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グリフォンの背に乗って空を飛ぶ。この子の名前はレイというらしい。
サミュエルと行動するのは久しぶりだし嬉しいんだけど、三年前より背もすごく伸びて声も低くなって、おまけにめちゃくちゃかっこよくなってるからドキドキする……。ちょっと悔しい。
とりあえず、私の体調が完全に回復するまで休みを取らされたあたり、世話焼きなところ変わらないなーって思う。
そんな感じで数日お休みしてしまったけれど、その間に事態は少し動いたようだ。
「まさか、加護が弱まっただけでロンゴディアにファニールが居つくなんてねぇ……」
遠くからでも見えるその巨体を見ながらそう言うと、「あれを倒すなんて中々出来る話じゃないな」とサミュエルが難しい顔をした。
「ルースとウィルが倒すって言ってるんだから何かしらの勝算はありそうだけど。聖剣有りならゲイリーも援護すれば倒せそうな気はする」
「何、あの男そんなに強いの?」
「……エデルヴァード北の山脈にいるバロックドラゴンの雄を単独撃破する男」
バロックドラゴンとは、黒いゴテゴテした大きいドラゴンである。凶暴であり、知能も比較的高いため、通常は優秀な一個師団を派遣して倒せるかどうか、というものだ。
それをあいつはボロボロになりながらでも単独撃破したらしいのである。父君のオルコット辺境伯から聞いた話だから多少盛っているかもしれないけど。
「それ本当に人間?」
「一応、血も出れば病気にもなるし、お腹も空くよ」
味方であればいいけれど、敵には絶対したくないよね!
そういう点で言ってもカイル様の周りって不思議と優秀な人が来たりするんだよね。
「さて、じゃあ王子様達と合流しようか」
「その前に」
ポケットから腕輪を取り出して、サミュエルの左の手に填めた。赤い石のついた腕輪は魅了だけでなく、守りについては国宝級の仕上がりとなっております。休んでるときに暇だったから、最近色々作ってたものの余り素材で作ったけど、良いもの作った!
「レオノア、こういうのは自分に使いなさい」
「私のもある」
左手を上げると、一瞬キョトンとした顔をされて目を逸らされた。「反則じゃない?」という呟きが聞こえたけど、何がだ?
「君が計算でやってるわけじゃないって分かってるけど、天然にも程があると思うよ」
「そう……?」
そんなに変なものを贈ったかな?
それともサミュエルからの黒いピアスに合わせて作った黒い石の腕輪が似合わないとか?黒に似合うも何もないと思うんだけど。
ただ、彼が私の色を身につけているっていうのは、何故だかちょっと心があったかくなるけど。
「降りるよ」
グリフォンが下降していく。懐かしのロンゴディア王国に降り立った私達は、待っていたらしいルースとウィルと合流を果たした。
「レノン、行方不明って聞いて心配し……ねぇ、サミュエルこれは何?」
「俺が唆したわけじゃない」
「結構可愛く作れたと思うんだけど」
「いや、レノン……そういうことではなくてね?」
ルースが何か言いたげにしていたが、諦めたように息を吐いた。ちょっと勝ち誇った顔のサミュエルに首を傾げると、ウィルも複雑そうな顔で「こんなあからさまなのになぁ」と言った。
何が?
「この件が終わったぐらいに、ゆっくり自覚してくれればいいよ」
サミュエルが言うならそうなんだろうな、と頷いた。