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第8話 火炎刀

<節分>

置き手紙

瓜「せっかくなので年の数だけ食べてくださいね。」


 山盛りの大豆


フィフス「何の嫌がらせだよ、これ・・・」




<バレンタインデー>

置き手紙

瓜「お世話になっているお礼です。」


 山盛りのカカオ豆


フィフス「もはやどうやって手に入れたんだよ・・・」


 人気の無い場所で対峙している二人の魔人。苛立っている土蜘蛛に対し、余裕な表情のフィフス。


 「てめ~はさっきの鬼か。何でここにいやがる!?」


 フィフスはヘラヘラと語る。


 「お前の襲った銀行が全部同じ地区に集まっていました。それも左から右の方向でな、そこから一番近いとこの、人気の無い場所がここだったからな。張ってみたら当たりだったようだな。」


 見つからないように隠れている瓜。


 『まさかこんな単純な策で見つかるとは・・・』


 フィフスの事で更に土蜘蛛はキレています。


 「オイ! とっととそこをどけ!!」

 「随分と焦ってるな。何? 腹痛いんですか?」


 ブチッ!!・・・


 「ぶっ殺す!!」


 わかりやすく挑発に乗った土蜘蛛は真正面から糸玉を吐き出しました。


 「こうもわかりやすく乗るとは・・・」


 フィフスは狭い範囲を軽々と動いて糸玉をかわし、敵の元まで近づきます。


 「ナッ!?」

 「お前、馬鹿だろ。」


 そう言うとフィフスは土蜘蛛のみぞおちを殴りました。


 「グホッ!!・・・」

 「チッ・・・ 無駄に堅いな。普通なら軽く気絶する(おちる)んだが・・・」

 『やっぱ魔人の体は人間のようにはいかねえか。』

 「なめんな!!」


 そう言い、土蜘蛛はすかさず足の一つで反撃します。それにフィフスは反応はしたものの近づいたのが仇となり受け身を取る前に食らってしまいました。


 「カハッ!!・・・」

 「フンッ、余裕をこいていたのはどおした?」


 フィフスは体制を立て直し、返答しました。


 「うるせえ、こちとら鍛えられなくてなまってんだよ。ちいとは手加減しろ。」


 ニィィィィ・・・・


 土蜘蛛はその気味の悪い口元をにやつかせます。そして、


 「そうか、だがこっちはんなこと知ったこっちゃねえんでな!」


 そうして彼は口に何かを含んだ表情になった。それにフィフスが構えると、向こうは動きました。


 「<蠱毒術 爆酸弾>」


 次の瞬間、土蜘蛛は口から紫色のドロドロとした塊を勢いよ良く吐き出しました。


 『まじか!』


 フィフスはすかさず身を引き、隠れている瓜に大声で言います。


 「オイ! そこからすぐ逃げろ!!」

 「エッ・・・」


 それを聞き瓜は一瞬硬直しました。しかしフィフスの次の一言で体が動きました。


 「でねえと死ぬぞ!!」


 ハッとなった瓜はすぐにそこから離れます。そのすぐ後、さっきの塊がいくつもの小型弾に爆散し、瓜が隠れていた木の幹を軽く溶かして木を倒した。それを見て、瓜は身の危険にゾッとしました。


 危機を伝えた当の本人は、予想より速い毒弾に追いつかれそうになっていた。


 「そのまま溶けちまいな。」

 「嫌だね。 <火炎術 放射炎>」


 するとフィフスはノーモーションで口から炎を吐き出し、前方にあった毒弾を燃やし尽くしました。


 「アブねえ事しやがる・・・」


 フィフスは愚痴をたれた。


 「いい加減そこを退きやがれ、俺はとっとと願いを叶えたいんだよ。」


 それを聞いたフィフスは疑問に思いました。


 「お前、なんでそこまで願いを叶えるのに拘る? いくら契約とはいえ、この感じから見て距離制限は無いだろ。自由に動けんだから良いんじゃねえのか?」

 「それじゃだめなんだよ・・・」

 「ハ?」

 「俺自身のために、それではだめなんだよ!!」


 そう言い張って彼は正面から襲いかかってきました。しかし、その瞬間、彼に異変が起こりました。


 「ウグッ!?・・・ ア、アアアアアアアアア!!」

 『一体何だ・・・』

 『苦しんでる?・・・』


 しばらくすると雄叫びがやみ、彼はその場で前屈みに気が抜けたような体制になった。そして再び起き上がります。が・・・


 『何だ? こいつ、急に気配が変わった。』



 「キシャァーーーーーーーーーーーーー!!」


 起き上がった土蜘蛛はまるで獣のようにフィフスに向かってきました。


 「おいおいおいおい・・・」


 さっきよりもスピードが速くなり、さすがのフィフスも対応しきれずに少しかすってしまいました。


 「クッ・・・」

 『フィフスさん!!』


 心配になった瓜はつい声を上げてしまった。するとそれが土蜘蛛にも聞こえていたようであり、

うなり声を上げながら彼女の方を向きます。


 「ウガァーーーーーーーーーーーーー!!」


 一目散に襲いかかる土蜘蛛、突然のことに驚き、瓜は足がすくんで動けなくなっていました。


 『これはまずい!!』


 『ど、どうしよう・・・ こんな状況なのに、足が、動かない・・・』


 「チッ、仕方ねえ・・・」


 暴走した土蜘蛛は、一直線に瓜に突っ込んだ。しかしその爪に当たったのは、フィフスの構えられた剣のまばゆく光る刃でした。


 「フィフスさん・・・」

 「スマン、怖い目に遭わせた・・・」

 「イ、イエ・・・」

 

 そして驚きびくついている土蜘蛛にフィフスは剣を振るった。しかしそれは土蜘蛛の体に当たって止まってしまいました。


 「うむ、やっぱり駄目か・・・」

 「やっぱり?」

 「生憎この剣、見た目に反してなまくらでな、ほぼ何も切れん。」

 「それ剣としてどうなんですか!?」


 会話をしている間にフィフスは土蜘蛛に蹴り飛ばされました。先程とは違い、持っていた剣で勢いを弾きました。



 『ここまで暴走してるとなると、口を割らせるのはもう無理か・・・』

 「まあ安心しろ。手ならある、が・・・」

 「?」


 フィフスは後ろを振り返り、瓜の方をきつい表情で見ます。


 「お前、こっから血が流れる光景を見ることになるぞ・・・」

 『それって、まさか・・・』


 しかしそう言っている間に土蜘蛛が次の攻撃をしかけてきた。フィフスはそれを再び剣で受け止め、前を向きます。


 「どうやら返答を聞く時間は無いようだな。悪いが腹決めろよ。」


 瓜は今の言葉に彼なりの本気の心配を感じた。だからこそ、瓜は覚悟を決めて口ではっきり言いました。


 「ハイッ!! 私は大丈夫です。」


 それを聞き、その目を見てフィフスは頷き、また視線を戻します。


 「よし、大丈夫だな。なら・・・」


 フィフスは己の持つ剣に自身の魔力を込めました。


 「<術装>・・・」


 すると次の瞬間、白く輝いていた剣の刃が刃元から発生した炎に包まれ、止めるのがやっとだった土蜘蛛の足の一つをたやすく切り裂きました。


 「ギイヤーーーーーーーーーーーーー!!」


 「 ・・・ <火炎刀>」


 突然のことに土蜘蛛は驚いてすぐに身を引きました。


 『フィフスさんの剣が、火を・・・』

 「<術装> 己の装備に魔力を流すことで威力を上げる魔術だ。これならこいつでも幾分か戦える。」


 さっきまでと形勢逆転し、フィフスは歩きながら土蜘蛛に近づきます。しかし向こうは部が悪いと思ったのか、一目散に逃げ出しました。だが・・・


 「逃がすか!!」


 フィフスは剣を地面にこすらせながらいっきに振るった。するとそこから炎の斬撃が飛び出し、それが土蜘蛛に近づいた途端、炎の渦に変わって土蜘蛛を囲み、拘束した。


 「ウゥーーー!!」

 「同じ魔人として残念だが、切らせてもらうぞ。」


 そしてフィフスは即座にそこに近づいて、剣を渦の右上からくの字状に切り裂いた。


 「<火炎剣術 炎渦斬>」


 切られた瞬間渦は消滅し、中にいた土蜘蛛も切り崩れてながら灰になった体が霧散し、跡形も無く消えてしまいました。


 「ま、ざっとこんなもんか。」


 その場で起こった戦いが終わり、落ち着いた頃にフィフスはアイコンタクトをし、離れていた瓜が来ました。


 「・・・勝ったんですか?」

 「・・・キツいか?」

 「ハイ。」

 「無理もねえ、気が落ち着いてるだけ良い方だ。」

 「フィフスさんは、大丈夫なんですか?」

 「ああ、俺はすっかり慣れちまったからな・・・」


_________________________________________


そこから離れた部屋の中・・・


 スゥーーーーーーー・・・

 「あれ、アタシ、何を? て、何このお金!? どおなってんの!!」


 土蜘蛛の契約者だった女が、正気になったようである。その家の屋根の上には、本を渡した男がしゃがんでいました。


 「あ~あ、せっかく手伝ったのに・・・ こりゃあ先輩方々に怒られそうだなあ。








  ・・・ まいっか。」




_________________________________________


 一騒動が終わり、家に向かって行く二人。瓜はどこか手の震えが収まらずにいた。そんな状況下、二人しばらく黙り込んでいたが、フィフスが切り出しました。


 「お前、俺が怖いか?」

 「エッ!?」

 「遠慮するな。ビビったんなら逃げて良いぜ。」

 「・・・ どうして、そんなことを?」


 そう返されたことに、フィフスは軽く驚いた。


 「何だ、土蜘蛛を切った俺が怖いんじゃ無いのか?」




 「私は、怖くないですよ。 土蜘蛛は・・・ 怖かったですけど・・・」


 その言葉にフィフスは衝撃を受けた。これまで何度か親しく話しかけてきた魔人でさえ、フィフスが戦ったところを見た途端、手のひら返しで怯えて逃げていったのだ。だが、瓜は違った。そこに彼はこう返します。


 「何で、怖くねえんだ?」

 「だって・・・











              ・・・友達だから。」






 「!?」


 そのとき、フィフスの頭の中に一つの映像が浮かび上がりましだ。それは少年の頃の彼が、一人の少女と話している様子だ。


_____________________________________


 「なあ、どおしてお前は鬼の俺と仲良くしてくれんだ?」

 「う~ん、深く考えた事無かったなあ~」

 「そ、そうなのか・・・」

 「そうだな~ 強いて言うなら・・・」


 落胆するフィフスに対し、相手の子はこう言ったのだ。


 「友達・・・ だからかな?」


_________________________________________


 そのときのことを思い、フィフスはそっぽを向きました。


 「ど、どうしたんですかフィフスさん!?」

 「な、何でもねえ! 気にすんな!!」


 大きな声で恥ずかしい顔をごまかそうとしたフィフスでしたが、瓜は心配になっていました。そして咄嗟にこんなことを言っていました。


 「フィ、フィフスさん!!」

 ビクッ!!?

 「おい、何だよ急に・・・」


 「お悩みごとなら、全力で相談してください!!」


 瓜はそう言って自分の胸をドンッ!! と叩いた。そしてその勢いにピリリと震え、我に返りました。


 『わ、私、一体何を言ってるんでしょうか!!?』


 恥ずかしさに半泣きになっている瓜だったが、次のフィフスの行動にそれが吹っ飛びました。


 「プッ、・・・ クスクス。変な奴だな、瓜。」

 「そ、そうですかね・・・」

 『フィフスさん、初めて笑顔になったなあ。』


 フィフスが元の調子に戻ったのを見て、瓜は肩の荷を降ろます。そしてあることに気が付きました。


 「て、名前!!」

 「ん、どおした?」

 「名前、初めて・・・」

 「ンだよそんなことか。当然だろ、俺たちは<友達>だからな。」


 ニッっといつものように笑い前を歩くフィフス。それに瓜はついていきました。


 「そ、そうですね。当然ですよね。」


 ハハハと笑う瓜にフィフスがこんなことを言い出しました。


 「てかいい加減気付かないのか?」

 「? 何をですか?」

 「お前さっきからベラベラしゃべってるぞ。」

 「ハッ!?」


 瓜はとっさに口を手で塞ぎます。


 『お恥ずかしい・・・』

 『やっぱ言わなきゃ良かったか・・・』


 フィフスは自分の行動に早速後悔しました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


<術装>

 魔人が自身の体、および装備に魔力を流すことで威力を上げる魔術。自身の属性効果をつけることができ、使用者によって様々な効果の違いが出る。


<火炎刀>

 フィフスが自身の剣に<術装>をかけたもの。剣の刃に常に炎が燃えさかっており、通常よりも遙かに切れ味が良くなる。装備の形そのものを変える事の出来る<術装>の中ではシンプルな術。




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