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第100話 ピエロに踊らされる

 鈴音は魔人化したショックでかなりの疲労があったのか、目を覚ましたのは翌日になってからのことでした。


 「うぅ~ん・・・」


 彼女はぼやけた視線で天井を見ます。そしてすぐに意識がハッキリしました。


 「ここ、は・・・」

 「ッン? 目が覚めたか。随分かかったな。」


 鈴音が声の方に顔を向けると、自身を見ているフィフスがいました。


 「小馬ッチ?・・・ ウッ!?・・・」


 鈴音は起き上がろうとした途端に酷い頭痛を感じて頭を抱えました。


 「無理すんな、昨日の昼から寝っぱなしだったんだからな。」

 「鈴音! 起きたの!?」


 彼女の声を聞いたのか、部屋の外にいたグレシアもやってきました。


 「・・・ シカシカ?」

 『アタシもあだ名呼びなんだ・・・』


 グレシアが鈴音の何の気ないあだ名呼びに少し戸惑っていると、鈴音はしんどいながらも話し続けました。


 「どうして、シカシカまで・・・」


 そこでグレシアは正直に話しました。


 「ああ~・・・ アタシも、コイツと同じだから・・・」

 「シカシカも、魔人、だったんだ。」

 「そう、日本(ここ)には貴方も巻き込まれたことの調査に来たの。」

 「ちょう・・・ さ?」


 鈴音が戸惑っていると、フィフスは彼女に真っ向から聞きました。


 「しんどいところ悪い。だが聞かせてくれ。あのキマイラが入った契約の魔道書をどうやって手に入れた?」


 鈴音はまだ体力が戻っていないのか、途切れ途切れに話します。


 「夢の、中で・・・ 仮面を付けた、男に・・・」

 「夢の中? そんなところで!?」


 グレシアの驚きの声に鈴音は無言で頷いて続けます。


 「それで起きたら・・・ ウチの、手の中に・・・」

 『どうやって渡したのかは分からんが・・・ 『仮面を付けた男』って事は・・・』

 『やっぱりカオスのようね。』


 フィフスは寝たきりではありますが意識はハッキリしていた鈴音に説明しました。


 「鈴音、その本を渡したとか言う奴はおそらく『カオス』、俺やコイツが日本(ここ)に来て捜している男だ。」

 「小馬ッチや、シカシカが?」

 「奴はこの世界に契約の魔道書をばらまいている。昨日のお前はもちろんのこと、おそらくあのオークもな。」


 鈴音はそれを言われて驚き、横に寝返って肘をつきながら起き上がってフィフスに聞きました。


 「じゃ、じゃあ・・・ あのオークの契約者も、ウチも、そいつに騙されて・・・」


 彼女はそうしてやっと、自分のしたことを深く後悔しました。立場が違ったとはいえ、結局自分とオークの契約者は立場上同じだという事に気付いたからです。


 「悪いが、そういうことになるな。」


 そこから鈴音は自分のことが恥ずかしくなり、再び仰向けになっては黙って動かなくなってしまいました。今の彼女には一人で自分を見つめ直す時間がいると思ったフィフスとグレシアはその場から立ち去ろうとしました。


 しかし・・・


 ガタッ!!


 そこから歩いて少ししたフィフスは体勢を崩してしまったのです。彼の前を歩いていたグレシアは、その音を聞いて焦って声をかけます。


 「フィフス!?」


 すると彼はグレシアに視線を向けて答えます。


 「心配ない・・・ 床につまずいただけだ。」

 「そう・・・」


 グレシアはホッとし、先に部屋を出ました。そしてフィフスもそれに続きますが、その前に鈴音に声をかけました。


 「んじゃ~な。あんまり自分を攻めるなよ。」


 そこからフィフスもいなくなり、一人になった鈴音でしたが、その目は涙で潤んでいます。実は彼女の目線には、床につまずくことなどなく体勢を崩したフィフスが映っていたのです。


 『小馬ッチは誤魔化していたけど・・・ 今の、もしかして・・・』


 そのとき鈴音はぼんやりとでしたが、魔人だったときのことを段々と思い出していたのです。当然ですが、それによって思い浮かぶことは、家族を襲ったオークと同じように人を襲っていたこと、そして、それを止めるためにフィフスや経義が自身の攻撃を何度も受けていたことでした。


 『きっとあれも、ウチのせいで・・・』


 フィフスが隠そうとしていたことを分かってしまったた彼女は、少しでも彼にその事が気付かれないように右腕で両目を隠しながら涙を流しました。しかし、そこから出てくる声は、彼女の今の感情を包み隠さずに表していました。






 実は部屋を出てすぐそこにいたことでその音に気付いていたフィフスとグレシアは、彼女に気を使って聞こえない程の小さな音量で会話をします。


 「あ~あ、あの感じ、バレてるわね。」

 「そうか・・・ もう少しで誤魔化せると思ったんだが・・・」


 そこにいたフィフスは、近くにあったベンチに腰掛けて頭をうつむかせていました。鈴音の予想通り、さっきの彼は無理をして気取っていたのです。


 「全く、無理しちゃって。」

 「くぅ・・・ 流石に剣を使った後に、休憩無しで見張るのはキツかったか・・・」


 実は昨晩、個人情報を掴んで魔人が動いていると思ったフィフスは、念のため鈴音の近くを護衛していたのでした。そのせいで剣の分の消費を回復しきっていなかったのです。


 「だからアタシも言ったのに・・・」

 「うっせえ・・・ 気になったら自分が動かないと気持ち悪いんだよ。」

 「知ってるわよ。そこんトコ、修業時代から変わってないわね・・・」

 「ケッ・・・」


 グレシアはフィフスのそんな不満げな現状を見ながら、修業時代の彼を思い出してフッと笑いました。


 「大丈夫、今日はアタシも休んだから。アンタだけで背負わないでね。」


 それから少しして、フィフスはグレシアに諭され、信が案内した仮眠室のベットで休憩することになりました。


 「昼には起こしてくれよ。鈴音の身が心配だ。」

 「はいはい、分かってるわよ。」


 彼女の答え方に少し心配しつつも、フィフスはそのベットで眠りにつきました。しかし、その直前に彼はまたグレシアに声をかけました。


 「あと、お前に一つ頼みがある。」

 「・・・?」

何かうつむいているヒロイン


瓜「せっかくの100話なのに全然出番がありません・・・」





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