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ロンゴディアにいた時よりはマシだけど、なんというかマリアの周りすごい。初めっからアミュレット持ってると多少マシになるんだね?でも、一部誑かされてるところ見ると、その手管はすごいなって……。

愛されて当然みたいな顔できるの素直に羨ましいな。


まぁ、カイル様の不興は煽っていますけど!



「どうにかならんのか」

「なりませんね」

「私も流石にこれは……」



同僚と共にそう言うと、カイル様は少し考えた後、溜息を吐いた。



「リアが消えた後のあの国は、さぞや風紀が乱れたであろうな」

「後世に傾国の女として名が残るでしょうね」



私の異母妹、傾国だってよ。

容姿はヒロインらしく可愛らしいのに、よくわからない色気がある彼女は、魅了がなくともきっと男達を虜にしただろう。

実際、彼女自身が魅了を使っているという自覚があるかはわからない。転生者だとしても「異性に愛されているのはヒロインだから」だと思っている可能性があるし、転生者でなくても「そういう体質」だと思っている可能性もある。



「こちらとしては、早々に王国へ帰ってもらいたいものだが、これ以上隣国が乱れるのはこの国にも影響が大きい。保護のために置いておくという陛下の判断もわからなくはない」

「あ、多少は乱れているんですね?」

「滅びかけの国が乱れていない訳がなかろう。特に、魔物が増えて平民達への被害が大きいらしい。我が国もアレらが来てから魔物が増えた」



この国の場合、原作で危機的状況を作ったのはアマーリアだった。だから、今私が何もしていないのに、この状況が起こっているということは、女神の祝福を受けているはずの聖女こそが国に魔物を寄せ付けているんじゃないかって少し思ってしまう。別の理由があるのかもだけどね!



「災厄の獣の呪いのようなものが、奴らに掛かっているという可能性もある」

「災厄レベルの呪いとか怖いじゃないですかやめてくださいよ」



鳥肌が出てきたので腕をさすると、ゲイリーは「殿下やあなたに降りかかる火の粉は自分が払ってみせます」と剣に手をかけて、にこりと笑ってみせた。すごく頼もしい。そしてちょっと怖い。

何が怖いって、彼は私達が出会ったドラゴンくらいなら剣だけで単独撃破できてしまう男なのだ。実際見た時変な声出た。冷静になってもドラゴン単独撃破した後に血塗れの姿で微笑んで「大丈夫ですか?」はちょっと怖いと思う。ドラゴンが怖かったから一瞬ちょっとときめいちゃったけど。



「お前がいる以上心配などはしておらん」



美しい友情だとは思う──反面、「でしょうね!」って気持ちが大きい。

ゲイリールートのアマーリア割と簡単に死ぬんだもんね。なぜってこの男が強いから。同時に、この男は相手にもそれなりの強さを求めるので、このルートのヒロインすごく強い。勝てる訳がない。



「ゲイリーがいて危機的状況になったら大人しく諦める気がする程度には信頼しています」

「諦めないでください。自分などまだまだなのですから」



向上心が高いのは結構だけど、あなたがまだまだなら私とか虫ケラでは?

とはいえ、自分でそう言っている人にそう返すのもなんだかなぁ、と私は曖昧な笑みを浮かべておいた。


そんな会話をしていると、突如として生徒会室のドアが開いた。



「カイル!なんですの、あの女は。早く国へ帰すなり始末するなりしておしまいなさい」

「……キャロル姉上、それは父上……陛下が決めることであって、私にその裁量はありませぬ」



レッドブラウンの豊かな髪に、皇妃様と同じ緑の瞳を持つ、色白の美姫がそこにいた。

カイル様は朱色の髪と金色の瞳、浅黒い肌のワイルド系で陛下似なのであまり似ていないように見える。



「魅了が効いていない筈のターナーがあの女に侍っている状況についてはどう思っているの?姉を想うなら陛下の判断に反してでも追い出すべきだわ」



この物言いからわかるかもしれないが、このお姫様はちょっとだけ激しい方だ。続編の悪役令嬢である彼女だが、お姫様という立場だし、強硬に追い出したりはしないので結局は可愛い愚痴のようなものになるのだけど。



「それは単純に姉上の魅力が足りないのでは?」

「わたくしは、当然のことしか言っていません!」



溜息を吐いて嫌そう〜な顔をするカイル様には申し訳ないのだが、カイル様に対してはちょっとワガママなお姫様であるとはいえ、彼女の言い分は確かなのだ。

嫌味を言うにしてもせいぜい貴族として、王族としての注意程度。それくらいでピーピーうるさいあのバカップル二人とターナーとかいうこちらの国の公爵令息や他の取り巻きに問題がある。


この姫様、ちょっと発言は過激だが原作アマーリアに比べれば可愛いもいいところなのだ。あと、こう見えて優秀。

ボロが出るのはカイル様の前くらいなものだ。


許可を得てから少し引っ込んで、お茶とお菓子を用意すると、彼女は「わたくしは公爵夫人となるために努力してきたというのにあの男……!」とやはりお怒りの様子だったので、近々彼の実家は陛下より何か言われるかもしれない。

……陛下はキャロル様であの家の立て直しをしたかったのかもしれないね。

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[一言] 隣国の乱れを気にして、自国を乱してたら駄目じゃないですか陛下…
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