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夏季休暇が始まり、一週間かけて村まで戻ってきました。



「ただいま!お父さんお母さん愛しのエリー!!」

「姉ちゃん、俺もう六歳だよ?愛しのとかやめてよね」



弟がちょっぴり冷たいのは気のせいかな……。


十階層用の聖水入り霧吹きを販売したところ、十分なお土産代になったから異空間収納から王都のお菓子を取り出してみんなで分けた。なんと異空間にぶち込んでおくと時間がそのまま止まるのである。アイスを作って確かめたので間違いない。魔法があると案外楽に作れるので、ファンタジー万歳である。



「それで、姉ちゃん大丈夫?虐められたりしてない?」

「大丈夫!貴族はお姉ちゃんみたいな庶民にはまるで興味がないわ!」



弟のエリー……エリオットにそう言うと、よかったとばかりに頷いた。ああ、義理の弟だけど今日も可愛い。

弟と過ごしていると思うものだ。私多分悪役令嬢とか向いてなかったなって!


村の薬師のおばあちゃんに、あったら採取してきてと頼まれていた薬草とお土産を渡しに来たら、私と同じ燃えるような赤い髪と瞳を持つ少年がおばあちゃんに頭を下げていた。なんだこれ。

彼は私の母方の従兄弟であり、侯爵家の息子だ。名前はエイダン・ガルシア。



「頼む……!呪解のポーションを売ってくれ!!」

「こんな田舎にそんなもんないよ」



帰んな、とシッシッと追い払う動作をするおばあちゃん。珍しいわ、と首を傾げると私を見た少年が屈辱的だという顔をした。



「えーっと、お邪魔だった?」

「ヒッヒッ、邪魔なのはそこの坊主の方じゃて。レオノア、おかえり」



な、泣きそうじゃん。ガルシア侯爵家の子だぞ、それ……。

とりあえず「ただいま。お土産持ってきたの」と返す。



「おい、平民の!」

「ここにゃ平民しか居ないよ!さっさと帰んな!」

「まぁまぁ、おばあちゃん。落ち着いて……」



事態が分かんないからとりあえず落ち着いてもらって、話を促す。

彼は悔しげに手を握り締め、事情を話し出す。あれぇ、こんな状況最近もあったわね!?



「妹がハーバーという家に呪われた。どうやら呪術スキルの高い女が後妻として入った様だ。ハーバー家は術を解く代わりに多額の金を要求している。だが、祖父が邪魔をしてその金を出せないんだ!呪解のポーションさえ有ればなんとか父上が治してくださる!」

「煩いね。ガルシア侯爵家には代々一人、錬金スキルを持って生まれてくる赤の魔女がいるはずだよ!」

「……叔母上は六年前に亡くなられてしまった」



またハーバーかよ!そら悪役令嬢も育つわな!?

というか、原作では元母生きてたから多分暗殺だとして、殺した妻の実家から金強請ろうとかどんなクズだ!?

後、爺さんは娘が産んだ子どもを追い出しただろ!

というか私の錬金スキルまさかの元母実家からの流れを汲んでたのね。……似てるの顔だけじゃなかったのか。


アマーリアが好き勝手してたのって錬金スキルを持つ赤の魔女だったからでは?


色の名前を持つ「魔女」、もしくは「魔法使い」はこの世界では特別な意味を持つ。

それは、国の始まりの伝説における英雄の血筋を汲む証であり、英雄の素質を持つ高貴な人間の一柱。

金・赤・蒼・橙・碧・黒の六柱の英雄の生まれ変わり、とも呼ばれるのがそういった色の名を持つ魔女・魔法使いなのである。

ヒロインはそれを助けた聖女という役回りだった。


……赤の魔女、この流れだと私っぽい?


バレたくはないけど、呪ってるのうちの元クソ親父と愛人なんだよなー!しかもこれに限って言うと元母って娘に愛情持てなかっただけで究極的に悪い人じゃなかったんだよなー!?……まぁ祖父はクソですけど。



「赤の魔女は直系の女子に産まれるはずだ。居ないってなら見放されたんだね」



見放されたんじゃなくて、見放しちゃったんだな……。複雑な思いを抱きながらも迎えが来ちゃったガルシア侯爵家令息な攻略対象を見送る。

あーなんで爺さんを呪わなかったんだババア!


……とりあえず呪解のポーション作ってみようかなぁ。レシピ……探さなきゃ……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 第六話まで楽しく読ませていただきました。今後のお話を楽しみにしてます。 日本人の記憶が戻っている状態の主人公と言うのもあってか 縁が切れても両親、親戚のやる悪事を放置しておくのは気持ち悪い…
[気になる点] 遺恨があるのに、助けようと思う心の動き。 [一言] ちょっぴり人として不自然過ぎると思います。
[一言] 呪解のポーションとか作ったら絶対に縁を切ったはずの奴らと関係を持ってしまうんだからやめときゃいいのに
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