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結局、倒れてから五日後に漸く復活できた私は、髪の色も目の色も完全に変えるように言われて魔法をかけようとしたら、どちらも明るい赤から変わらなくて、魔力を抑える腕輪をしてやっと変えることができた。
どうやら、魔力が異常に増幅したらしい。
髪は一気に背中の半ばくらいまで伸びてしまって、ポニーテールにした。焦げ茶の髪と瞳の平凡な女の子の出来上がりである。
……平凡っていうには顔が綺麗すぎるな。悪役令嬢、顔面のスペックが高かった。
サミュエルと一緒に、あるお屋敷に向かうと、サミュエルのお兄さんが出迎えてくれた。優しそうな人だね、ってサミュエルに言うと、「腹は黒いけどな」と疲れたように言った。腹黒系なのかぁ……商売やるにはそういう素養あった方がいいよね、たぶん。
案内された部屋にはルース、ウィル、ローガンがいた。
どういうメンバーなの?と思っていたら、部屋に強い結界が張られて、「全員姿を戻せ」とサミュエルがいう。まず、サミュエルの髪と目が真っ黒になる。
ルースはルーカス殿下で髪も目も金だし、ウィルもアスール様だったし、ローガンはオレンジで混乱しながらも私も色を元に戻す。そういえば、あの騒動の中で私レノンって呼ばれた!?
「いや、この集団派手すぎでしょ」
「だから隠れてるんだよ」
殿下に言われてそりゃそうですよねぇ、と呟いてしまった。
最初の私ちょっとハートが強すぎやしなかった?髪も目も目立ちすぎだし、なんなら倒れた後から色明るくなった気がする。
「というか、私とサミュエル以外みんな貴族……このメンバーなのになんでイザベラいないの……」
空気が変わって、ピリッとしたものになる。一体なんなの……。
「まず、現状なんだけどね。君とルースとウィル、死んだことになってるから」
「人を勝手に殺すな」
「ごめんね、レオノア。そこはわた……僕のせいなんだ」
いつものルースの顔でそう言う殿下はどこか申し訳なさそうだ。
「実は王位継承権争いがあったんだけど、僕が三日帰らなかった間に死んだ事になっててね。調べてもらったら、もうみんな喪に服してて流石に笑うしかなかったよ」
「俺ん家もお袋が茫然自失でガチ泣きしてたらしいわ」
「ウィルの母上は愛情深い良い人だもんねぇ。一応、後で生存はしてるって伝えられるようにはしてもらっているけれど」
えっ……私はどうなるの……?
肩をポンと叩かれて後ろを見ると、サミュエル兄が「生きてる事はお伝えしてあるよ」と言ってくれた。
ありがとう、ありがとう。感謝。
「という訳で僕は完全敗北をしたようだし、見つかれば全員殺されかねないからこのまま死んだことにして、ここにいるメンバーで国外逃亡をするよ」
「こくがいとうぼう」
「あの碧の魔女は気にしなくていいぞ。公爵家に恩を売って西の国に嫁ぎやがったからな」
「とついだ」
最近見ないと思ったら!?
そして逃げ方がある意味貴族らしく優雅だ。ところで、その恩って私が作ったアミュレットのことじゃないですよね?
「この国は最早、僕達には危険しかない」
「だからといって、私たちに行く場所なんてあるの?」
「無いな」
ローガンがそう答えたあと、「だが、失う物もそんなにない」と続ける。
私は家族失うんですけど!?
「レオノア、家族を危険に晒さないためにお前は国を出るべきだ」
それは、現時点での残酷な事実だった。
私の実家近くに、国の手の者が彷徨いているようだった。生きていれば、殿下達を連れてここに来るだろうという考えだろう。なんでそんなに殺したいの……。ガルシアの爺さんよりガチの殺意感じて怖い。流石王族。
私は最後に家族に会うことを諦め、同類達と共に国を出た。
……まぁ、マリアの祈りがあれば国が腐っている事以外は、なんとかなるんじゃないかな。
それでもやっぱり、ちょっぴりだけど思うよ。
ハーバーも国もどこかでしっぺ返しくらうといいなって!!