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第105話 人魚の脅威

 それからグレシアはフィフスに頼まれて彼を抱えながら、信のいる研究所に向かっていくことになりました。そんな仲で彼女は気になったことを聞いてみました。


 「どうしてそんなんになってまで、アタシの戦いを止めたの?」

 「単純なことだ。状況が思っていた以上に悪くなっていることを報告し解きたくてな・・・」

 「悪くなった? それって・・・」

 「瓜達と合流したらそこで話す。今は休ませてくれ・・・」

 「だったら魔術を使うなっての。」

 「声かけただけで止まらねえだろ。お前は・・・」

 「うっさい・・・」


 そこからグレシアはしゃべるのをやめて歩き続けました。その間、フィフスはどうでも良い思考がよぎります。


 『にしてもコイツ、軽々と俺を担げてる時点でJKの力じゃないだろ・・・』


____________________


 「人魚が今も存在している!!?」

 「・・・おぉ、らしいぞ。」


 疲れてベンチに座り込んでいる姿でフィフスはそうハッキリと言いました。


 しかしせっかく集まりながらも、最初にフィフスが言った一言に大きく反応したのは、同じ異世界から来グレシアだけでした。残りのメンバーはどう反応するべきか悩みながらも、把握したさを優先した信がすぐに聞きました。


 「人魚って、前に五郎君が言っていた『血』のことかい? 確か、あれば驚きともいっていた・・・」

 「ああ、俺達がいた世界で、裏社会に流通していた血だ。飲めばたちまち瀕死の重症も回復してしまう。」

 「それなのに、何故人魚が生きていることには驚くんだい? 人魚が生きているからこそ手に入るのでは?」


 フィフスは彼から聞かれたことにむず痒そうしていると、代わりにグレシアが答えます。


 「確かに人魚の『血』は手に入るわ。でも、それは人間が人魚達を殺しまくったからよ。見つかった遺体は、全部血を抜かれて干からびていたらしいわ。」


 彼女が語り始めたのを見て、フィフスも気が進まないままに話し出しました。


 「その当時のことは、異世界に置いてかなり大きな衝撃を生んだ。なんせ人魚を狩れたんだからな。」

 「人魚を狩れたのが、どうしてそんなに凄いんだ?」

 『私も、気になります。』


 フィフスは一度息をついて話の本題に入りました。


 「ここからが問題だ。人魚の連中には、敵に回すとトップクラスに面倒な能力があるからな。正直未だに、どうして人間が奴らを殲滅できたのか俺達も分からん。」

 「その能力ってのは?」


 経義からの返しに、フィフスとグレシアは代わりばんこになって答えます。


 「洗脳よ」

 「それもこないだの化けゴウモリなんて比にならないレベルのな・・・」


 「化けゴウモリの時以上のだと!!?」

 「それは恐ろしい話ですねえ・・・」

 「そうだ、だから・・・」



 「「「「「!!?」」」」」


 そのとき、経義と信以外の五人が、この場で聞き覚えのない声を聞いて、一斉にその方向を目を見開いて振り向きました。


 「あ、どうも皆さん。お話し中にすみません。」


 そこいは、いつの間にか部屋に入ってきていた静が、小さめの鞄を持って立っていました。彼女とは初対面の平次とグレシアは、誰コイツとでも言いたそうな顔をしてフィフスを見ます。


 「あ~・・・ そこの坊ちゃんのメイドだ。」

 「若様にお食事をと・・・ お邪魔でしたか?」

 「いい、そこに置いておけ。」


 経義は場を少し凍らせたことに腹を立てながらも、彼女も座らせてあげようと自分の座っていた隣の椅子を勧めて座らせました。そしてフィフスはわざと咳をして話を戻します。


 「ッン、ンン!! 話を戻すぞ。さっきも言ったとおり、『人魚』は相手を洗脳させる。歌を歌うことによってな。」

 「『歌』、だと?」

 「人魚が歌う歌にはものによって細かい催眠術がある。軽く体を動かすものから相手の意識を完全に奪っちまうもの、果ては記憶もそのままに体だけ意のままに操られることまである。」

 「それって、つまり・・・」


 次にフィフスぎったことは、皆に十分事の重大さを伝える事が出来ました。







 「・・・いくらでも個人情報はダダ漏れになる。今回人気ヤーリューバーをピンポイントで襲えたのも、それでなら説明がつく。」







____________________


 その頃、カオスはそのオークが言っていた『人魚』の女である『セレン』のもとに来ていました。


 「何のよう?」

 「オークが貴方のことを敵に話しちゃったみたいで。」


 それを聞き、セレンは仮面越しに不機嫌な顔を浮かべます。


 「そう・・・ せっかく復活させたのに、やっぱバカに仕事を任せたのは失敗だったようね。アイツら、仕事にかまけて女によってばっかするし・・・」

 「まぁ、それは彼らの本能ですから・・・ 頭ごなしに否定するのも良くないですよ。」


 カオスは笑いながら返答します。するとセレンはその座っているところから突然立ち上がりました。


 「まあいいわ。バレたんならもう隠す必要もないし、こっちから出向いてあげようかしら。」

 「よろしいんですか? 貴方が暴れたら派手になりすぎるんじゃ・・・」

 「大丈夫よ、どうせこの世界の人間は臆病だもん。多少やっても勝手に誤魔化してくれるわ。」


 カオスはそれを聞いて確かにそうだと笑いましたが、すぐにまた質問をしました。


 「しかし、今彼らがどこにいるのか分かるのですか?」

 「そこら辺はもう分かっているわ。それも、例の女も一緒にね。」

 「フ~ン・・・ だってさ、良かったね。」


 カオスがそう言うと、いつの間にか二人の上の屋根の上に三体のオークがニヤつきながらしゃがみ込んでいました。


 「そいつはありがたい。」

 「今度こそあの女で発散させて貰うぜ!」

 「俺はあの魔女の方だな!!」


 カオスとセレンは三体を見上げます。


 「じゃ、鬱憤晴らしに暴れて貰おうかな。」


 カオスは機嫌良く三体にそう言い、それを聞いたオーク達の笑い声が響き渡りました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・人魚


 かつて魔王国とも違う独立した国家を持っていた種族。戦闘力もさることながら、セカンドとはまた違う心歌術を歌うことで、近付いてくる外敵を洗脳して返り討ちにしてきました。


 その血は回復薬として非常に強力であり、これを目当てに人間は彼女達を狙っていました。



 一説には、ある人魚の恋が破滅を招いたと言われていますが、真相は不明です。




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