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第102話 河川敷でのケジメ

 「・・・ん    ・・・さん。





 ・・・フスさん。




 フィフスさん!!」


 「・・・!!」





 仮眠室で眠っていたフィフスは、聞こえる声に反応して目が覚めました。その開いた目の先には、何故か学校にいるはずの瓜がいました。その右肩にはユニーが乗っかり、奥には平次もいました。


 「瓜? おまえどうしてここに・・・」

 『学校が終わったのでお夜食を届けに来ました。』

 「俺は町田さんの付き添い。」


 そう言って彼女は手に持っている夜食の入ったコンビニ袋を彼に見せます。しかしフィフスは彼女の言葉の別の部分に反応しました。


 「ん? 待て、学校が終わった? ・・・てことは今!!」


 フィフスの嫌な予感は当たり、周りを見渡して見つけた時計の時刻は、既に夕方になっていました。


 『グレシアの奴・・・ 今朝のことを忘れたのか?』

 『フィフスさん?』

 「ああ、何でもない。それより瓜、道中危なくなかったか? ここに来るのは慣れてないだろ。」


 するとすぐに平次がしゃしゃり出ます。


 「何心配してんだ。俺がついてたんだから大丈夫に決まってるだろが。」

 「ユニー、あの変態は変なことしなかったか?」

 「話聞け!! しかも変態扱いかよ!!!」

 「やかましいわね。ここ仮眠室よ。」


 三人は部屋の外から聞こえて来た声に顔を向けると、何か言いたげなグレシアが立っていました。


 「・・・ 今更になって起こしに来たのか?」

 「昼までで回復しきるわけないでしょ。国門戦の時も魔術使えてなかったし。」


 二人の会話の意図が分からない瓜がメールで聞きます。


 『もしかして、昨日何かあったんですか?』


 グレシアは瓜や平次に気付かれないように一瞬フィフスの顔色を伺います。すると彼は魔道書のことについてバレない程度に話せと言いたげな表情を見せました。


 「昨日、色々あってフィフスが剣を使ってね。こないだと同じくへばったって訳。」

 「へばったは余計だ。」


 それを聞いた瓜はフィフスの手を取ります。


 「瓜?」

 「また・・・ 無茶を・・・」

 「この程度たいしたことねえよ。」

 「でも・・・」


 瓜は納得していませんが、フィフスは彼女の手を離して話を切り上げました。それからフィフスはグレシアに話しかけます。


 「それで・・・ 起こしに来たんじゃないなら、お前何しに来た?」

 「鈴音があんたを呼んでるわよ。」

 「「「?」」」


 部屋にいた残り三人が同時に首を傾げました。


____________________


 フィフスはグレシアに言われた河川敷に行き、そこにいる鈴音と合流しました。


 「体はもう大丈夫なのか?」

 「うん、何とかな・・・」


 フィフスは彼女の隣の芝生に座り込みます。


 「で、なんでわざわざこんなとこに呼び出した?」

 「シカシカから、瓜にこのことは聞かれたくないって・・・」


 フィフスは彼女の言うことに何のことか察しました。


 「魔人になったことか。」


 鈴音はコクリと頷き、話し出しました。


 「自分が魔人になって、周りのことが見えなくなって・・・ それで、小馬ッチに、酷いことを・・・」

 「別に気にするなって。」

 「でも、それでもウチは、謝りたいの。小馬ッチはウチを止めてくれたのに、それなのにウチは・・・ それに、これまで・・・」


 鈴音はフィフスの死角に置いていた鞄を見せました。


 「グレシア・・・ 志歌に頼んでいたやつか・・・」

 「動画配信の、機材まで・・・」

 「どうにしろしばらく家には帰れないだろうからな。気休めにしかならんだろうが・・・」


 フィフスが何の気なしに言った言葉に鈴音は涙を浮かべています。しかし、泣いてばかりではいられないと思った彼女は、その涙を拭き取りました。


 「クッ・・・ 泣いてなんていられないわね。こんなに助けて貰っちゃって・・・」

 「無理はするなよ。」


 フィフスはそう声をかけますが、鈴音はその場で立ち上がると、荷物を持って川の近くにまで移動しました。


 『何をする気だ?』


 すると彼女はそこでフィフスにも聞こえる大きな声で叫び出しました。





 「こんの・・・ クソッタレーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」





 流石のフィフスも身が震えました。


 「驚かせやがって・・・ どうした突然?」


 質問を受けて鈴音は振り返り、フィフスににこやかに答えました。


 「二~シッシ、色々モヤモヤがあったからスッキリとケジメを付けようとしたんだぞ。」


 振り返った彼女の顔は、どこかスッキリしていました。今の彼女に敢えて調子に乗らせようと、フィフスはこんなことを言いました。


 「どうせ吹っ切るんなら後一押し欲しいな。そこの石でも川に投げたらどうだ?」

 「フフッ、それなら良い物があるぞ!」


 すると彼女は、先程帰ってきた鞄の中をゴソゴソといじくります。


 「確か鞄に入れっぱだったから、奥底に・・・ あったぞ!」


 そしてそこからある物を取り出しました。


 「これなら、石より投げた方が良い。拾ったときは気付かなかったけど、もしかしたらそのカオスってやつが渡したのを、誰かが落としたんだぞ。」

 「ほ~・・・」

 『ん? カオスが渡した? それってまさか・・・』


 フィフスは鈴音の言うことに違和感を感じました。そしてそれは即座に的中しました。鈴音はそれを上に振り上げ、川に向かって投げようとします。そのときにフィフスは彼女が投げようとしている物体が何か分かりました。


 「あれは!!!」


 それはフィフスが探していた『ルーズの契約の魔道書』だったのです。その途端にフィフスは急いで立ち上がり、世界陸上の選手バリの勢いに走り出しました。


 「待ってそれ俺のーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 「ヒャエ!!?」


 


 しかし鈴音はその大声に驚き、逆に握っていた手を滑らせて本を水辺に向かって落としてしまいました。


 「「アァーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」


 容赦無い重力で川に真っ逆さまな魔道書。必死に走っているフィフスももう間に合わないかと思われた次の瞬間、救いが起こりました。


 川に何かが刺さり、その瞬間その川の周囲が凍り付いたのです。魔道書はそれによって水に濡れずに済みました。


 「アッブね~・・・」

 「どうやら間に合ったようね。」


 フィフスが振り返ると、そこには擬態を解除したグレシアが呆れ気味で立っていました。


 「ハハ、今回ばかりは助かったわ・・・」


 フィフスは微苦笑しながら彼女に感謝を伝えました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


川の中の魚たち「な、何だ!!? 突然上の水が凍ったぞ!!!」





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