第104話 三匹のオーク
そして逃走中のフィフスと鈴音。しかしフィフスはそこで足を止めてしまいました。それによって止められた鈴音はキョトンとします。
「小馬ッチ?」
「・・・ 来る。」
「えっ・・・」
すると次の瞬間にフィフスは彼女を巻き込んで身を捻り、正面から来た泥の塊のような攻撃から鈴音を守りました。
「チョッ!!?・・・」
「悪い、今はこうするしかなかったんだ。」
するとそこに、鈴音には聞き慣れない声が聞こえてきました。
「ヒューヒュー、お熱いね~、お二人さん。」
さっきのフィフスの行動と言葉からまさかと思った鈴音は、彼の肩に隠れていた視界を背伸びをすることで戻しました。その目に映ったのは、さっきのものとは少し痩せているオークでした。
「なんで! もう一体!?」
「クッソ、やっぱそういうことか。」
しかし悪夢はこれでは終わりません。今度は今二人が立っているところに、水の束のようなものが上から振ってきました。
「おいおい、ドッキリにしては度が過ぎてるぞ・・・」
フィフスは鈴音を抱えたままバックステップをすることでどうにか回避します。その少し後に、さっきまで二人がいたところに、技を放って来たであろう犯人が降りてきました。
「違うよ、アイツらはカップルじゃないよ。」
それは他の二人とまた少し姿の違うオークでした。
「これって一体・・・」
状況が分からない鈴音に、フィフスは説明しました。
「さっきドクターから返事が来たことだ。俺と牛若が最初に戦ったオークは頭が三つのキメラだった。それが再戦したときには一つになっていてな。前からそれが気になってたんだ。」
「つまり・・・」
「どういう理屈かは知らんが、元の姿に分離したようだ。」
二人の会話を聞いていたオークの一人が答えました。
「その通り。我らは君によって倒された後に、ある御方の力によって本来の姿で蘇ったのだ!!」
「ある、御方?」
「おい、それってカオスが人魚の血を持ってることじゃないのか!?」
「カカカ! 君はそう思っていたのかい? まぁ無理もない、彼女はとっくに絶滅したと思われていた種族だからなぁ・・・」
フィフスはオークの言っていることに目を見開いて反応します。鈴音はそんな彼を見て何かただならぬ事を感じました。
「・・・ 『人魚』が、生きてるってのか!?」
「へヘッ・・・ だったら?」
次の瞬間、フィフスは戦闘態勢を解いて 地面に手を触れます。前と同じく小さな赤い魔法陣が発生し、それが大きくなって、その上からユニーよ瓜を召喚しました。
「ユニー、悪いが俺らを乗せてここから逃げてくれ!!」
「フィ! フィフスさん!!?」
またも突然呼び出されたことに瓜は場の状況が読めませんが、ユニーはその逆だったようで、すぐに体を大きくします。
「おっと・・・」
「逃がすわけないだろおが!!」
二体のオークはすぐに魔術を撃とうとしましたが、それを読んでいたユニーの瞬間移動によって腹を蹴られました。
「ウグッ!!?・・・」
「ウゴッ!!?・・・」
『何だこの魔獣、速っ!!・・・』
攻撃にひるんだ隙をフィフスは見逃さず、残り二人の手を引っ張ってユニーに乗せました。
「小馬ッチ!?」
『何がどうなってるんですか!?』
「詳しい説明は後でする。ユニー、こいつら逃がしといてくれ。」
ユニーはコクリと頷きますが、瓜は当然フィフスに聞きます。
『フィフスさんは?』
「もう一人いるからな。そっち終わらせてすぐに合流する。」
『まさか、瞬間移動を! ダメですよ!! 今やったら・・・』
「なりふり構ってらんねえだろ。」
そうフィフスが言った次の瞬間、彼の姿はその場から消えました。
「小馬ッチが消えた!?」
瞬間移動を見るのが初めてな鈴音は驚きを声に出しますが、瓜はこの後のことを悟ってうつむいてしまいました。ユニーはそんな二人を乗せて、素早くその場を後にしました。
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ドンッ!! ドガッ!!
その頃、グレシアともう一体のオークは白熱した戦いを見せていました。
「クッ! 中々行かせてもらえないわねえ・・・」
「当たり前だ! お前もそろそろ諦めて・・・」
オークは向こうの味方がフィフス達を蹂躙している頃合いだと考え、戦闘を終わらせるために喉元に魔力を集中させました。
『来る! ガードしないと・・・』
攻撃を察したグレシアはすぐに対策をしようと杖を光らせて氷結術を放とうとしました。気付いたオークは焦りました。
『コイツ、この至近距離で魔術をぶつけ合うつもりか!? だが甘い・・・ たとえ術を防がれたところで、殴り合いの力なら圧倒的に俺の方に部がある。この勝負は貰った!!』
オークはそう内心で息巻き、術の準備と同時に拳を殴りかかれるように奥に引きました。そして少しして、グレシアとオークの魔術がぶつかり合おうとしたそのときでした・・・
シュン!!・・・
そのとき、オークが技を出した先には、誰もいなくなっていました。おかげで二つの攻撃は全て空振りになります。
「あ!? あの女、どこ行った?」
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気が付いた頃、グレシアはさっきまでとは全く違う場所に立っていました。
「あれ? ここどこ?」
彼女が突然のことに困惑していると、下の方からか細い声が聞こえてきました。
「なんとか・・・ 間に合ったな・・・」
「ギャーーーーーー!! ゾンビーーーーーーーー!!!」
声の方向に首を傾けた彼女は床に伸びきっている存在に体を震えさせて驚きました。するとその伸びきった存在からまた声が聞こえてきました。
「それは・・・ ねえだろ・・・」
実は彼女の目の前にいたのは、ギリギリだった魔力を使い果たして床に伸びているフィフスの姿でした。
<魔王国気まぐれ情報屋>
・三匹のオークの好み
長男 貧乳こそ至高である・・・
次男 アホの子こそ至高である・・・
三男 清楚こそ至高である・・・
フィフス「なんで賢者っぽくなってんだ! 気持ち悪い・・・」
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