三度あることは四度ある
ピンチになっていたフィフスとグレシアに、サードがやって来ました。それを喜ばしく思うグレシアと違って、フィフスは完全に嫌そうな顔になっています。
「何よ? せっかく来て上げたのにそんな顔して・・・」
「なんで姉k・・・ 姉上がここにいるんだよ?」
サードは二人の前に出ながら、ここに来た理由を話しました。
「・・・ ウリーちゃんに頼まれたのよ。メールで現状を教えてくれたわ。」
それを聞いてフィフスはハッとなります。
「『私にはこのくらいのことしか出来ないから・・・』って書いてあったわ。なんだか知らないけど、アンタ何か酷いこと言ったんじゃないの?」
『アイツ・・・』
フィフスはそれを聞いてドキッとし、その隣のグレシアは彼に向かって冷たい視線のジト目を向けます。彼は何も言えないものの、既に不安を感じました。すると痺れが回復したセレンが立ち上がり、話しかけてきました。
「何よ加勢? それも獄炎鬼の姉ってことは・・・ あの『海賊姫』って奴?」
「あら、異世界の魔人にも知られてるって、アタシも結構有名人になったのね。」
「元々国の王女だからな・・・」
「うるさい!!」
サードは手に持っていた魔石をなおし、腰に差していた二刀流のもう一方の剣を抜きました。
「さてと・・・ この愚弟は後で始末するとして・・・ 」
『今、しれっと死刑宣告されたような・・・』
サードは右手に持っていた剣の先をセレンに突き出し、キツい目付きをしてこう言いました。
「先にアンタの方ね!!」
「サード姫・・・」
すると次に二人はサードからこんなことを言われました。
「さっき信って男に電話したらこんなこと言ってたわ。三体のオークが階段付近で戦わせていた部隊を突破したようよ。」
「「ッン!!」」
それを聞いて二人は目を丸くしました。
「そっちに向かった方がいいじゃない?」
「・・・そのようだな。グレシア!」
「分かってるわ!」
グレシアは杖から霜を発生させて彼女とフィフスを隠し、霜が消えると共に二人の姿もそこから消えていました。セレンは不機嫌そうにしますが、すぐに切り替えました。
「フン、いいわ。どうにしろ今のオークは、アタシの血で強化されているわ。ちょっとやそっとじゃ潰されないわよ。」
それにサードも同じ調子で返します。
「そう・・・ でも思い違いをしない方がいいわ。あのバカやそのお友達は一筋縄じゃいかないわよ。その隠している腕のようにね。」
セレンはバレてたことに嫌な顔をします。それならとサードに見せた彼女の手は、まるで切り取られたかのように手首までが無くなって、その先は水面が張ったように見せていました。
「じゃあ邪魔者もいなくなったし・・・
・・・ 派手にいくわよ!!」
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そしてオークの進むであろう道にフィフスとグレシアが走っていると、ある曲がり角にて同じく向かっていた経義と合流しました。
「牛若!!」
「お前ら!! 見た感じお前らもオークのことを聞いたのか。」
「ああ、ドクターからな。 ・・・って、あれ?」
フィフスは彼の後ろに自身の鞄を背負った鈴音がいることを見つけます。
「なんで鈴音まで連れてきた!?」
「元いた場所にカオスが現れた。弁に見張らせてるがそこにいさせる危険だと思ってな。」
「仮面野郎が!!?」
それを聞いた二人は、カオスに裏をかかれていたことに気付き歯がゆい顔をしました。
「やっぱり油断ならないわね・・・ あの男。」
「とにかく今はオークが先だ。カオスが現れたのは、鈴音の場所も知られていたからだろう。今から別の部屋に移して・・・」
その経義の提案は、次のグレシアの言うことによってバッサリと切られました。
「・・・ どうやら、そうしてる間は無いようよ。」
その暗いトーンの声に場の全員が気を張りました。そしてそれはすぐに動きます。何故なら、その廊下の一方向から、この前フィフスと鈴音を襲ったのと同じ泥の塊のような攻撃が飛んできたのです。
真っ先に当たる位置にいたフィフスは術が使えないため、剣の刃で受け止めました。しかしその直後に彼は自身の剣に違和感を感じて見てみると、さっき刃についた泥が固まり、ちょっとしたハンマーのような形になってしまいました。
「なんじゃこりゃ!!?」
「あらら・・・」
「自慢の剣が台無しね。」
フィフスはグレシアから言われた言葉に反応すらせずに棒立ちしています。
「剣の泥と同じくらい固まってんぞコイツ。」
「よ、余程ショックだったのか・・・」
するとその方向の奥から泥を放った張本人の声が聞こえてきました。
「ケッヒッヒッ・・・ ターゲットはっけ~ん!」
それを見てグレシアと経義は武器を構えますが、フィフスはさっきから一切ポーズが変わりません。
「ちょっとフィフス! 凹んでないでアンタも構えて!!」
「オッオッオ!? そこの赤鬼さんは戦意喪失ですか~?」
更に挑発をかけてくるオークに、フィフスは剣を持った腕を下ろして、いつもとはどこか違うトーンの声で口を開きました。
「・・・ お前がやったのか?」
「ほ~・・・ だったら?」
オークがそう言った次の瞬間、フィフスは瞬間移動ほどではないものの素早い動きでオークの間合いに入り、固まった泥をまさしくハンマーのように振り当てて殴り飛ばしました。
「グホッ!!・・・」
吹っ飛ばされたオークは仰向けに倒れ痛がっています。
「ほう、思っていたより使えるな・・・ これ。」
フィフスは体勢を崩しているオークを見下ろすようにそう言いました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
サードは信から『小馬 三琴』名義で住民票を作って貰い、現在マンションの一室を借りて一人暮らしをしてします。
これはフィフスが、彼女が町田家にいると瓜にベタベタし自分を尻に敷いたげることを防げれるように信に頼み込んでやって貰っています。
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