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なんかゲイリーがにこやかに微笑みながらこっちに来る。ぎゃ……逆に怖いな。

ゲイリーは味方なのわかってるからいいけども。


それにしても、本当にカイル様に内緒にしてくれてるの奇跡だよなぁ。まぁ、この国に何かあるようなら話すとは言われているけど破格の条件である。


……ロンゴディア王国ではサミュエルが無条件で世話をどれだけ焼いてくれていたのか、離れてからよくわかったんだけど、こっちではゲイリーが助けてくれること多いからつい安心感を抱いてしまうんだよね。拝んどいたほうがいいかな?


逆にカイル様って恩人なんだけどたまに殴りたくなる。王子と皇子でもあの国の二人とは随分性格が違うよね。

皇太子殿下はあれを笑顔でニコニコ抑え込んで奥方と仲良くしているんだからスゴい。……カイル様も「兄上がいる以上、私が皇帝を目指すこと等あり得ぬ」とか言うもんね。


階段を降りると、光が差す神殿のようなものが目に入る。いきなりの人工物に驚く。えっ……ダンジョンに神殿?



「近づいてみましょう、アマーリア」

「ゲイリーもカイル様も、頑にアマーリアとかリアって呼ぶよね……」



なんか最近ちょっと慣れてきた自分がいるので嫌だ。あと、家族に会いたい。無事らしいので生きてればそのうち会えるだろうけど!


二人で神殿に近づくと、荘厳なその空気にのまれそう。思えば、宮殿も教会もここまでの圧はなかったように思う。


白で統一されたその神殿の中に入ると、中央部で美しく佇む神々しい竜が頭を上げる。



これが聖なる竜か。



そう確信できるほどの存在感に息を呑んだ。



「紅玉、まだ生きていたか。貴様、不死なのか?」

「それ多分、ご先祖様のことだと思います。私はレオノアです」

「ん?よく見ればあの性悪よりマシな面構えをしておるな」



悪役令嬢なアマーリアにそっくりの顔で強欲に突き詰めてこその紅玉だとか言い切った、一人称が妾の美女を思い出してしまった。

聖竜的にはアレは性悪だったらしい。わかる気はする。


ちょっとだけあの時の身体的なキツさを思い出して遠い目をしていると、白い光が竜を包み、白い美形の青年が現れた。全体的に白い。金色の瞳が友を思い出して印象的だ。

何が起こったか分からなくてゲイリーを見ると、「聖竜は神の化身とは言われていますが……」と呟く。えっ、そうなの!?



「こんなもので良かろう。我が名はアストラ。まぁなんだ。神と呼ばれている。ファニールが討伐されて以降は女神が煩うてな、この場所で眠っていた」

「女神が」

「煩くて」

「煩わしい、と言い換えても良い」

「「煩わしい……」」



女神問題児説が急浮上したぞ!?

いやまぁ聖女をあれにする時点で問題児なのかな……?ダメだ、ロンゴディアでの女神信仰は一体。



「あれはな、自分が好む性質の者が愛されていないと気がすまんらしくてな。討伐の時は多少役に立ったらしいとはいえ、聖女は最期あまりの異常さに気が狂って海に身を投げた。あれが不憫だった故、女神の力の一部を封じて、主ら魔導師の先祖にあの土地を見守らせておった」



眠っていた言い訳かは分からないけど、女神関連苦労話を聞かせてくる自称神に頭が痛くなってきた。


とりあえず、今の状況とかをアストラ様に話すと、疲れた顔で「ファニールとアウローラの同時降臨とか災厄そのものではないか」と顳顬を押さえていた。



「とりあえず、聖女がいなくては邪竜が倒せないわけではない……が、ならば私の加護を継いだ魔導師が戦う方が勝算は高いな」

「勝算が高いだけ、というのであればただの人でも邪竜を屠ることは可能なのですか?」



やれそうな男、ゲイリーが尋ねると「可能だが、何人死ぬかは私の関与するところではない」と答える。



「それでは、新しく加護を授けて頂くことはできないのでしょうか?」

「過ぎた力をやるとろくなことにならんことが貴様らの説明でよく分かった。自分達でなんとかできぬのなら諸共滅びても良かろう」



神様理論ヤバい。でも私も神ならちょっと思っちゃうかもってところが反論させてくれない。

そして、それもそうだみたいな顔で頷くゲイリーも怖い。神様理論を理解しないで。



「その……では、邪竜は人がどうにか頑張るとして女神様を抑えて頂くことは可能でしょうか?」



せめてそっちは神同士でなんとかならないものかと思いながら聞いてみれば、「あれは赤いのが絡むと面倒故な」と渋り出した。



「アウローラは赤いのと仲が悪くてな。そもそも、アリシアは錬金術を極める以外にまるで興味がなかったというのに、私の愛を掠め取ったとかどうとか騒ぎ出して面倒この上ない」

「アウローラ様はアストラ様を愛しておられるのでしょうか?」

「愛というよりは執着よな」



美しいその男は、何かを思い出すように溜息を吐く。



「だが、良かろう。貴様らの手には余るだろう」



そう言うと、彼は鱗だけ私達に渡して消えていく。

……尊大系だと思っていたご先祖様、結構苦労人だったのかもしれない。なんとなく、「妾は神なぞに興味はないのだがの?」という疲れた声が聞こえてきた気がした。

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