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第110話 坊ちゃんの決意

 鈴音はカオスの姿を見て、始めに思った事を口に出しました。


 「夢の中で出た魔人・・・ お前が、カオスか?」

 「おや、名前を知っているのかい? ・・・そうか魔王子君だな。彼から教えて貰ったんだろ。」

 「魔王子魔王子って、何のことを言っているのだ!?」

 「あらら、聞いてはいないんだね。よいしょっと・・・」


 そのままカオスが彼女に近付こうとすると、鈴音の後ろから突然人影が現れ、それはカオスに武器を振り下ろしてきました。しかし彼は軽々とかわし、距離を取ります。


 「あっぶないなぁ~・・・ なんだ、君もいたんだ、坊ちゃん。」


 それは、直り立てのスーツを着た経義でした。


 「念のために張っておいて正解だったようだな。」


 経義は鈴音を下がらせながらカオスに隙を与えずに攻撃を仕掛けます。しかし残念ながらそれは全て回避されてしまいました。


 「怖いことするな~・・・ どうして君がここにいるの?」

 「例の赤鬼がどうにも用心深くてな・・・ 進言してくれたんだよ。」

 「小馬ッチが進言? やっぱり何かあったの!?」


 心配する鈴音の様子や、さっきの経義の言うことを聞いてカオスは一つ気になることが出来たのか、二人に聞いてきました。


 「変なもんだな~・・・ 二人とも魔人に復讐したがったのに、その魔人を心配したり、信用したりするなんて~・・・ それも、よりによってあんな大罪人に。」


 二人はカオスが最後に言った事に大きく反応しました。


 「大罪人?」

 「小馬ッチが?」


 その反応を見てカオスは彼らがその事を知らないことに気付き、面白そうに説明し始めました。


 「そっか聞いてないのか。なら教えてあげるよ。彼の本当の名は『フィフス』、異世界で多くの魔人を輩出している『魔王国』の第三王子。そして・・・」


 カオスは一番印象を強める言い方で最後にこう言いました。


 「・・・二年前、二百人の人間をたった一人で殺した大罪人、『獄炎鬼』だよ。」

 「ごく・・・ えんき・・・」

 「魔人の国の王族、それも罪人、か・・・」


 カオスは手を叩いて話をまとめようとしました。


 「そ、だから彼は君らが憎む魔人の象徴なの。だから彼を信じるのはどうかと・・・」



 ブンッ!!!


 そんな彼の話を切り上げたのは、魔人嫌いだったはずの経義の剣でした。カオスは驚きながらそれを後ろに引いて回避します。


 「どうしたの? ブチギレて反射的に動いちゃった?」


 経義は床にたたきつけたその剣を引き抜くと、静かな声で話し出しました。


 「・・・ 確かに、アイツは人をからかい、殺すと決めればすぐに相手を殺すような奴だ。俺も数時間前までは、アイツを殺そうと考えていた。」

 「・・・ (よろい)さん。」

 「変なあだ名やめろ!」


 鈴音にの言葉に突っ込んで途切れてしまいましたが、すぐに彼は調子を元に戻します。そこにまたカオスからの質問が来ました。


 「じゃあ何で、彼と協力しているのさ? 憎いんだろ、『魔人』が。」


 「ああ、俺はガキの頃に母さんを魔人に殺されて、以来アイツらを撲滅するために戦ってきた。これからも基本的にお前らと戦う気は変わらん。なんせ憎いからな。」


 「そう、だったら・・・」


 「だが、どこかしらの変な女が、体を張ってまで教えてくれたんだ。そんな魔人にも、良い奴がいるってことをな。」


 「女?」

 『もしかして・・・』


 鈴音は頭の中に瓜の姿が思い浮かびました。


 「大した奴だ。普段はビビって何をしないくせに、『友達』の魔人がピンチになった途端、人が変わったかのように動いちまう。この俺に説教するほどにな。」


 「だからなんだっての?」


 「だから・・・





  ・・・ 気が変わった。アイツの根性に免じて、あの赤鬼や雪女のことは見逃すことにしたんだよ。」


 「随分勝手だねえ。それって結局、君の機嫌次第で魔人の判別をするって事だよね。」


 「勘違いするな。俺はアイツらと協力するだけ。信用はしない。それが、母さんの目的だった・・・」


 経義は先程弁から言われた事を思い出しながらこう言いました。





 『人を守る』ってのに、繋がるはずだからな!!」





 経義から出た予想外の返答を聞いて、カオスは大笑いしながら受け取りました。


 「ハッハッハ!! コイツは面白い!! 魔人狩りが、魔神と手を組むなんてね・・・





  ・・・ こんなにアホな事はない。」


 そう言いきると彼は瞬時に自分の左手に黒い魔道書を出現させ、ページを開いてその魔法陣に右手で触れました。これを見たことがなかった二人が警戒をしていると、その周囲を囲むようにウォーク兵が現れました。


 「コイツは! 病院に出て来た人形!!」

 「そこのお嬢ちゃんは痛めつけさせて貰うよ。生憎これが仕事でね。」


 そこからカオスが高みの見物を決め込み始めた頃合いに経義はウォーク兵達との戦闘を始めました。しかし後ろにいる鈴音を庇う上、この狭い場所では大剣は振りづらく、そこでも縦横無尽に動き回る相手に苦戦を強いられました。


 カンッ!! カンッ!!


 彼が敵の槍攻撃を武器で受けたとき、着ているパワードスーツから『キシッ!!・・・』という変な音が響きました。


 『クッソ! ドクターが忠告してたのがもう来たのか!!』


____________________


 「分かっていると思うけど、一日であのダメージを修復するのは無理だ。あくまで急場しのぎだから、無理はしないでくれ。」


____________________


 そう、今の彼のスーツは、キマイラから受けた損傷の整備を終えきれておらず、装甲の強度は低くなって、ダメージを受ければいつ壊れるか分からない状態だったのです。


 『雑魚の攻撃でもここまでか・・・ これは長丁場は出来なさそうだ・・・』


 しかし彼の思いと反比例するように、事態は更に悪くなりました。


 『あれれ? この前のオークの時より動きぎこちないような・・・ もしかして、そういうこと?』


 彼の様子を見ていたカオスが、スーツの異常に感付いたのです。当然彼はそれを利用しようと、ウォーク兵達に指示を送りました。


 「ウォーク兵! 全員同時に畳み掛けて!!」


 経義はカオスがそう言った意図を察します。


 『まさか、スーツの異常に気付いたのか!?』

 「鎧さん?・・・」


 後ろからの鈴音の心配にも気付けず、経義はウォーク兵達の攻撃の対処法を考えていました。しかしそれが完了する前に、ウォーク兵達は一斉に二人に突撃してきました。


 『マズい!!・・・』


 経義は彼女を庇おうと動きますが、間に合いそうにありませんでした。



 バンッ!! バンッ!!



 するとそこに、実弾の銃声音が響いてきました。困惑する鈴音とカオスに対し、経義はこれが何を意味しているのかに気付いていました。


 そして彼は一度息をついて立ち上がり、その銃を撃った相手に声をかけます。


 「遅いぞ、弁。」


 「申し訳ございません、準備に手間取ってしまいまして・・・」


 その相手とは、二丁拳銃を装備した弁でした。


 「そこの魔人殿・・・」


 カオスは不意に声をかけられたことに反応します。


 「なんだい?」

 「先に言っておきます・・・






  ・・・ いきなり銃を撃ったのは失礼だった、謝る!!」


 そう言って弁はペコリと頭を下げました。


 「・・・ ハァ!?」


 カオスは思わぬ一言にそう答えざる終えませんでした。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・その頃の鈴音


 屋敷の掃除中に突如ハッとなる。


「ッン!! 若様の周りに女の気配がします・・・」


 そう感じて彼女は持っていた箒の持ち手を握り潰す。




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