第103話 いい加減しつこい!!
それからフィフスはすぐに魔道書を拾い上げ、グレシアはそれを確認して術を解きました。そしてなんでこのことをしているのか知らない鈴音に説明しました。
「エェーーーーーーーー!! これ、小馬ッチのだったの!!?」
「そうだ。まさかお前が持ってるとは思わなかったが・・・」
「変な巡り合わせよね~・・・」
グレシアが感心していると、フィフスはすぐそれを見てこう言いました。
「味方を増やすために使うつもりだったが、まぁこれも取りやめだな。契約者に迷惑をかけらんねえよ。」
「同感ね。アイツには悪いけど・・・」
「アイツって、もしかして・・・」
鈴音が二人に一つ聞こうとすると、突然フィフスのスマホに着信が入りました。会話に水を差されて少し不機嫌になりながら電話を取ります。
「何だ突然?」
「経義君から連絡が入ったよ。」
電話の相手は信でした。しかしいつもと違って神妙な面持ちです。隣にいたグレシアも聞きたがっていたので、フィフスはスピーカーホンにして続けます。
「・・・で、どうだった?」
「君の予想通りだ。あのオークはまだ生きている。」
「!!?・・・」
その事に一番衝撃を受けていたのは、やはり鈴音でした。
「嘘・・・ でしょ・・・」
『やっぱりか・・・』
「もう一つの予想の方はどうだ?」
『もう一つの予想?』
鈴音がフィフスの言うことが気になります。
「それも、大方当たっていたよ。」
「そうか・・・ 分かった。」
それを聞くとフィフスは電話を切り、ポケットにしまって鈴音の方を見ました。
「すまない鈴音、今からお前は・・・」
するとそのとき、突然グレシアが肩にかけていた鞄が光り出しました。
「ウオッ!!」
「な、何!?」
「向こうから来たか・・・」
そのとき、フィフスとグレシアは微かに音が聞こえた方向に同時に振り向きました。そして・・・
「ヒャッハーーーーーーーーーーーーー!!」
すぐにその方向からオークがまるでミサイルのような速さでやって来たのです。しかし事前に気付いた二人によって、グレシアはその勢いのままの攻撃を防ぎ、フィフスは鈴音の手を引いてオークから離しました。
攻撃を弾かれたオークは着地して三人を見ます。対して鈴音を後ろにいさせたフィフスは文句をたれました。
「いい加減しつこいぞ! まだ鈴音を狙ってんのか!?」
するとオークは汚いよだれを地面に垂らして答えました。
「グへへへ・・・ 俺達オークは鼻がいいんでな。一度嗅いじまえばどこへ行こうが追跡できるんだよ。特に肉付きのいい女はな!」
オークがそれを言うときの視線は、明らかに鈴音の体をなめ回すようでした。わらにオークは今度はグレシアに視線を切り替え、同様に見回します。
「こっちの女も良いなあ。この際だ、二人まとめていただかせて貰おうか!!」
グレシアは彼の言葉に嫌悪感を感じ顔をしかめます。するとフィフスが鈴音を下がらせながら話しました。
「気持ちの悪いやつだ、これ以上危害が及ぶ前にぶっ倒れて貰うぞ。」
しかし、それを聞いたオークは何故か大声で笑い出しました。
「ハァーーーーーーハッハッハ!!! 口だけは随分と威勢が良いようだなぁ、魔王子さんよぉ。」
「「!?」」
『魔王子?』
オークのあまりの調子の良さにフィフスとグレシアは驚き、『魔王子』という聞き慣れない単語に鈴音は反応します。そしてオークは話を続けました。
「聞いたぜぇ、カオスからよぉ。お前さん、今魔力が底をついて術が出せないらしいな。残りはその雪女だけ。俺達の敵ではない。」
次の瞬間、オークは再び攻撃を仕掛けてきました。グレシアは杖から氷を出し、それを真っ向から防ぎます。
「グレシア!!」
「アンタは鈴音を避難させなさい! 魔力がないことがバレたんなら脅しにもならないわ。」
「チッ・・・」
フィフスは格闘戦で挑もうかとも思いましたが、力自慢のオーク相手にそれでは分が悪いと考え、素直にグレシアの言葉に従うことにしました。
「鈴音、俺についてこい。」
「う、うん!」
そこから鈴音とフィフスはその場から離れていき、グレシアとオークの交戦が始まりました。今まで通り素手で殴りかかるオークに、彼女は杖で次々と氷を作り出して防ぎ、更にその氷から氷柱を発生させて飛ばしました。しかしオークはそれを背中を沿って回避します。
「ウオッと!! 危ない・・・ シシシ、いいなぁ・・・ 俺は体力の多い女が好きなんだ。」
「アンタの趣味なんて聞いてないわよ。」
そこからまたグレシアは氷を飛び道具にして攻撃を仕掛けます。その氷すらの回避したオークは、こんなことを言い出しました。
「ヘッ・・・ 緩い攻撃だ。女、どうせあの二人が逃げ切ってから、本気を出そうとしているだろ。」
「だったら何よ?」
グレシアがそう聞くと、オークはニヤリと笑って答えます。
「さっきの俺の台詞を聞いてなかったのか?」
「さっきのアンタの?」
グレシアはオークの言葉を思い出します。すると、これが真っ先に出て来ました。
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「聞いたぜぇ、カオスからよぉ。お前さん、今魔力が底をついて術が出せないらしいな。残りはその雪女だけ。俺達の敵ではない。」
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「・・・ !! しまった!!」
グレシアがマズいと感じてフィフスの方を見ようとしますが、オークはそれを許さずにたたみかけます。
「邪魔よ!!」
「知らんな。」
グレシアはそこから動けなくなってしまいました。
『バカ王子、悪いけど頼むわよ。』
彼女は現状祈ることしか出来ませんでした。
<魔王国気まぐれ情報屋>
現在の作者の心境
「いい加減しつこいのは分かっているけどどうケリを付けたら良いのか分からない・・・」