占いの女
「ポーション3個に毒消し草1個、か」
それが、それだけが、俺のライフラインだった。
有り金を全てはたいてそれだけ。
帰ってきた時のことまで考えてはいられない。
ダンジョンでそれなりの成果をあげられなければ終わりなのだが、
それ以前に単独で潜って、開錠の練習をしようとしている。
それだけで、とうに命懸けなのだ。
「なんで、ルーキーでここまで追い込まれてるんだろ……」
でも、やるしかない。
手近なダンジョンに向けて歩みを進もうとした時だった。
「ちょっと、そこのお兄さん」
「はい?」
振り返ると、魔術師らしき、ローブと帽子を被っている女性が立っていた。
もしかして、パーティーの誘いかと、一瞬、期待したが――
「よかったら、占い、受けない?」
「…………いえ、今、手持ちがないので」
落胆の色を隠すのに苦労した。
「ああ、大丈夫。サービスするから、タダでいいよ!」
「え?」
今度は新手の詐欺かと思った。
「練習中なんだよ。『転職』の為に、ね」
「あ、ああ……」
恐らくは専門職か上位職に就く為に、占いの能力を上げたいのだろう。
俺の器用さも、こんな風に上げられたらよかったのだが……
「それなら、いいですけど、後から騙しても、俺、なんにも持ってませんからね?」
「あはは、大丈夫、だいじょーぶ。それなら、もっと裕福そうな人狙うから」
「……」
事実ではあるが、余り気分はよくない。