第112話 攻撃が効かない!!
視点が戻ってフィフスとグレシア。二対一でありながら、戦況は敵に有利になっていました。いた戦っているセレンには、何故かこちらの攻撃は通じず、逆に向こうの攻撃はこちらに届いていました。
『コイツ、どうなってんだ!?』
戦闘慣れしているフィフスやグレシアにとってしても、彼女の攻撃は見慣れないものでした。
同じ魔人であるとはいえ、種族独自で別の国を気付いていた彼女達『人魚』のことについては、国通しがお互い無干渉だったがために情報が不足していたのです。そのため、今仕掛けてくる彼女の攻撃は二人にとっても未知の攻撃でした。
『最初に水砲を魔石無しでやってのけたのを見ると、あれも『水流術』の類いなんだろうが・・・』
『でも、相手の攻撃を通さないって・・・ 体を変形させてるって事?』
『てことは・・・』
しかしセレンは二人に対策を考えさせる時間など与えるわけがなく、すぐにまた両腕を伸ばしてきました。
「固まってんならすぐ潰れるわよ!!」
「ケッ! 空気の読めねえ女だな!!」
フィフスはそれを腕で受けるとマズいと思い、鞘から剣を引き抜いて腕を受けました。対するグレシアは杖から氷の壁を出してそれに当てて防ぎます。
『フ~ン・・・ 結構速めに撃ったんだけど、どっちも防いだか。 でも・・・』
セレンがニヤつくと、二人が受けていた手が透明になり、そして形を変えて広範囲に広がり、一部形を鋭利に固めて二人に迫っていきました。
『クソ、せめて術が使えれば・・・』
『なんて思ってんでしょうね・・・ ならアタシが・・・』
グレシアは向かってくるセレンの腕に持っていた杖を差し込みました。当然それだけでは何も起こりませんが、彼女はその杖から氷を放つことでセレンの腕を凍らせてしまいました。
「冷たっ!!・・・ 何を!?」
向こうに意識が向いたことで操作性が悪くなったのか、フィフスの方の攻撃は速度が遅くなり、彼はそれを見逃さず腕をかわしてセレンの間合いに近付きました。
ある程度近付くとセレンの方も彼に気付き、問いかけます。
「懲りないわね! さっきので攻撃したって無駄なのは分かるでしょ!?」
「だろうなぁ・・・ だから・・・」
「こっちが本命よ!!」
そのとき、いつの間にかグレシアが右手に硬い氷をまとわりつかせ、既に凍っていたセレンの片腕を殴りつけました。
「クッ!!・・・」
「効くようね。やっぱりそういうこと?」
攻撃が通したことでひるむセレンに、フィフスがその片腕に『犬牙』を食らわせました。
「ガッ!!・・・ やってくれるわねぇ・・・」
「お前の術は、自分の体の一部を水に変えることが出来ることだろ。だからその形状を変えることでパンチを飛ばすことが出来たんだろ!」
「ならば、固めてしまえば同じ事!!」
二人はダメージを受けているセレンに一気に畳み掛けようと、揃って雉突きを仕掛けました。しかし・・・
「な~んちゃって。」
セレンはその一言を言うと、途端に全身をさっきの腕と同じように透明にして形を変えました。その上凍っていた部分を外し、二人の間をくぐり抜けてまた実体化しました。
「残念だったわね。形を変えられるのは全身同時も可能なの。」
そう調子よく言っているセレンですが、相手の二人は彼女が誤魔化そうと片腕を後ろに隠していることに気が付きました。
「何故手を隠す?」
「そんなことより、足下気にしたら?」
セレンにそう言われ下を向くと、いつの間にか彼女は両足の一部を水に変えて、彼らの周囲に水の膜を張っていました。
『しまった!!』
「ま、気付いたとこでもう遅いけど。」
そしてセレン自身の下半身をそのまま水に変形させながら張った水から氷柱のようなものを飛び出させ、フィフスとグレシアに差し込もうとしてきました。
「これで終わりね!」
セレンは勝利を確信し、フッと笑いながらそう言いました。
「それはどうかしらね。」
突然聞こえた知らない声にセレンはその向きに顔を向けると、そこから閃光が迫ってきました。
「何!?」
それがセレンの体に当たった途端・・・
「ガァーーーーーーーーーーーーー!!!!・・・」
彼女は体から猛烈な痛みを感じ、変形していた体を戻してしまいました。それによってフィフスとグレシアはどうにか難を逃れました。
「ハァ~・・・ ハァ~・・・ 今のは・・・ 雷鳴術?」
息を荒くする彼女に、またその方向から声が聞こえてきました。
「あ~あ・・・ せっかくこの世界の文化を満喫していたのに・・・ やっぱり、出来の悪い弟なんて持つもんじゃないわね~・・・」
「その声は・・・」
その声に聞き覚えがあり、尚且つそれが誰か分かった二人は、グレシアはただの驚きの表情をしているのに対し、その隣にいたフィフスはだらしなく口を開いてドーンと目元が重くなり、あからさまに嫌そうな顔になりました。
セレンはまだ痺れが抜けきれない中、向かってくる相手に小糠を放ちました。しかし、それも向こうから来た放射炎によって水が蒸発され、防がれてしまいました。
「酷い歓迎の仕方ね。どうせやるならもっとおおっぴらにやりなさいよね。」
その声の主はとうとう三人に姿が見える距離に来ました。それは大方の余素通り、赤い魔石を持ったサードでした。
「ヤッホー、フィフス。美人のお姉様が助けに来たわよ。」
サードはそう言ってニッと笑ってみせました。
・セレンとの戦闘中にフィフスが思った事
腕を伸ばしての攻撃に対し・・・
フィフス『あれはまさか! 某少年漫画の最初の技!!? 実際に出来る奴がいたのか!!!』
フィフスが何と勘違いしたのか考えてくれると嬉しいです。
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