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ゲイリー視点



「私は紅玉の位を持つ魔導師。錬金術師の頂点……らしい存在です」



何度目かの殿下から受けたダンジョン制覇の任務で、魔力を使い切りかけた彼女は自分にそう告げた。


隣国の赤の魔女という存在と関わりがあるのか、と尋ねれば、「私は赤の魔女からもう一段上のステージに立っちゃったらしい存在って同胞から聞いた」と彼女は言う。

殿下から聞いた話ではその存在は、錬金術師の頂点を意味するとか。


何故今まで隠していたのか、と聞くと、「カイル様って良くも悪くも貴族だから国を守るためだったら私一人くらい取引の材料にするでしょ?」と。

あの方ならば、王族として1を捨てて100が助かるのであればそうするだろう。


鑑定では簡単な来歴しかわからない。だからカイル殿下はそこまでは知っていない。


彼女から聞いた今までのことを踏まえて、このことは殿下に黙っているということを約束した。勿論、話さなければ都合が悪い、等という事態に陥れば報告も必須だろう。だが、彼女がそうであると話さないことで生じる不利益は現状ではなかったため、口を噤んだ。

褒められた判断ではないが。


この赤い髪と赤い瞳を見るのはその時以来だ。


紅玉とは良く言ったものだ。

鮮やかな赤は彼女のためにある色と言ってもいい。彼女自身が宝石のような印象すら与える。



「派手だからもう色変えたい……」

「自分はその色も好ましいと思いますが」



彼女がその色を好ましく思っていないことは聞いているが、彼女ほど赤の似合う人はそうはいないだろう。



「この赤が迫害の元なんだよねぇ」



国を滅ぼそうとするならともかく、普通に生きている国の才能を消そうとするなど、愚かなことこの上ないと思う。少なくとも、この国では余程がないとそうはならない。

権力者なら飼い殺すくらいはしてみせなければ無能としか言いようがない。これならば自分を側に置くあの皇子の方がまだマシだろう。


おまけに、自分達が不利な状況になればそれがいかに得難いものかわからないままに「探して連れて帰れ」などと言ってみせる。


滅びてしまえばこの国への影響も計り知れないという意見も確かに分からなくはないが、彼女にそんな国を命懸けで救わせるくらいならば、滅びてしまえ。そう自分は思うのだけど。



「ゲイリー、階段が出てきたよ!」



手を振りながら自分の名を呼ぶ彼女に頬が緩むのを感じる。


存外、人が良い彼女が利用されないように自分が側にいたいと思う。


……それにしても、彼女にピアスをすすめた人間は誰だろうか。自分ならば、彼女の身体に穴をあけるアクセサリーなんて贈らなかったのに。黒という色も誰かの色なのだろうか?そうであれば、忌々しい。



「ええ、今そちらに行きます」



過去に何があったにしても、今彼女に一番近いのは自分だ。

微笑みを浮かべて、彼女の隣へ立つ。


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