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適正職『無し』

「やぁ、クロード君。この度は『冒険者』資格、習得おめでとう」


そう言う試験官の表情は、決しておめでたいものではなかった。


「ど、どうもありがとうございます」


「それで、まァーなんだね。知ってるとは思うんだけど、君のように『冒険者』資格を習得したばかりの、ルーキーには。それぞれの適正にあった職をだね。おすすめする訳なんだよ」


「はい」


冒険者になると、大抵何人かのパーティーを構成する。


それぞれの得意分野を受け持つことで役割分担をすることを冒険職を持つ、という。


冒険職を持つことで、自分の役割を自覚する事で専門的な能力を伸ばしやすくなるばかりでなく、それぞれの役職に着くことで、役職協会に所属出来るようになる。


役職協会に入れば、専門的な訓練を受けることが出来る他、ルーキーはお祝いとして、装備品を支給してくれるなどの特典もつく。


要は、この適職というのは今後を占う上で重要と言うほかない。


「……なんだけど、実はね、クロード君」


「はい」


「君、適正職『なし』なんだわ」


「はい?」


「君の能力(ステータス)ね。尖り過ぎなんだよね」


「ど、どういう事ですか!?」


「あ、自覚ない?試験受けてみて何も感じなかった?」


「え?えっと……」


「まァ、いいや。君のステなんだけどね、素早さがダントツに高いんだけど、それ以外が平均以下なのよ」


「……それって、駄目なんですか?」


「まァ、『冒険者』資格ってさ。能力の総合力で判断するから、そこはいいんだけどね。冒険職って、この能力値は最低これだけ必要ってラインがあるのよね」


「え、ええ」


「普通の合格者なら、最低限一つの職は合格ラインにあるんだけど、クロード君の場合はなまじ素早さが高すぎる分、他の能力値の低さを補っちゃって、適正職がない状態なんだよね」


「そんな……」


「いやぁ、こっちとしても頭が痛いんだよね。

今回の素早さ測定でクロード君はトップの成績、歴代でもTOP30には入るんじゃないかなぁ」


「それって、どうにかならないんですか!?」


試験官は大きくため息を()くと、大袈裟に髪を掻きむしった。


「まァ、こっちとしてもどうにかしたいからさァー。ちょっと話ますかァ」


「お、お願いします」


「まず、ルーキーは基本、前衛職・魔法職・サポート職の基本職各2職づつ、合計6職のどれかに就いて、その中で自分の適正を(かえり)みて、専門職や上級職に就いたりするんだけどォ、流石に専門職とかまでは詳しくわかんないから基本職だけで今回は話そうか。ところで、基本職の6つくらいわかるよね?」


試験官は馬鹿にしたように嫌らしく笑った。


腹が立たない訳ではないが、今ここで腹を立ててもしょうがない


「はい」


「じゃあ、言ってみて」


「前衛が戦士(アタッカー)重戦士(タンク)、魔法職が魔術師(ウィザード)僧侶(ヒーラー)、サポート職が盗賊(シーフ)狩人(ハンター)ですよね」


「うん、じゃあ、まず前衛職についてだけどォ」


「は、はい」


「まァ、かろうじて戦士は可能性あるかな、全然パワー不足なんだけど。」


「は、はぁ……」


「重戦士はもってのほかだね。回避型もいるって言っても最低限の打たれ強さがないと務まらない。後ろにひ弱な魔法職がいるっていうのに、簡単には攻撃も避けれないしね」


「な、なるほど……」


「でも、やっぱり戦士もないかな。重戦士よりはあるってだけで、今の力じゃ全ッ然ダメージソースにならないから、実際パーティーで運用できるレベルには倍程足りないから」


「…………」


顔が引き()るのこらえるのに精いっぱいだった。


「で、魔法職もないね。無理無理」


「しょ、初級魔法くらいなら使えますよ?」


「駄目駄目、魔術師やるには魔力総量が全然足りてないよ。すぐに燃料切れす(MP尽き)るよ。

でも、珍しいね。()()で魔法使えるのは」


「……ハーフなんですよ」


「ふーん、まァいいけどね。あ、僧侶は言うまでもなく絶対無理ね。

クロード君、聖力全くないから」


「……それはわかってます」


「で、残るサポート職だけど、かろうじて可能性があるのはここかなァ」


「は、はい!」


「得意の素早さを活かすにはもってこいだし……でも、きみ不器用なんだよなァ」


「……」


「狩人は弓を使うことが多いからねぇ、クロード君の腕では厳しいだろうし」


「盗賊はどうなんですか?」


「戦闘面では問題ないけど……クロード君、鍵開け(ピッキング)や罠の解除できるの?」


「……いえ」


「今時のダンジョンなんてどこもかしこもトラップだらけよ?最低限鍵開けは出来なきゃ盗賊は名乗れないよ?」


「そう、ですか」


「こんなところだね、現実的には器用さをあげて、サポート職になるのが無難なところだね」


「器用さを上げるって……訓練施設を使えるんですか?」


「ははは、君は盗賊でもなんでもないんだから、無理だよ。基準に満たない者を推薦する訳にはいかないよ」


「じゃ、じゃあ、どうしたら、いいんですか?」


「知らないよォ」


「!?」


「クロード君が自分で考えることだよ、それは」


「だからって……」


「ああ、じゃあ、ダンジョンで練習したらいいんじゃないの?鍵開けを」


「なっ……」


『無職』で、ダンジョンに行けと言うのか?


それに、失敗すれば罠が発動するかも知れない練習ってなんだよ!


「まァ、どうしても無理なら、諦めたら、冒険者」


「!!」


「能力的には惜しいけど、向いてなかったってことだよ」


「そんな……せっかく合格したってのに……」


「諦められないなら、専門職を探してみたら?もしかしたらクロード君でも就ける職があるかもね」


「本当ですか?」


「保証はしないよ。気長に探してみたら?」


「……」


気長に……悠長にやってる時間なんてないのに!



基本職云々のところは完全に私(作者)のイメージです。

特になにかを参考にしたということはありません。

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