表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/344

第106話 魔人は敵じゃない!!

 翌日、また研究所にて朝を迎えた鈴音。両親の見舞いに行こうにも出来ない事にもどかしさを感じ、暗い表情をしていました。先に起きていたフィフスとグレシアは部屋の外からそれを見ています。


 「落ち込んでやがるな。」

 「色々悪いこと続きだもん。無理もないわ。」


 それを更に後ろから見張る経義。こちらの視線はかなり厳しいです。


 『二人まとまって警戒を緩めている。そして周りには誰もいない・・・』


 どうやら、彼は未だに二人の命を狙っていたようです。彼はマグナフォンを銃状態にし、物陰に隠れながら構えています。


 『よし、今なら・・・』


 そして経義はその銃をフィフス達に撃ち込もうと銃を向けました。しかしそれは突如自身の後ろから伸びてきた手に掴まれて止められてしまいました。


 「誰だ!?」


 彼は抑えてきた腕をすぐに掴み上げて引き、声を出しながら首を向きました。するとそこには、殺気のこもった目で見られて震えている瓜がいました。肩の上のユニーも彼を睨んでいます。


 「お前は、赤鬼の・・・」

 「じゅ、銃を・・・ しまって・・・ くださぃ・・・」

 「何だお前? 言いたいことがあるのならハッキリ言え!」


 経義はそんな瓜に付き合う気など毛頭なく、彼女の腕を引き払って再びフィフス達に狙いを定めました。しかしそれはまた瓜によって止められてしまいます。


 「や、やめてください!!」

 「クッ! 邪魔をするな!!」


 ここで一悶着が起こったことで、鈴音を見張っていたフィフス達も流石に何か違和感を感じます。


 「何の音だ?」

 「話し声?」


 『マズい!!』

 「ムグッ!?・・・」


 二人の足音が近付いてくることに気が付いた経義は、咄嗟に瓜の口を押さえ、そこから立ち去りました。


 そこについたフィフス達が見たのは、地面に落っことされて目を回していたユニーでした。


 「ユニー?」

 「てことは、瓜が!!」


 フィフスはすぐに自分の体を確認します。しかしどこにも電撃は流れていませんでした。


 「まだ近くにいるはずだ。探すぞ。」

 「うん・・・」


 二人はすぐに瓜を探しに館内を走り出しました。その途中である人物をすれ違ったことも気が付かずに。


 『フフ、甘いわねあの坊っちゃん、『復讐』っていうのは、感情的になったらダメなのよ・・・』


____________________


 その頃、経義は瓜の首を持ってを壁に突き付け、怒鳴りつけます。


 「何なんだお前は!! どうしてそこまで邪魔をする!!?」


 瓜は苦しい表情を浮かべながらも必死に答えます。


 「わ、私は・・・ 友達を・・・ 守、ろうと・・・」

 「『友達』だと!? ふざけるな!!」


 経義は躍起になって首を絞める手の力を強めます。


 「カハッ!!・・・」

 「魔人が人間の『友達』になど、成るはずがない。たとえそう言ったとしても、その場しのぎの嘘に決まっている!!!」

 「なんで・・・ そんな、こと・・・」


 彼は険しい顔を近付け、怒声を彼女に浴びせ続けます。


 「魔人って言うのはな・・・ あんな奴らは一人残らず情なんてない!! 全員人殺しを快楽にして、当然のこととしているようなクソどもだ!!」


 瓜は経義から次から次へと出てくる罵倒を受けて、魔王国で聞いた『獄炎鬼』の話を思い出しました。


 『そんな言い方・・・』

 「そんなやつは全て殺す!!」





 「勝手なことばっかり言わないでください!!!」

 



 次の瞬間、瓜は珍しくカッとなり、叫び出しました。彼女から来た反撃に驚き、手の力が緩んで彼女を解放しました。瓜はむせながらも、そこで怒り出します。


 「何を・・・」

 「確かに・・・ 悪事を平気でするような魔人達もいます。私も、何度もそれを見てきました。でも・・・




 フィフスさんや志歌さんは、何度も人間の私を助けてくれたんです!!




 一視点だけで・・・ それだけで、魔人の全てを決めつけないでください!!



 魔人は・・・ 私の、大切な友達なんです!!!!」



 瓜からの思わぬ反撃に、経義は完全に何も言えなくなってしまいました。そこに瓜からもう一言付け加えられました。



 「貴方のやっていることは!! 悪い魔人と同じです!!!!」



 「!!!」


 その言葉は経義の胸にとても鋭い針のように突き刺さりました。その事で彼は一周回って怒りが混み出し、無意識のうちに拳を握りしめて殴りかかろうとしてしまいました。瓜はそれに気付かずに咳き込んでいます。


 しかしその拳はまた誰かの腕によって掴まれて止められました。


 「クッ! 今度は誰だ!?」

 「おやめください、若様。『牛若家』の威厳を失墜させるおつもりですか!!」

 「弁!!・・・ なんでここに・・・」


 それは屋敷にいるはずの弁でした。後から出た話によると、経義が魔人嫌いから暴走するのを予想していた使用人二人が、念のため代わりばんこに日ごとに見に来ていたようです。


 すぐにそこに足音が聞こえて来た弁は、今フィフスと彼が対面すると状況がより悪くなると思い、申し訳なさそうに瓜に一礼した後、経義を引っ張って部屋から出て行きました。


 その少し後に必死な様子のフィフスが入ってきました。グレシアとは手分けして彼女を探すために離れたようです。


 「いた! 瓜、瓜! 大丈夫か!!?」


 瓜はさっき無理に大声を出したことで更に喉を悪くし、地面に突っ伏しまだ咳をしていました。フィフスはすぐに駆け寄り、声をかけ続けます。それに彼女は弱々しくこう答えました。


 「だ・・・ 大丈夫・・・ です・・・」

 「その感じ、なんかあったんだろ! 無理するな。」


 しかしフィフスが更に問い詰めても瓜は返答を変えませんでした。彼女なりに、経義のことを気遣っていたのです。フィフスは瓜に何かあったことはすぐに気が付きましたが、彼女の意思を尊重してすぐに聞くのをやめました。


 「そうか・・・ ま、どっちにしろお前は休んだ方が良さそうだな。」


 すると、彼の肩に乗っていたユニーが涙を流しながら瓜に飛び込みました。


 「アハハ・・・ 心配・・・ かけちゃいましたね・・・」


 瓜はふと気を落ち着かせて作り笑いをしました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・マグナフォン


 信が開発した量産武器件通信機。経義と同じ転送システムによって、エネルギーが自動的に充電されるため、基本的に弾切れを起こさない上、通信が途中で切れることもない。


 銃携帯では特定のコマンドを打つことで銃弾とレーザーを使い分けて発射する。必勝武器には威力が足りないが、小回りがきくので重宝される。





 よろしければ、『ブックマーク』、『評価』をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ