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「君、本当に人が良いよね?言っとくけど褒めてないから」



呆れたようにそう言うサミュエル。この物言いも久しぶりすぎて怒りすら湧かない。「あー、日常が戻ってきた……!」みたいな気分である。


ところで、私の三年を話したところ、ルース達に引き続いて「また面倒なものを惹きつけて」と言われたんだけど、ゲイリーもしかして私が思ってたよりもヤバい人?ずっと味方だったからよくわかんないんだけど。



「このままいくと戦争も止む無し、ってなりそうだけど、それもマリアが脳内お花畑女であるうちは兵士がみんな離反しかねない点でキツいな」

「神様に女神はどうにかしてって頼んだんだけど、どうにもなんないかなぁ」

「少なくとも、マリアへの加護が切れていないうちは色々と面倒だよ」



災厄の獣は聖剣でなんとか倒す予定だったけど奪われて、でもルース達への武器はちゃんと本人に渡っているので、最悪アレはどうにかなるだろう。

とした上で、今後の事を考えるとロンゴディアの王太子達へどういった対応を取ればいいのか。



「いっそ、災厄のが聖女を喰ってくれれば事態はまるく収まるんだけどね?」

「そんな都合のいい事ある?」



アレがマリアを追いかけているらしいとはいえ、女神の加護が……あの……厄介すぎるんだよね!



「女神の加護がなければ良いのか?」



ちょっと前に聞いたことがあるような声を聞いて振り返る。疲れた顔で座り込む神がいた。



「女神本人を押さえつけるのであればもう少し時間がかかるが、アレらのリンクを切るだけであれば片手間でやってやるぞ?」



サミュエルの「誰これ」という目に、「アストラ神……」と答えておく。



「ロンゴディア国内での信仰が下がったからな。以前であれば片手間でなど到底不可能であったが、今であれば可能だ。聖剣があったとしても、乙女の祈りが発動しないであろうし、うまくいけばそれこそ災厄のが聖女を喰らうであろうな」



それでもいいのか、と彼は私達へ問うように目線を向ける。



「あの子達は、人を犠牲にしすぎた。それしか手がないのであれば……やむを得ないと、思う」



正直、もっといい方法があればいいと思わなくもない。

けれど、そのためにもっと犠牲の出る方法を取るわけにはいかない。



「エデルヴァード帝国の兵達を殺し、自国でハーバー家の家令やそれに連なる者も殺し、自国の男達も不要になったら殺している。しかも無意識にだ。あんな化け物を生かしておいても良くない」

「どういうこと?」

「三年、俺達は災厄の獣のことも聖女のことも、調べて回っていたんだよ。結果、そもそも君がハーバー家から追い出された原因はマリアで、君が俺達と逸れた原因の地滑りも彼女によるものだという調査結果が出た」



マリアほど強力な魅了であれば痕跡が残りやすいらしい。

彼女は、無意識に私を追い出し、私達を追い込み、そして自国の民だけでなく他国の民までその手にかけた。

……いっそ、喰われた方が後が楽かもしれない。だって。



「ただの処刑で済めば良いな?」



ロンゴディアの法律では精神汚染魔法の利用と国を乱した罪で王都引き回しの上、生きたまま火炙りだったはずだ。

エデルヴァードの法律では王族への加害に国家間の関係悪化、民の殺戮……以上から生きたまま四肢を裂かれ、焼かれるはずだ。

おそらく集まった被害者家族等からも何かあるだろうし、それを考えると喰われる方がまだ楽に死ねるかもしれない。



「では、良いのだな?」



その神の問いに、私は頷いた。

あの光景を見ては、彼女を野放しにするわけにはいかない。



「俺としては、なんだかもう少し……本来の罰則以上には苦しんで死ねと思うけど」



そういえば、サミュエルって過激派だったな。今思い出したわ。

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