1
家どころか国まで追われた悪役令嬢予定だった私ですが、隣国までやってきてようやく生活基盤を再構築できました。
隣国エデルヴァードに来た私は早々に仲間達と逸れ……この国の皇子様に拾われたのでした!こんなことってあるの?
ちなみに逸れた理由は国境近くの山を越える時にいきなり天候が変わって地滑りが起き、巻き込まれたことによるもの。生きてるって……いいよね……。ところでルート探索時に地滑りとか起こりそうにないとことか調べて通ったんだけど人為的じゃないでしょうね。
その後、エデルヴァード帝国第三皇子カイル殿下に空腹で行き倒れていたところを助けてもらった私は、仲間を探しながら王宮で侍女を始め、カイル様が国立魔法学園に入る時に一緒に学園にも入った。第二のこんなことってあるの、である。
というか、あれから三年近く経つんだけどいつになったらあいつら見つかるの……。
なお、碧の魔女ことイザベラは普通に社交界に出ていて既に発見している。勝ち組っていいよな。あのタイミングで嫁いだし苦労してるんじゃ……とか思うでしょ?優しい旦那様とラブラブしてるよ……。
「アマーリア、何を難しい顔をしている?」
「レオノアです、カイル殿下」
「何を言う。たかが平民の女がこの私の近くへ寄れるわけがないだろう。私の鑑定とお前の本来の血筋故に助かっているのだとそろそろ理解しろ」
現在私はガルシア伯爵家の姪として暮らすことを強いられている。理由は「貴族の出だというのに何もしていないにも関わらず幼くして家を追い出され、しかも何もしていないにも関わらず国まで追い出されるなど不運にも程があるな?面白い故、側に置いてやろう」というめちゃくちゃ気紛れな理由だ。
伯父はアマーリアが生きていた事を女神に感謝していた。ごめんね、私は死んだ事にしときたかった。だって貴族生活五年しかしてないけどろくな事なかったんだもん。
とはいえ、今の国の情勢がまずい事もわかっているので、縁戚という事にして出自を誤魔化しているらしい。ご、誤魔化せるのかそんな事で?なんでそんな感じなのにあの国滅びてないんだろ……。
こっちでは普通に姪だってバレてるけどそれにしてもなんで今更貴族令嬢やらねばならないのだ。
……ルース達に気がついてなかったバチが当たったのかも。
あのクソジ……ガルシア前侯爵はこちらの国から婿に来た人だったらしく、親戚だっていう人が養子にしたいとか言ってきてそれも困っている。しかも爵位が高い。養子にしたところで良いことないですよ!
というか、私普通に平民として生きるからそろそろ自立させてほしい。
何が嫌って、この国続編の舞台なんだよな!!
カイル様!攻略対象!!
同僚も攻略対象!!
「リア、そろそろ諦めた方がいいと思いますよ?」
「あなたに愛称つけられて呼ばれるのも意味がわからないのだけど!?」
こっちは同僚兼殿下の側近、ゲイリーである。執事みたいな格好をしているがコイツは伯爵子息。
なぜそんな格好をしているのか、と問えば「殿下の命令でして」と苦笑していた。苦労人なのは認めるが私はアマーリアとして生きるつもりがない。
「それで、生きているかどうかすらも分からん友とやらを諦める覚悟はできたか?」
「いや、私が生きてるんだからみんな生きてますよぉ、場所が分かんないだけで」
不吉な事言わないでよ、と目線で訴えるとカイル様は面白くなさそうに鼻を鳴らした。
「というか、そろそろ探す邪魔するのやめて欲しいんですけど……」
「止めないだけ寛大であろう?」
出て行った方が早い気がするんだけど一応拾ってもらった恩もあるし。まぁ、ちょっと伝もできてそこから情報も掴みかけてるので、見つけてからでもいいかな。
こっちにも冒険者ギルドあるしカイル様のお使いとかで冒険者ランク爆上がりしてるので生活に困る事はもうないし。
続編のストーリーって確かヒロイン変わらないんだよね。どんな感じだっけな。
災厄の獣を倒した誰とも結ばれなかったヒロインが留学してくるーって話だっけ。第二王子のラファエルも確か留学生で来るはず。……カイル様情報では、マリアはラファエルと婚約したらしいから来ないかもしれない。来るな。
ノベライズからの逆輸入、ラファエルは超美形設定で実際美人だった。人だかりのせいで直接みた事ないけど。
なお、続編のラスボスは私ことアマーリアである。
国を追放された侯爵令嬢アマーリア・ハーバーはこの国の瘴気を吸い取り、闇の魔法を操るようになる。その力をもってこちらの親戚の家を支配して憎きヒロインを殺すために魔女王になるのである。要するにヒロインと攻略対象をくっつけるための当て馬で最後の障害。障害があった方が燃えるからって勝手に魔女王にするんじゃない。絶対ならないからな。
というか、そんな事やるくらいなら先に親を始末するわ。マリアにはあんまり接点がないし……暗躍していたら知らないけどね。してないだろうな!?